ITTOが支援する持続可能なチークがIUFRO世界大会で注目される
2024年7月2日
2024年7月2日:先週スウェーデンのストックホルムで開催された2024年国際森林研究機関連合(IUFRO)世界大会の5日目のセッションで、ITTO職員とパートナーは、持続可能なチークの動向と発展に関する最新情報を提供しました。
同セッションは、ITTOとIUFRO、国際チーク情報ネットワーク(TEAKNET)の共催によるもので、「持続可能なチーク材のサプライチェーンと貿易のためのチーク材経営の強化」をテーマとしています。
IUFROのマイケル・クライン氏は、セッションの開会を宣言し、IUFROとTEAKNETとの長年にわたる協力関係、ITTOを含むパートナーとのチーク会議、ワークショップ、プロジェクトへの支援や参加について紹介しました。また、貴重な関連データを効率的に収集し、アクセスを提供することができるIUFROのグローバルなネットワークの力を強調しました。
TEAKNETコーディネーターのS. サンディープ氏は、同大会で発表された世界チーク資源・市場評価レポート2022(Global Teak Resources and Market Assessment 2022)(英語)の結果について説明しました。調査によって明らかになった主な点は、チークが現在世界80カ国以上に分布していること、チーク丸太の収穫量が増加し、チーク材の世界市場シェアが拡大し続けていることです。主要な貿易相手国は依然としてインドであり、総取引量の97%を輸入しています。
テトラ・ヤヌアリアディITTOプロジェクト・マネージャーは、熱帯木材と木材製品の国際貿易と市場アクセスの最近の傾向について、概要を説明しました。
ヤヌアリアディ博士は、持続可能な森林経営(SFM)と合法的かつ持続可能な方法で生産された熱帯木材・木材製品の貿易について概説し、森林が提供する生態系サービスと経済的な恩恵、そしてそれらを適切に評価する必要性を指摘しました。
また、政策ガイダンス、市場情報、能力開発、現地プロジェクトなどの活動を通じて加盟国を支援し、SFMの課題を克服し、持続可能なかたちで経営され合法的に伐採された木材の貿易を拡大・多様化するITTOの使命を強調しました。
さらに、ヤヌアリアディ博士は、最近の市場動向について説明し、数々の大きな危機がこのセクターに与えた影響について、参加者と共に振り返りました。
2008年から2009年にかけての世界的な金融危機は、中国やインドからの需要によって相殺されたものの、熱帯木材製品の需要に打撃を与えました。さらに最近では、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行と現在も続く紛争が、チークを含む熱帯木材・木材製品のサプライチェーン、需要、価格に深刻な影響を及ぼしています。
ヤヌアリアディ博士は、1990年以降の熱帯木材の生産、消費、貿易の傾向について次のように述べました:
- 熱帯丸太のプランテーションからの生産の増加と天然林からの生産の減少
- 輸入原木をベースとした熱帯製材の主要生産国としての中国の台頭
- 中国とベトナムが熱帯木材二次加工製品の製造拠点をリードする立場にあること
- 伝統的な市場から中国とインドへと需要がシフトする中、1990年以降、熱帯産業用丸太の貿易が減少していること
- 天然林から植林地へと産地が移行する中での熱帯産製材の取引の減少
- 熱帯合板の貿易が減少傾向にあり、現在では中国、インドネシア、マレーシア、ベトナムが輸出の大半を占めていること
- 熱帯諸国からの二次加工木材製品の輸出が大きく伸びており、中国とベトナムは家具輸出の重要なプレーヤーとなっていること
続いて、ヤヌアリアディ博士は、EU森林減少防止規制(EUDR)を含む、市場アクセスや現在の市場要件を取り巻く重要な問題について説明しました。
市場の動向は、市場の政策とアクセスに加え、全体的な経済動向や建設セクターの具体的な動向にも左右されると、ヤヌアリアディ博士は指摘しました。
オーストラリア、EU、日本、アメリカを含む西側諸国の市場では、森林法の施行とガバナンスを改善し、違法伐採木材の取引に対抗するための政策を導入しています。
EUでは、木材を含む多くの商品のサプライチェーンから森林破壊を撲滅するためにEUDRが導入され、貿易業者の間で大きな議論を呼んでいます。
ヤヌアリアディ博士は、2024年12月30日から実施されるEUDRの以下のような要件を満たすことは、生産者にとって困難なことだと考えられると述べました:
- 木材が合法的に伐採されたという証拠
- 木材が2020年以降に森林伐採や森林劣化が発生した区画に由来しないことを示す地理座標を含む証拠
- 高リスク国からの木材について必要となる追加情報とリスク軽減措置
熱帯地域の生産国の中には、すでにGISシステムを使用し、コンプライアンス文書の提供に協力できる企業も多く、既存のEU木材規制(EUTR)の下での経験もあることから、規制に対応する準備が整っている国もある、とヤヌアリアディ博士は述べました。しかし、自国の林業、特に中小企業の能力を鑑み、EUDRの実現性に疑問を抱いている国もあります。
責任ある森林バイオエコノミーを目指して(Towards a responsible forest bioeconomy)というテーマの下に開催された同イベントの他の登壇者は、合法的で持続可能なチーク材のサプライチェーンの促進について説明したリソース・パーソンのマ・ファンオク氏、ベトナムにおける小規模農業従事者によるチーク材プランテーションの開発について発表したベトナム森林科学アカデミーのチャン・ラム・ドン氏、山岳地帯におけるチーク材の心材の品質に対する地形条件の影響について講演したラオス人民民主共和国(ラオス)の国立農林研究所のシモーネ・ボンカムホ氏、生産性向上と価値向上のための優れた品質のチーク・クローンのゲノム選抜について発表したメルボルン大学のアンドリュー・カリスター氏、 タイの小規模農業従事者のチーク・プランテーションについて発表してタイのカセサート大学のヨンユット・トライスラット氏、ブラジルの3つの異なる場所における樹齢22年のチークのプランテーションの木材品質に関する比較研究を紹介したサンパウロ大学のマリオ・トマシエッロ・フィーリョ氏、ラオスの農業従事者の生計支援のためのアグロフォレストリーシステムにおけるネルダー型の系統配置実験の結果を説明した同国の北農林カレッジのアウタイ・スーキー氏です。
セッションの参加者らは、「世界のチークセクターの持続可能な発展-将来の市場と環境への適応」というテーマのもと、2025年9月17日-20日にインドのコチで開催される第5回世界チーク会議に関する案内も受けました。
プレゼンテーションのダウンロードは以下より。