スマトラ島の生物圏保護区を守るITTOプロジェクトにより、生物多様性グローバルフレームワークが前進
2023年5月22日

インドネシア、スマトラ島リアウ州、ギアム・シアク・ケチル・ブキット・バトゥ生物圏保護区の風景。写真:Sunawiruddin Hadi
2023年5月22日、横浜:インドネシアのスマトラ島にある70万5,000ヘクタールのギアム・シアク・ケチル・ブキット・バトゥ生物圏保護区は、保全と持続可能な利用のための地域です。同地域で持続可能な景観管理を促進するためのITTOプロジェクトが、最初の運営委員会を開催しました。会議は、生物多様性を称える日である5月22日の国際生物多様性の日(英語)に先駆けて、実施されました。
ITTOプロジェクトPD 712/13 Rev.3 (F)「スマトラ島リアウ州のギアム・シアク・ケチル・ブキット・バトゥ生物圏保護区(GSK-BR)における景観管理の実施強化」は、GSK-BRの管理上の課題や基本的な機能の達成を支援するために設計されています。このプロジェクトは、韓国政府から韓国山林庁等を通じて資金提供を受けています。
シャーム・サックルITTO事務局長は、「この重要なプロジェクトを、スマトラ島の政府および関係者とともに実施できることを誇りに思います。このプロジェクトは、保護区内の驚異的な生物多様性の保全と、地域コミュニティの生活向上の両方を支援することで、最近合意された昆明・モントリオール生物多様性枠組(日本語)に大きく貢献すると信じています。」と語りました。
GSK-BR生物圏保護区は、スマトラゾウやスマトラトラを含む重要な動植物の生息地です。また、この地域の泥炭地には、推定で地上4,430万トン、地下17億1,000万トンのCO2に相当する量の炭素が蓄積されています。
運営委員会の開会に際して、プロジェクトの実施機関であるインドネシアの環境林業省の環境林業機器標準化部門(ASEFI)のアリー・スディヤント局長は、これらの炭素蓄積は、地球の気候安定性を確保し、インドネシアの政策である「林業および土地利用部門における排出量の純吸収の達成(FoLUネットシンク2030)」を達成するために重要だと語りました。
「GSK-BRの保全は多くの理由から重要ですが、最も肝心なことの一つはこの炭素吸収源を維持することです。」とスディヤント局長は述べました。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は2009年、GSK-BRを生物圏保護区に指定しました。人間と生物圏計画(MAB計画)-ユネスコ・インドネシア国内委員会の委員長であるプルワント教授によると、同地域は、政府機関から地域社会までの多様な関係者が参加するボトムアップ・プロセスで提案されたインドネシアで最初の生物圏保護区です。生物圏保護区は、生物多様性の保全と持続可能な開発を景観規模で統合する包括的なアプローチを体現するものであり、その管理には統合的な戦略とステークホルダーの全面的な関与が必要となります。
GSK-BR生物圏保護区の景観は、コアゾーン、バッファゾーン(緩衝地帯)、トランジションゾーン(移行地域)に分けられています。
「管理機関の改善は見られるものの、GSK-BR生物圏保護区の活性化も必要であり、各ゾーンにタスクフォースが必要です」とプルワント教授は述べています。
ITTOのプロジェクトチームが最近保護区を訪問したところ、保護区の泥炭地の生態系は、土地の劣化、土地転換、火災によって圧力を受けており、生態系サービスの提供や生物多様性に悪影響を及ぼしていることがわかりました。
スディヤント局長は、プロジェクトでは、生物圏保護区の完全性を維持しつつ、生計を向上させるために地域コミュニティと密接に連携する予定であると述べました。コミュニティのリーダーたちは、プロジェクトが農業従事者の能力強化を実施し、持続可能な生計を立てる能力を向上させることに期待を寄せています。
また、このプロジェクトは、生物圏保護区の管理基準の策定も期待されています。
「この管理基準の運用が成功すれば、他の場所でも活用することができます」とスディヤント氏は述べました。
サックル事務局長は、このプロジェクトは、ITTOと生物多様性条約(CBD)の間で大きな成功を収めている熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブの一部であると説明しました。2011年に開始されたこの共同イニシアティブは、昆明・モントリオール生物多様性枠組と世界森林目標を推進するためのITTO加盟国とCBD締約国の努力を支援することに焦点を当て、2025年まで延長されました。現在までに、この共同イニシアティブは、熱帯の23カ国を対象とした、総予算約1,300万米ドルの16のプロジェクトに関与してきました。独立したテクニカル・レビューによると、これらのプロジェクトは、地域の生活と森林経営の改善、劣化した森林の回復、生物多様性の保全において「並外れた成功」を収めたとされています。
「ITTOは引き続き、組織のミッションを達成するために多様なパートナーと協力していきます。」とサックル事務局長は述べました。「このプロジェクトに関わるすべての人々を歓迎し、生物多様性とコミュニティの成功に向かって、建設的に取り組んでいくことを楽しみにしています。」
ITTOは、生産性の高い熱帯林における生物多様性の保全に取り組んできた長い歴史を持っています。2009年には、「熱帯木材生産林における生物多様性の保全と持続可能な利用のためのITTO/IUCNガイドライン(ITTO/IUCN Guidelines for the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity in Tropical Timber Production Forests)」(英語)を発表し、経営上の活動において生物多様性の保全を最大化するための原則と行動を定めています。現場レベルでは、カンボジア、ラオス人民民主共和国、タイにまたがるエメラルド・トライアングル保護林群、インドネシアのベトゥン・ケリフン国立公園、マレーシアのランジャック・エンチマウ野生生物保護区、メキシコとグアテマラにまたがるタカナ火山地域など、多様なITTOプロジェクトが国境を越えた生物多様性の保全に取り組んでいます。ITTOは、3つの熱帯地域にわたる1,000万ヘクタール以上の越境保全地域の管理を支援し、世界中で生物多様性の保全と越境保全地域の管理における能力構築を実施してきました。したがって、ITTOは、生物多様性の保全と持続可能な開発を両立させるための各国の努力を支援する上で、最適な立場にあると言えます。