ITTO、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が熱帯木材貿易に与えた影響について専門家グループに情報提供

2022年2月18日

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は熱帯木材のサプライチェーンにも長期的な影響を及ぼしかねない。写真撮影:R. Carrillo/ITTO

横浜、2022年2月18日:第21回APEC違法伐採と関連する貿易専門家グループ会合(Asia-Pacific Economic Cooperation Experts Group on Illegal Logging and Associated Trade:EGILAT)でシャーム・サックルITTO事務局長が登壇し、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が熱帯木材のサプライチェーンに長期的な影響を及ぼす可能性が高いと述べました。この会合は2022年2 月14日から15日にかけてオンライン開催されました。

会合の出席者は、新型コロナウイルス感染症の流行が熱帯木材の収穫と取引に与えた意味や影響、さらにこれに対する行動について、多様な登壇者から最新情報を得ました。サックル事務局長は、熱帯地域および主要熱帯木材取引市場への影響について報告しました。

サックル事務局長は、熱帯木材の生産者が共通して抱える問題として、木材の生産量と消費量がともに安定しないこと、同感染症対策として課された制限により製材所や港での物流に困難が生じていること、輸送費の高騰、労働力不足、コストの増加をあげました。

2021年、主要木材市場は、輸送コンテナ不足、市況変動、在庫不足、オンライン販売への転換による小売業の縮小といった問題に直面しました。反対に、多くの市場では、コロナ渦で家で過ごす人々が増えたことに伴い、住宅の建設、修繕や改築が増加したため、木材需要に伸びが見られました。

熱帯木材の生産者も消費者も、サプライチェーンの深刻な分断による影響を受けました。輸送コンテナと港での備蓄量の不足と購入者と供給者間でのコミュニケーションの減少がサプライチェーンの混乱を招いた大きな原因です。サックル事務局長は、このような影響は長期化すると見られる国もあり、供給と市場の多様化、異なる木材種や木材製品の消費の変化、価格と流通量の変動幅の拡大といった他の影響も起こりうると述べました。

サックル事務局長はITTOの2点の最新出版物「持続可能な森林経営(SFM)に向けた財政・非財政奨励策(Fiscal and Non-fiscal Incentives for Sustainable Forest Management)」および「熱帯木材2050(Tropical Timber 2050)」を紹介。後者では、熱帯木材セクターが新型コロナウイルス感染症の拡大以前の水準まで回復するのに要する時間を推測しています。両書とも次のITTOホームページ https://www.itto.int/ja/technical_report/ にて閲覧可能です(文書は英語)。

ITTOは、これからも市場情報サービス(Market Information Service:MIS)を通じて木材市場や熱帯木材貿易に関するニュースの適時提供に努め、熱帯木材生産国が新型コロナウイルス感染症の拡大という難局をいかにして切り抜けているかをホームページ上で伝えます、とサックル事務局長は発言しました。

本EGILAT会合でサックル事務局長は、加盟国や森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests:CPF)加盟組織やそれ以外の国際機関・地域機関等のパートナーとの協力や情報共有の強化に向けてITTOが実施中の活動についても発表しました。この活動には、持続可能な熱帯林業を実現するための基準や指標、森林景観再生および生物多様性保全といった様々な要素に関する国際合意を経たガイドラインの策定があります。

「熱帯木材生産国は、SFMの実践や自国で生産される木材が持続可能な森林で合法的に収穫されたものであるとの証明にITTOガイドラインを大いに役立てることができます。」とサックル事務局長は話しました。「持続可能な経営に置かれた熱帯林の様々な価値を守り、そのような森林による世界森林目標(Global Forest Goals)や持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)、さらに気候変動の緩和・適応への効果的な貢献を実現するのに、ガバナンスや取締りの強化は不可欠です。」

さらに、サックル事務局長は、複雑な情報・データの収集に対する支援や森林ガバナンスと法の施行の強化等を通じて、APEC諸国が合法かつ持続可能な木材貿易に関連のある課題に対処するためにITTOは協力する用意があることを明確に示しました。ITTOは、加盟国と協力して、キャパシティ・ビルディング、技術移転、奨励策の拡大、合法で持続可能な木材についての消費者意識の向上に向けた機会を特定する考えです。

APEC–EGILATに関する詳細はこちら(英語)

第21回 APEC–EGILAT での ITTO の発表資料(英語)をダウンロード