女性の平等な地位が熱帯地域における持続可能な林業の実現への鍵

2022年3月8日

女性は持続可能な林業において非常に重要な役割を担っている。写真撮影:Gerardo Sánchez-Vigil

横浜、202238日:伝統知識の管理人として、多様な林産物を収集し利用する者として、また林業の専門家として、さらにその他多くの役割の担い手として、林業では女性が常に重要な存在であり続けてきました。女性の役割を認識し充実を図ることは、持続可能な林業を実現し森林での暮らしを向上させるために極めて重要です。

ITTOは長年、林業における女性のエンパワーメントとジェンダー平等の推進そして政策活動に携わってきました。2018年に発表した「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関するITTO政策ガイドライン(原題:Guidelines on Gender Equality and the Empowerment of Women)」(英語)は、この決意を制度として推し進めるものです。本ガイドラインは、ジェンダー平等をITTOの政策、諸計画、プログラム、事業、活動、人員配置において内部化するための枠組となり、ITTOの活動と持続可能な開発目標(Sustainable Development Goal)5「ジェンダー平等を実現しよう」とを直接的に結びつけます。

熱帯地域の女性は、林地を管理する権限が限られていること、資金源、教育、研修、技術へのアクセスに乏しいこと、自身に影響する意思決定のプロセスへの関わりが少ない、といった壁に共通して直面しています。ITTOは、そのようなハードルの克服を目指す事業に資金協力しています。

例えばトーゴでは、森林景観再生とアグロフォレストリー方法の改善に協力するITTOのイニシアティブにより、2県の女性の生活が変化しつつあります。

本イニシアティブ「トーゴ・ブリタ(Blitta)県およびラックス(Lacs)県の女性グループによる森林景観再生支援(Support for women’s groups with the restoration of forest landscapes in the prefectures of Blitta and Lacs, Togo)」は、創価学会による資金協力を得て、参加女性が新しい技能を習得し、就業し、金銭的に自立できるよう支援しています。女性達は、苗床の設置、種子生産、再造林技術、エンリッチメントプランティング(有価樹種の生産性向上のための植栽)及びアグロフォレストリーの研修を受けました。本イニシアティブにより、今日までに、劣化したおよそ20ヘクタールの土地に植林がなされ、アグロフォレストリーが導入され、女性達に自立心や自尊心が芽生えました。同時に、女性達の生計向上に結びつく今後の機会も生まれました。

「このイニシアティブで、私たちの技能が向上し必要な資材や道具も補われました。」地元の女性グループ NOVISSIの代表を務めるベアトリス・サンディ氏はこう話します。「今日、樹木のプランテーションを持つことができ光栄です。とうもろこしや大豆の販売を通じて収入を確保でき、同時に、家族を養うのに十分な量を生産することもできています。」

インドネシアのバリでは、ITTOのプロジェクトで竹編に従事する女性にキャパシティビルディングが行われ、女性達による竹製品デザインの改善や家計の管理が可能になりました。さらに、同プロジェクトによって、女性は世帯収入への貢献を増やし、同時に竹編技術を次の世代に継承するという大切な伝統を守ることもできました。

「新型コロナウイルス感染症が流行する中でも、女性グループは決意を翻すことなく活動を続けてきました。」ITTOのプロジェクトコーディネーターであるデシー・エクワティ氏はこのように話します。「女性達は、家族を養いながらスキルや知識を女子児童や若い女性に伝え続けています。」

ITTOは、フェローシップ・プログラムを通じた女性の専門性開発への支援も長年行っています。フェローシップを受けた多くの女性のうちの一人であるアディ・エステラ・ラソス氏は、2013年に奨学生となり、現在はメキシコ国立自治大学(Universidad Nacional Autónoma de México:UNAM)で研究員として活躍しています。

ラソス氏は、「ITTOフェローシップ・プログラムの奨学金を受けた経験は貴重でした。」と述べました。「私はリオデジャネイロ植物園(ブラジル)で調査を実施しましたが、 このおかげで視野が広がり、研究員としてのキャリア形成につながったのです。」

ラソス氏は、農村部と都市部では女性のエンパワーメントの状況には確かに差があり、この差を縮めるために一層の取組が必要であると指摘しました。

「ジェンダーに関わる課題をあらゆる活動に組み入れるITTOの取組はよく知られています。ここに祝意を表します。」ラソス氏はこのように述べました。

シャーム・サックルITTO事務局長は、ITTOの37年の歴史の中で初の女性事務局長となりました。「国際機関であるITTOの事務局では、職員の44パーセントが女性であり、女性の活躍が目立ちます。プロジェクトの開発・実施、フェローシップ、その他の活動においてベスト・プラクティスをジェンダー関連課題でも適切に実践するよう努め、その結果を広く普及させることで、これからも自然資源管理における女性のリーダーシップを育んで行く所存です。キャパシティ・ビルディングと啓発が女性のエンパワーメントおよび熱帯地域での持続可能な森林経営の改善の有効な手段です。」と話しました。

ITTOは、男性と女性が、その文化の範囲で尊重し合い、認め合い、支え合いながら協力し共生することでのみ、社会や地域の力は最大には発揮されると考えています。

関連するSDGs

男性と女性がその文化・慣習の範囲で尊重し合い、認め合い、支え合いながら働き共生することでのみ、社会や地域の力は最大には発揮されるとITTOの活動は認識しています。ITTOは、林業分野の女性のエンパワーメントを目指す事業に資金協力を行っています。