ITTOと国際森林研究機関連合(IUFRO)が森林景観再生の振興を目的に学習モジュールを発表

2021年11月17日

マレーシア・サラワク州にて、高校生が校外学習で訪れたランジャック・エンティマウ(Lanjak Entimau)野生生物保護区で森林の様々な価値について話を聞いている。写真:サラワク州森林局(Sarawak Forest Department)Department

横浜/ウイーン、20211117日:ITTOと国際森林研究機関連合(International Union of Forest Research Organizations:IUFRO)は、森林景観再生(forest landscape restoration:FLR)に関する理解を一層深めるため、高校生や大学生向け無償学習モジュールを発表しました。

FLRは、劣化した景観の生態系機能を回復しつつ、広い範囲の景観で生活を営む人々に多様で持続可能な社会経済的便益をもたらすための全体アプローチです。しかし、その実践は容易ではありません。FLRは多方面から働きかけるプロセスで、これが成果を挙げるには将来世代の教育が極めて重要です。

TTO・IUFROが共同開発した新学習モジュールは、国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration)(2021年~2030年)に寄与するもので、劣化した景観の再生にFLRが果たす極めて重要な役割についての次世代の専門家、政策策定者、意思決定者の知識向上を目的に作られました。この学習モジュールには、ITTOの「熱帯地域における森林景観再生のためのガイドライン(ITTO Guidelines for Forest Landscape Restoration in the Tropics)」(英語)、IUFROの「森林景観再生実践のための実務者向けガイドIUFRO's Practitioner’s Guide for Implementing Forest Landscape Restoration)」(英語)、IUFRO臨時ペーパー第33号(Occasional Paper No. 33)「森林景観再生の実践:アフリカ、アジア、中南米の景観からの教訓(Forest Landscape Restoration Implementation: Lessons Learned from Selected Landscapes in Africa, Asia and Latin America)」(英語)、及び国連食糧農業機関(FAO)のeコース「森林と景観再生のための持続可能な資金協力(Sustainable Financing for Forest and Landscape Restoration)」(英語)といった出版物から得たFLRに関する最新の知識を集約しています。

本学習モジュールは、科学、社会科学、農学、気候変動学、環境研究、林業学、地理学、計画・開発研究のカリキュラムを一層充実したものにするため、熱帯地域内外の高校や大学で活用可能です。

本学習モジュールは4部構成で、パワーポイント資料を使って進められます。教員用と生徒・学生用のプリント資料も付属しています。パワーポイント資料にはケーススタディ動画を盛り込んでおり、質問と課題も含まれています。

  • モジュール 1(FLRの原則)国際的に認知されているFLRの6原則の概要説明を行い、その概念を議論し、各原則の指標となる要素を示します
  • モジュール 2(FLRプロジェクトの設計と実施)現場での長期活動の設計及び実施を通じたFLRのプロセスを掘り下げます
  • モジュール 3(FLRの実施促進とキャパシティ・ディベロップメント)FLRを実践する人々に求められる技能を考察します
  • モジュール 4(FLRへの資金調達)FLRプロジェクト実施に必要な資金の調達方法を検討します

本学習モジュール内容を変更し、地域や現場の状況に合致したFLR事例を踏まえることができます。

本学習モジュールの製作に対し、森林に関する強調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests:CPF)の共同FLRイニシアティブが支援を、地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)のプロジェクト「FLRの一貫性づくりと支援のためのパートナーシップ形成(Fostering partnerships to build coherence and support for FLR)」が資金協力を行いました。

こちらから学習モジュール及び教員・生徒・学生用資料(英語)をダウンロードできます:Modules (zip file)    Handouts (zip file)

IUFROのウェブサイト:https://www.iufro.org/science/special/spdc/netw/flr/lmflr/

編集者注

ITTO広報問い合わせ:ラモン・カリーリョ(Ramon Carrillo)電子メール carrillo@itto.int

国際熱帯木材機関( ITTO )は熱帯林資源の保全と持続可能な経営、そして持続的かつ合法的に管理された熱帯木材資源の貿易拡大と多角化を促進している政府間組織です。お問い合わせや詳細はこちら:電子メール itto@itto.int ウェブサイトwww.itto.int

IUFRO広報問い合わせ:ゲルダ・ウォルフラム(Gerda Wolfrum)電子メール wolfrum@iufro.org

国際森林研究機関連合(IUFRO)は森林研究と関連のある科学を専門とする世界的な機関です。研究機関、大学、科学者、意思決定を行う当局や森林や木に携わるその他の利害関係者が参加しています。お問い合わせや詳細はこちら:ウェブサイト https://www.iufro.org

関連するSDGs

森林景観再生(FLR)の実践は容易ではありません。複数の規模、セクター、時期を横断するプロセスであり、FLRの成果を発現させるには将来世代の教育が極めて重要です。

社会が健全性を保ち、持続可能性と強靭性を伴う再構築の道を辿るためには、生態系が損なわれないことが鍵となります。

森林景観再生によって植生や長生の林産物が多くの炭素を貯留し、気候変動緩和に寄与するでしょう。

FLRは、木やその他の森林構成物を利用して人々と自然とが共存する健全で強靭な生態系を築く包摂的アプローチです。

森林景観再生が普及することで、国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration)(2021年~2030年)の実施を促す一助となるでしょう。