小規模チークプランテーションがメコン河下流域の持続可能な開発の原動力となりうる

2020年3月3日

ラオス・ビエンチャンにて「ラオスチークフォーラム」第1日目の参加者。
写真撮影:ラオス国立農林業研究所(National Agriculture and Forestry Research Institute:NAFRI)

小規模チークプランテーションは山村コミュニティの生計や景観を向上させ、メコン河下流域の持続可能な開発の原動力となる力を秘めています。2月にラオスで開催されたチークに関するフォーラムの参加者によると、その力を発揮させるには、知識や技能、質の高い植林物質、小規模の財政支援が重要であるとのことです。

ラオスチークフォーラム:持可能な地方開に向けた持可能なチクのバリュチェ」に参加したおよそ50名は、ラオスでの持続可能なチークのバリューチェーンに向けた機会と課題を再考察しました。本フォーラムは、ドイツ連邦食糧・農業省(Federal Ministry of Food and Agriculture:BMEL)の資金協力により、ITTOがラオス国立農林業研究所(National Agriculture and Forestry Research Institute:NAFRI)との協力の下で2020年2月19日から20日にかけてラオス・ビエンチャンおよびルアンパバーンにて開催しました。

チークはラオス人民民主共和国の在来種で、同国では天然のチーク林がおよそ68,500ヘクタールに渡り広がっています。さらに、民間企業や山村コミュニティが整備したチーク林はルアンパバーン県やボーケーオ県を中心に36,000ヘクタールに及びます。フォーラム参加者によると、小規模チークグループを編制することでより付加価値の高いチーク製品のサプライチェーンに農業従事者が参入することが可能となるとのことです。

ヨーロッパのような高値をつける市場の獲得にこれは極めて重要です。

フォーラムの開会の挨拶でBMELのシュテファン・ワーグナー氏は「ドイツやヨーロッパの他の地域では依然チークに高価値がつけられており、合法かつ持続可能な方法で収穫されたことが確実に証明されるならば、木材市場では引き続き大きな潜在性を有しています。」と述べました。

フォーラム参加者は、小規模森林所有者は確実な土地所有権、技術的知識、質が高くかつ安価な植林物質、財政的奨励策や付加価値創造を支える適切な政策を必要としていることが多い点に留意しました。本フォーラムでは次のような提言がなされました:

1.  土地所有権を確保する。これはチークプランテーションを確実に発展させるために不可欠です。さらに、チーク材の収穫、輸送、販売に関する規則や規定が簡素化され小規模プランテーションに対する規制面の負担が軽減されれば、これを支える所有権政策の有効性は増すでしょう。簡易メカニズムを開発してREDD+の対象を小規模プランテーションに広げ、農業従事者に対して炭素インセンティブを提供することで、より多くのプランテーションが設立が促されるでしょう。

2.  小規模チークプランテーションに対する革新的な認証制度を推進し高額な取引費用を軽減する。森林認証はチークといった国際市場で需要の大きな木材にとって次第に重要となってきましたが、小規模森林所有者は現行の認証制度に含まれる高額な取引費用を負担することができません。ルアンパバーンチークプログラム(Luang Prabang Teak Programmem)の下で運用中のスキームのような地方当局による小規模チークプランテーション認証は人工チーク材の合法な原産地を証明する一助となり得ます。

3.  質の高い遺伝物質と適切な技術を活用することで小規模チークプランテーションの生産性と品質を向上させる。適切な樹木配置、剪定、間伐といった良好な育林方法を遂行している小規模森林所有者に対して研修や公開講座を行い良質の遺伝資源を供給することで人工林の生産性とチーク材の品質を格段に向上させることができます。

4.     効果的なバリューチェーンを目指して小規模チーク所有者のグループを設立する。ルアンパバーン地域で編制されているようなグループは、所有者同士が協力して、チーク材の価値を高め、地元の貸付機関との取引を利用して信用や貸付条件の緩やかな融資(ソフトローン)を得るのに役立っています。そのようなグループがラオス全国に普及するべきです。また、税金優遇措置を実施して小規模森林所有者の意欲を起こすこともできるでしょう。

5.   剪定と間伐による付加価値を促す。間伐による利益は小規模森林所有者にとって重要で、チーク材は余すことなく利用されなければなりません。木材加工技術や手工業技巧に関する研修の実施によって、農村地域の雇用を生み出すとともに、チーク製家具の現地製造やDYI(Do-It-Yourself)向けの森林製品を改善することができます。

6.     森林育成者、加工業者、取引業者間のネットワーク作りおよび官民連携(public-private partnership)を拡大させる。コミュニケーションや情報共有が促されれば地域のチークのサプライチェーンおよびバリューチェーンの強化につながるでしょう。

「ラオスチークフォーラム」はドイツ連邦食糧・農業省(BMEL)を通じてドイツ政府が資金協力を行っているITTOのプロジェクト(PP-A/54-331)「大メコン圏におけるチーク林の保全と持続可能な経営および合法的かつ持続可能な木材サプライチェーンの強化(Enhancing conservation and sustainable management of teak forests and legal and sustainable wood supply chains in the Greater Mekong)」の一環として実施されました。本プロジェクトのパートナーは、カンボジアの林業局(Forestry Administration)、ラオスNAFRI、タイ王室森林局(Royal Forest Department)、同国のカセサート大学(Kasetsart University)、ベトナム森林科学アカデミー(Academy of Forest Sciences)です。

BMELのシュテファン・ワーグナー氏は、ドイツ政府は貴重な樹木と木材種としてのチークの安定した将来を実現するための取組強化を支援していると話しました。

ワーグナー氏は、「独自のプロジェクト活動と教訓を世界のチークネットワークのそれに結びつけることで、ITTOがプロジェクトを超越したキャパシティビルディングおよび知識や技能の移転を推し進めることを私達は期待しています。」と述べました。