最新報告書:世界の資源消費量は2050年までに倍増、持続可能な熱帯木材のニーズも高まる
2021年7月2日
横浜、2021年7月2日: 本日発表のITTOの調査報告書によると、世界的な資源利用は2050年までに倍増する可能性があり、熱帯木材生産国にとってはこれが好機となるとのことです。この報告書では、21世紀半ばまでに熱帯工業用丸木の生産量の大幅増を予測していますが、このセクターでの生産活動でカーボンニュートラルに近付くならば同セクターへの支援が必要であると述べています。
「熱帯木材2050:熱帯木材のこれからの需要・供給と持続可能な経済への貢献の分析(原題:Tropical Timber 2050: an Analysis of the Future Supply of and Demand for Tropical Timber and its Contributions to a Sustainable Economy)」は、国際森林生産モデルと公開されているデータを用いて2050年までの熱帯木材の需要と供給の見通しと熱帯木材資源・製品・産業の動向を述べています。
クリスチャン・ヘルド、エヴァ・マイヤー=ランズバーグ、ヴェロニカ・アロンソの執筆による本報告書では、政治的アクションや求められる産業開発が遂行されない限りは、再生不可能な部門での資源利用は増えていき、プラネタリー・バウンダリーを超えて汚染の外部性を高めるとしています。
他方、再生可能エネルギーへの転換はすぐにでも実行可能な解決策です。
ヘルド博士は、2050年までに世界中で資源利用が倍増すると持続的な供給が追いつかなくなり、生物多様性、気候、生態系、人々の福利に負の影響を引き起こすであしょう、と話しました。「世界全体で効率的な資源利用に重点的に取組み、木材のような再生可能で持続的に生産される物資を中心とした炭素中立的な生産方法に転換することが緊急に必要です。」
本報告書によると、建設部門及びプラスチックや繊維といったその他の部門で高まっている物資需要は、木材を原料とする製品で充足することが可能であることから、熱帯木材は代替物資として有用となり得るとのことです。しかし、熱帯木材部門は他に比較して成熟しているとは言えません。報告書では、熱帯木材部門の持続可能な成長の後押しとなり得る5つの相互補完的な戦略を打ち出しています。
「周知の通り、環境激変の回避に世界をあげて取組むならば、熱帯木材を含む木材が今後の物資消費の中心とならなければなりません。」スティーブン・ジョンソンITTO事務局長代理はこう述べます。「本報告書の情報量は豊富で、熱帯森林セクターが気候変動に対抗する中で重要な役割を果たしつつ熱帯地域の国やコミュニティの経済的な豊かさを向上にも貢献するよう目指す取組に政府や民間組織がこれまで以上に関与するのに役立てられるでしょう。」
本調査では次のような結果も明らかになりました:
· 控えに見積もっても、世界の丸太生産量は2050年までに13パーセント増となる43億立法メートル(m³)まで増加する。熱帯木材生産地域での2050年の丸太の総生産量は13億m³で、薪がこのうちの57パーセントを占めると予測される。
· 2050年の世界の薪生産は2015年の18億m³から21パーセント減り15億m³となる。この減少は主にサブサハラ・アフリカでの薪の消費縮小によるものである。
· 2050年までに世界の工業用丸木生産は45パーセントの伸びを見せ、28億m³となると見込まれる。熱帯地域での生産量も24パーセント増の5億3,300百万m³と予測される。
· 2050年までに熱帯木材生産地域全域が工業用丸木の純輸出国となる。
· プランテーションで栽培された熱帯工業丸木の供給量が増え、自然林で栽培された熱帯工業丸木が全供給量に占める割合は2015年の35パーセントから2050年には27パーセントに低下するであろう。
· 市場シェアを保つには、商業用樹種の種類を増やし、炭素・生態系サービスによる収益を含めることによる熱帯林での木材生産の競争力向上が求められる。
· 産業向けコンセッションやコミュニティは、造林方法を改善し第三者による合法性と持続可能性認証を受ける必要がある。
· 今後、大規模な人工林の大幅な拡大は見込まれず、小規模所有者やアグロフォレストリー体制による木材生産が中心となる。この両者共に生産性と木材の質の両方において改善の余地がある。
· 未公開株の資本化や大小プランテーション経営への奨励策がセクターとしての成長のきっかけとして非常に重要である。
本報告書は自然熱帯林への投資を奨励及び自然熱帯林由来の木材・木材以外の森林製品の持続可能な生産に関する知識と学びを提供するITTOの実施中の取組の一環として作成されました。
本報告書はhttps://www.itto.int/ja/technical_report/ にて無料で閲覧できます