木材貿易措置の弊害を避けるため、アフリカでの能力構築が喫緊に必要
2024年6月10日

コンゴ民主共和国の貯木場での製材の選別。写真:Li Yinfeng
2024年6月10日:ITTOは、コンゴ盆地の重要な森林セクターと木材産業がEUによる森林減少防止に関する規則(EUDR)およびその他の国際貿易措置の要件を満たすことができるようにするため、同地域のキャパシティ・ビルディングとトレーニングの必要性により配慮するよう求めました。
シャーム・サックルITTO事務局長は、先週コンゴ民主共和国のキンシャサで開催された第20回コンゴ盆地森林パートナーシップ(CBFP)締約国会議(MOP20)における、ITTO主催の木材バリューチェーンに関するテーマ別ワークショップ3(Thematic Workshop 3)で基調講演を行いました。2024年6月4日に開催されたワークショップには、コンゴ盆地、ヨーロッパ諸国、国際機関などからの参加者が集いました。
サックル事務局長は、ITTOが1986年の発足以来、コンゴ盆地諸国で行ってきた活動について述べるとともに、ITTOが熱帯林業、特に合法的に収穫され、持続可能な方法で管理された林産物の貿易の多様化に関して全面的に委任された、唯一の政府間機関であることを強調しました。
講演の中でサックル事務局長は、持続可能で合法的な木材取引を可能にするために、EUDRやワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)などで義務付けられている要件を満たすことは、特に小規模事業者にとっては複雑なプロセスになると述べました。アフリカ地域の木材生産者の能力を早急に強化するための多大なる努力がなされない限り、EUDRは、アフリカの木材取引に特に大きな影響を与える可能性があります。最大の課題は、木材が合法で森林破壊がないことを証明するために必要な書類を入手することだとサックル事務局長は述べました。
「この規制に対して、準備が十分ではない人々が沢山います。」とサックル事務局長は述べました。「熱帯地域の森林関連企業は、EU市場へのアクセスに必要な情報を収集し、提供することの難しさに直面する可能性があります。」
必要とされる情報には、木材が伐採されたすべての土地の地理的位置、伐採の日付または期間、製品そのものに関する情報が含まれます。生産者はまた、木材が合法的に伐採された証拠、および、2020年12月31日以降に森林破壊や森林劣化が起こった土地に由来するものではないという証拠を提出する必要があります。「リスクが高い」とされる経済圏を原産地とする木材については、追加情報が求められる可能性もあります。
ワシントン条約の条件もますます厳しくなっており、また同条約の附属書(主に附属書II)に記載されている樹種の数は、1975年の18種から今日では約700種にまで増えています。現在、アフリカン・ローズウッド(Pterocarpus erinaceus)の全16の生息域国は、ワシントン条約の関連機関に認められる無害証明と合法的な取得に関する証明が完了するまで、取引停止の対象となっています。
サックル事務局長は、講演で、持続可能な森林経営(SFM)と合法的で持続可能な木材サプライチェーンの促進におけるITTOの役割について、国内外の政策や法的環境の改善への支援、データと知識の向上、ステークホルダーの関与の促進、能力の向上といった例を挙げつつ概説しました。後者については、ITTOはアフリカにおける熱帯木材の合法的かつ持続可能な取引のための能力構築を支援するため、中部アフリカの林業・環境トレーニング機関の能力を強化し、森林の伐採許可にSMFを組み込む際に必要な知識、技能、資格を受講生らに提供する7年間のプロジェクトや、中部アフリカ諸国向けに合法的かつ持続可能な木材サプライチェーンに関するトレーニングカリキュラムを開発するプロジェクトなど、多様な分野で活動しています。
またワークショップでは、オリビエ・アイミンITTOコンサルタントが、SFMの基準と指標の使用を通じて持続可能な林業を推進し、合法的で持続可能な木材バリューチェーンを強化するために、ITTOがコンゴ盆地やアフリカの他の地域でパートナーとともに実施している幅広い活動について発表しました。昨年公開されたアフリカの熱帯林の持続可能な経営のためのITTO基準と指標(英語)は、アフリカの森林セクター用に特別に調整されたもので、同地域の地域社会と経済にとって社会経済的に重要なものと言えます。
リー・チアンITTOシステム/マーケット・アナリストは、ITTOの合法的で持続可能なサプライチェーンに関するプログラムについて詳しく説明しました。プレゼンテーションでは、特に、8つのパイロット国の木材セクターを追跡して月次レポートを発行等を行う世界木材指標(Global Timber Index: GTI)プラットフォーム;木材関係者のネットワーキング、連携、ビジネス交流を促進することを目的としたグローバル・リーガル・アンド・サステイナブル・ティンバー・フォーラム(Global Legal and Sustainable Timber Forum: GLSTF)と、その2024年の会合であるGLSTF2024が9月11-12日に開催されること ;および、現在研究中のブロックチェーンを活用した木材追跡システムについて紹介しました。
ワークショップ参加者は、アフリカの国々におけるSFMの経済的・環境的重要性、および、脆弱な森林ガバナンスに対応し、変化する貿易環境において競争力を維持するために、ポジティブで先見性のある能力開発アプローチをとる必要があることを認識しました。参加者は、ITTOと国際社会に対し、この地域での取り組みを強化するよう求め ました。
第20回コンゴ盆地森林パートナーシップ締約国会議では、テーマ別ワークショップに基づく次の5つの勧告が採択されました。
1. コンゴ民主共和国を国として考慮するよう提唱すること
2. ITTO加盟国は、滞納中の拠出金を支払うこと
3. 情報共有のためのネットワークを構築すること
4. 人工知能(AI)がもたらす発展と影響を検討すること
5. 熱帯木材と木材製品の合法的で持続可能なサプライチェーンと、最近ワシントン条約に登録されたアフリカの種に関する林業関係者と民間セクターの能力構築と研修を早急に強化すること
プレゼンテーションと総合資料は以下からダウンロードできます。