世界観光デーを祝して ― 熱帯林におけるエコツーリズムがパンデミックからの復興に貢献する可能性
2022年9月27日

グアテマラとメキシコの国境にあるタカナ火山影響地域における主な観光目的の1つは、ハイキングです。ITTOプロジェクトは、収入と雇用を得るための手段として、実現可能なエコツーリズムを含む持続可能な林業を推進しています。写真:Helvetas
2022年9月27日、横浜:持続的に経営されている熱帯林は、その見事な美しさ、計り知れない生物多様性、そして文化的重要性から、地域に根ざした低負荷のエコツーリズムに大きく貢献する可能性があります。世界観光デーを記念して、地域社会におけるエコツーリズムを促進するITTOの活動の一部を紹介します。
今年の世界観光デーのテーマである「Rethinking Tourism(観光再考)」(英語)は、観光が開発とより良い復興(building back better)の柱となることの重要性を強調しています。国連によると、地球上の10人に1人が観光産業に従事しています。国連世界観光機関(UNWTO)によると、2022年1月の国際観光客数は、2021年の同時期と比較して2倍に増加しました。
地元の生活を支え、生物多様性の保全を助け、森林生態系を再生し、旅行者に喜びを与える、実行可能なエコツーリズムに対して、持続可能な林業が多くの機会を提供するということが、熱帯地方におけるいくつかのITTOのフィールドワークで示されています。
メキシコとグアテマラの国境にあるメソアメリカ生物回廊(Mesoamerican Biodiversity Corridor: MBC)の一部であるタカナ火山の影響地域におけるITTOの越境プロジェクト(英語)は、地域の森林資源の保全と持続可能な利用に基づいて、地域住民の生活水準を向上させました。この地域は、ハイキングやバードウォッチングなどの多彩な楽しみ方ができ、エコツーリズムにとって大きな可能性を秘めています。プロジェクトでは、195ヘクタールの森林を再生し、景観の連結性を改善し、地元コミュニティに起業や観光サービスに関するトレーニングを実施しました。また、メキシコとグアテマラの観光関連機関の協力関係を促進し、観光インフラや設備の改善も行いました。全体として、本プロジェクトは1,534世帯に直接的な恩恵を与え、約7,000人に間接的な利益をもたらしました。
長期にわたって実施されたITTOプロジェクトによって、インドネシアの西カリマンタン州にあるベトゥン・ケリフン国立公園と、マレーシアのサラワク州にあるランジャック・エンチマウ野生生物保護区との間の越境保全における協力が強化されました。この地域は、豊富な動植物、多様な生態系、ペナン族の豊かな文化などから、トレッキングなどのエコツーリズムに大きな可能性を持っています。保全の恩恵は、共同管理、持続可能な森林利用、エコツーリズムを通じて共有されています。一連のITTOプロジェクトにおける最新プロジェクト(英語)では、西カリマンタン州とサラワク州で、エコツーリズムに関する村単位の実現可能性を調査し、エコツーリズムの推進に関するフォーカスグループによる聞き取りを行いました。
カメルーンでは、ITTOプロジェクト(英語)が、「水の塔」としても知られるバンブトス山脈の復元と持続可能な経営を推進しました。このプロジェクトでは、参加型開発と森林の保全・再生に関する調査・研究を行い、この地域が観光において高いポテンシャルを持つと結論づけました。調査では、同地域を保護区にするために妨げとなるさまざまな制約の排除を推奨し、この地域の劣化した森林を修復する価値について、地元の人々の認識を高めました。
シャーム・サックルITTO事務局長は、「ITTOプロジェクトは、熱帯林の保全と持続可能な利用に向けた取り組みが、エコツーリズムの可能性を引き出すことができると示しています。」と述べました。「このような活動に取り組む際は、関係者間およびセクターを超えた連携が必要になります。また、地域コミュニティがエコツーリズムを提供する能力を開発するには、支援を受ける必要があります。観光における気候変動対策に関するグラスゴー宣言(英語)、および、COVID19からのより良い復興に役立つエコツーリズムの可能性を踏まえると、熱帯地方でこれらのプロジェクトと同様の取り組みを実施したり、規模を拡大したりする必要があると言えます。」