最新研究:非木材林産物が持続可能な林業の採算可能性を高め得る

2021年6月21日, 横浜、チューリッヒ

ボリビアのアマゾン地域で地元の女性が天然のココアを収穫している。写真撮影:S. Opladen/Helvetas

ITTOと貴重な森林財団(Precious Forests Foundation)が本日公表した報告書によると、自然の熱帯木材生産林にナッツ、フルーツ、ゴム、ラタンのような非木材林産物を組み合わせた経営が採算が取れる森林経営への大きな一歩となり得るとのことです。

「何世紀にも渡り、森林に依存する人々は非木材林産物(non-timber forest products:NTFPs)と今日総称される食用・薬用の多種多様なナッツや果物等の植物・動物製品に精通し、これらを利用してきました。」と、本報告書の筆頭著者であるユルゲン・ブレイザー氏は述べました。「しかし、現代の林業では非木材林産物が注目されることは少なくなっています。これは自然林を利用して収入を増やすチャンスそして持続可能な林業の採算性を高めるチャンスを逃していることに他なりません。」

最新研究「木材以外にも(Not Only Timber」では、木材生産やその他の森林利用方法と併せて経営可能で地域住民の生計向上にもつながり得る様々なNTFPsを詳細に調査しています。

本報告書は、著者の現場活動と網羅的な文献レビューに基づき、複合的利用を伴う森林経営アプローチを探っています。その中でNTFPsは経済的に見た自然林の実現可能性を裏付けています。さらに、どのようにして伝統的な森林住民の利害と権利を尊重しながら熱帯生産林でNTFPsを栽培・収穫できるかを述べています。湿潤熱帯林のNTFPsの成功事例としてブラジルのナッツ、ラタン、ゴムを取り上げ、この3事例それぞれについて、持続可能なNTFPsの収穫を実現した要因と戦略さらに持続可能なNTFPs経営形態を維持するにあたって見えた課題を検証しています。

報告書では、熱帯林で生育するNTFPの中から、今後期待されるNTFPをアフリカ、東南アジア、アマゾン地域から2種類ずつ挙げています。さらに、28種のNTFPについて、5つ星評価システムを用い、今後経済、社会、環境にもたらす正の影響を5段階でランク付けしています。

評価対象となったNTFPsの多くに生産量や価格といった正確で最新の情報が不足していることがわかりました。数種の主要なNTFPsにもこの傾向が見られており、その発展を阻んでいます。

ブレイザー博士は「有望なNTFPsに関する詳しい市場調査が緊急に必要です。」と話しました。「さらには、収益に結びつくNTFP市場を確立するには十分な調整の上で行う販促活動も大切です。」

貴重な森林財団(Precious Forests Foundation)の委託によって実施されるフォローアップ調査は、持続可能なビジネスとしてのNTFPsの発展チャンスとその阻害要因を具体的に特定することを目的としています。

「世界各地で自然林は脅威にさらされており、特に熱帯地域でこれが顕著です。」とブレイザー博士は述べました。「持続可能な経営下にある自然林が特に地元の住民の収入につながるようあらゆる手段を講じる必要があります。それが森林保全にもつながるからです。非木材林産物は様々な経済手段の中の重要な一部分となり得ます。」

本報告書(英語のみ)は www.itto.int/ja/technical_report/ 及び https://precious-forests.foundation/en/news/ (英語)にて閲覧可能です。

ITTOは熱帯林資源の保全と持続可能な経営、利用及び貿易を促進している政府間組織です。持続可能な森林経営と森林保全を促進するための政策文書を作成し国際的な合意を図り、熱帯加盟国がこのような政策を各国の状況に応じて取り入れプロジェクトを通じて現場で実践できるように支援し、熱帯木材の生産や貿易に関するデータの収集、分析及び提供を行い、持続可能な森林産業の振興に資するコミュニティから産業全体に至る規模での行動に対して資金協力を実施しています。

貴重な森林財団(Precious Forests Foundationは、熱帯林の持続可能な利用と評価の向上に努めており、地域住民と地球の双方にとって熱帯林がもたらす生態系サービスが永続し、また熱帯林から収穫される再生可能な木材・非木材製品が責任を伴った多様な方法で利用されるよう貢献しています。貴重な森林財団は、認証済みで持続可能な森林経営方法に関連する応用研究に基づくイノベーションを推進し、これに資金協力を行っています。

関連するSDGs

何世紀にも渡り、森林に依存する人々は食用・薬用の多種多様なナッツや果物等の植物・動物製品に精通しこれらを利用してきました。今日、これらは非木材林産物(non-timber forest products:NTFPs)と総称されています。

森林が持つ環境面の特性を持続可能な方法で保護・維持しつつ永久熱帯生産林で持続可能な森林経営が採算可能となるために期待できる追加収入源を探っています。

この研究では、伝統的な森林住民の利害と権利を損なわない、熱帯生産林の複合的経営の中心となる調和のとれたNTFPsの栽培・収穫方法について述べています。