持続可能な林業におけるイノベーション―気候変動との闘いに不可欠
2024年11月15日

2024年11月12日、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(UNFCC COP29)のサイドイベントでスピーチを行うジェニファー・コンヘITTO森林経営部長。写真:ITTO
2024年11月15日、アゼルバイジャン、バクー: 持続可能な林業における新技術、方法論、考え方、プロセス、パートナーシップの活用は、レジリエンスを高め、気候変動の悪影響と闘うために不可欠なツールであると、アゼルバイジャンで開催中の国連気候変動枠組条約会議のサイドイベントで、専門家が指摘しました。
同サイドイベントは、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(UNFCC COP29)期間中の2024年11月12日に、ITTOと日本の森林総合研究所(Forest Products Research Institute: FFPRI)の共催で「気候変動の緩和と適応に対する熱帯林の貢献を最大化するためのイノベーション」をテーマに実施されました。
開会挨拶の中で、ジェニファー・コンヘITTO事務局次長(森林経営)は、21世紀の第1四半期を特徴づけるもののひとつは、技術革新のスピードであると述べ、それがいかに人々の日常生活を根本的に変えてきたか語りました。「イノベーションは、リスクと脅威を見積り、緩和のための取り組みに貢献し、気候変動に直面する国や地域社会がレジリエンスを構築するのに役立つ、ますます不可欠なツールであることを否定することはできません。」とコンヘ森林経営部長は述べました。
国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization: FAO)の森林・気候チームリーダーであるエイミー・デュシェル氏は、森林セクターにおけるイノベーションに焦点を当てた「世界森林白書2024(SOFO)」(英語)について発表しました。同報告書は、新技術、成功した政策、制度改革、森林所有者や森林管理者への新たな融資方法など、エビデンスに基づくイノベーションが持つ変革を促す力に焦点を当て、これらのイノベーションの組み合わせ(「バンドル」)により、強力な変革力を発揮できると指摘しています。また、イノベーションがどのように森林再生やアグロフォレストリーの拡大を促し、持続可能な利用を促進し、グリーン・バリューチェーンを構築したかについて、サンプル・ケーススタディを紹介しました。
インドネシア環境林業省 気候変動総局・森林土地火災管理局のディレクター、トーマス・ニフィンルリ氏は、インドネシアは気候変動に対して最も脆弱な国のひとつであること、また、気温が上昇する中、山火事を注意深く監視する必要があることを指摘しました。同氏は、総合的なパトロール報告アプリを開発したり、火災予防のための地方機関、民間部門、地域社会間の協力を促進したりしたインドネシアでのITTOプロジェクトを紹介しました。 このプロジェクトはまた、焼畑をしない農地整備の革新的な実践を推進し、その取り組みは、国際気候コンペティション「グリーン・ユーラシア2024」の持続可能な土地利用・林業・水管理部門で1位を受賞しました。
FFPRIのREDDプラス・海外森林防災研究開発センター長の玉井幸治博士は、森林景観における地すべりリスク軽減について発表し、1960年代以降、森林が地すべりによる人的被害を大幅に軽減したという日本の成功例を紹介しました。玉井博士はベトナムにおけるFFPRIの取り組みについて説明し、異常気象が頻発する中、人工知能や地盤調査によるリスクマッピングが災害リスク軽減に役立つツールとなっていると述べました。
リスボン大学のマーテック/ロボット工学エンジニアリングシステム研究所(MARETEC/LARSyS)のエル・ハリル・シャリフ博士は、山火事を予測し森林を保護するための低木被覆マッピングに関する研究を発表しました。この研究は、ポルトガルの山火事が増加し、人々や環境に悪影響を及ぼしていることに端を発しています。リモートセンシングと衛星画像を利用して低木の危険地域をマッピングし、火災の危険性を予測することで、森林火災の予防と対策を強化することを目的としています。シャリフ博士は、この方法論と気象パターン、地形、過去の火災発生などの他のデータを組み合わせることで、包括的なリスク評価モデルの開発を促進できると結論づけました。
ITTOのラモン・カリーオ プロジェクトマネージャーは、グアテマラの木材追跡システム(英語)を生み出した同国の森林セクターにおける過去10年間のイノベーションを紹介しました。このシステムは、森林関連のプロセスを自動化し、対応時間を最短化し、書式を標準化し、手続きを明確化し、データの重複を避け、人的ミスを最小限に抑え、担当官の裁量権と官僚性を制限し、法律で定められた期限を守って要請や申請を処理してきました。最近追加されたのは、写真といくつかの簡単な測定から、輸送中の丸太やその他の木材製品の量を迅速かつ正確に評価できるアプリです。”CUBIFOR”と呼ばれるこのアプリは、森林経営を促進し、グアテマラの林業会社の能力を強化し、木材量の定量化を必要とするすべての活動の効率を向上させることで、合法で持続可能な森林サプライチェーンをサポートしています。このアプリはSOFOの報告書でも紹介されています。
イベントのまとめとして、コンヘ氏はチャールズ・ダーウィンの言葉を引用し、「生き残るのは最も強い種でも、最も知的な種でもなく、変化に最も敏感な種である」と述べました。コンヘ氏は、イノベーションは変化を促す最大の要因の一つであると指摘し、新興の科学/イノベーションが気候への適応と緩和の取り組みにうまく貢献できるようにするためには、この種のイノベーションを産業界、政府、社会に効果的に伝える必要があると奨励しました。
2024年11月12日、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(UNFCC COP 29)のサイドイベント「熱帯林の気候変動緩和と適応への貢献を最大化するためのイノベーション」の参加者。写真:ITTO
ITTOのプレゼンテーションは以下よりダウンロードできます。