理事会、ITTA交渉に向けて前進; 各国メンバーが新たな資金拠出を発表

第61回国際熱帯木材理事会(ITTC61)第4日目、質問に答えるシャーム・サックルITTO事務局長。© ITTO

2025年10月30日、パナマシティ — 国際熱帯木材理事会は、第61回会合(ITTC61)第4日目において再び会合を開き、熱帯林ガバナンスの将来に関する議論を継続しました。この日の会合では、国際熱帯木材協定( International Tropical Timber Agreement: ITTA)の交渉準備が主な焦点となり、同時にITTOの活動をさらに推進するための新たなドナー拠出の発表も行われました。

新ITTA交渉のための準備作業部会(PWG)ロードマップを中心とする理事会の議論を導くカルロス・エスピノーサ・ペーニャITTC61議長。© ITTO

加盟国、ITTA交渉への道筋を議論

理事会での議論は、今後予定されるITTA交渉の日程を提案する「準備作業部会(Preparatory Working Group: PWG)ロードマップ」に焦点を当てて行われました。生産加盟国は、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの3地域で新たに地域調整グループを設立したことを報告し、その目的は内部協議の強化および生産国の意見を十分に反映させる体制を確保することにあると説明しました。

生産国は、PWGの活動を2026年まで延長することを支持し、また、事務局が提案した、第62回理事会(ITTC62)の開催に合わせた対面形式の準備委員会の開催案を支持しました。消費加盟国側は、ITTC62を月曜日から土曜日までの6日間で開催し、その前後または冒頭2日間を準備委員会に充てる形式を希望しました。

見解を述べるEU代表。© ITTO

協定の適用範囲を拡大する可能性については、意見が分かれました。たとえば、非木材林産物や生態系サービス、熱帯林プランテーション、より幅広い木材製品などを明確に対象に含めるかどうかという点です。一部の生産国は、熱帯林産物およびサービスの範囲を広げることに前向きな姿勢を示しましたが、他の国々は、他の国際的なプロセスとの重複を避ける必要性を強調しました。

複数の消費加盟国は、まず既存の課題、特に資金面の問題に優先的に取り組むべきであり、協定の権限拡大の議論はその後の話だと述べました。また、交渉サイクルの遅延を避けるためには、すべての加盟国が迅速に関与することの重要性を指摘しました。また、いくつかの代表団からは、PWGロードマップの提案するスケジュールが非常に厳しく、現在のITTAの有効期限である2029年直前に交渉が終了する見込みである点を懸念する声も上がりました。

会合を行う生産加盟国。© ITTO

加盟国の構造も議論の対象となりました。一部の加盟国は、熱帯木材の消費国であり生産国でもある国が増えている現状を踏まえ、コミュニケーションや協力を強化するために、単一のメンバーシップ区分またはハイブリッド型モデルの導入を検討するよう提案しました。一方で、他のメンバーは、投票権および分担金への影響を考慮し、現行の組織構造を維持することを支持しました。

ITTC61の議長、カルロス・エスピノーサ・ペーニャ氏は、すべてのメンバーに対し、PWG報告書を詳細に検討し、交渉プロセスを支援するために国内協議を実施するよう促しました。ITTA交渉プロセスの今後の取り決めに関する議論は継続されており、理事会は2025年10月31日のITTC61閉会までに決定を採択することを目指しています。

日本政府は、外務省および林野庁からの拠出を発表し、生物多様性保全、ITTO資料の翻訳、ペルー・ベトナム・トーゴでの新規プロジェクトなどを支援すると発表しました。© ITTO

ドナーによる拠出の発表

理事会は、特別会計およびバリ・パートナーシップ基金(BPF)の下での新たな拠出誓約を歓迎しました。

日本は、外務省(MOFA)および林野庁の双方からの拠出を発表し、生物多様性保全、ITTO資料の翻訳、さらにペルー、ベトナム、トーゴでの新規プロジェクトなどの活動を支援するとしました。

オーストラリアは、二カ年事業計画(Biennial Work Programme)に基づく生物多様性関連活動への任意拠出を確認しまし、カナダは、最近の森林火災対応イニシアティブおよび統計能力構築への支援を強調しました。

また理事会は、ITTOバリ・パートナーシップ基金からの資金を2026年のITTOフェローシップ・プログラムに充てるという勧告を承認しました。

ITTOの資金メカニズムの実施状況について加盟国に報告するシャーム・サックルITTO事務局長。© ITTO

より強固な資金調達への要請

理事会メンバーは、ITTOの資金メカニズムの実施状況について報告を受けました。この中には、4つのプログラムラインの恒久的な設立が含まれています。2019年以降、61件のコンセプトノートが提出され、そのうち15件が完全なプロジェクトとして開発・実施段階に進んでいます。

このような進展にもかかわらず、サックル事務局長は、承認済みプロジェクトおよび構想提案書のうち、総額800万米ドルを超える案件が依然として未資金状態にあると指摘しました。複数の代表団は、資金的な制約がプロジェクト開発を阻害し、最終的には加盟国の組織への関心低下を招く恐れがあるとの懸念を表明しました。

代表団は、事務局がすでに進めている、緑の気候基金(Green Climate Fund)や地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)などの多国間機関を含む資金パートナーへの働きかけをより積極的に行うよう求める声が上がりました。事務局は、ITTOのサンセット条項によりプロジェクトが失効するのを防ぐため、加盟国がプロジェクト資金の適格性を維持するための選択肢について説明しました。

声明を発表するカサンドラ・プライス氏(オーストラリア)。© ITTO

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理事会会合の詳細情報および各発表資料は次のページにてご覧いただけます(本文英語): https://www.itto.int/ittc-61/presentations

IISDレポーティング・サービスによる日次報告はこちら(英語): https://enb.iisd.org/ittc61-international-tropical-timber-council

ゲァハート・ブロイルマンITTO事務局次長(総務)。© ITTO
アシル・オルフェ・ロコスー氏およびユリス・コロゴネ・シナガベ氏(ベナン)。© ITTO
パナマのチークプランテーションを視察するITTO加盟国の代表団。© ITTO
進展状況を議論するラテンアメリカ地域の代表団。© ITTO
ラタ・ムダ氏(ニュージーランド)。© ITTO
新ITTA交渉に向けたロードマップ案に関する審議を注視する代表団。© ITTO
パナマの合板工場視察中、丸太の束の前で立つオクタビオ・カラスキージャ氏(ラテンアメリカ・カリブ開発銀行)とトゥッリア・バルダッサーリ氏(インターホルコ・スイス)。© ITTO
カルメン・ロゼリ・カルダス・メネゼス氏(ブラジル)。© ITTO
カタジナ・クライエフスカ氏(ポーランド)。© ITTO
MiAMBIENTEパナマ主催の視察の一環で訪れた合板工場で丸太を加工する作業員。© ITTO
剱 明穂氏(日本)。© ITTO
チークプランテーションの経営について説明を受ける視察参加者。© ITTO
パナマのチークマネジメントについて学ぶ参加者。© ITTO