最新研究:持続可能な森林経営を促す奨励策を見直すべきである

2021年4月23日, 横浜

ペルー・ウカヤリ(Ucayali)県のペルー・アマゾンの森林経営地域にて、森林従事者が作業内容を話合っている。 写真撮影:P. Recavarren/AIDER

2021年4月23日、横浜:本日発表のITTO報告書(フランス・国際農業開発研究センター(Agricultural Research Center for International Development:CIRAD)アラン・カーセンティ著)によると、熱帯地域の持続可能な森林経営(SFM)を奨励するための各国政府による一層の取組の余地があるとのことです。熱帯地域の8か国の現行体制を検証した本報告書では、良好な森林経営に結びついている既存の奨励策はわずかでこの促進にはほとんど寄与していないことが判りました。

持続可能な森林経営(SFM)に向けた財政・非財政奨励策(Fiscal and Non-fiscal Incentives for Sustainable Forest Management)(英語)は、持続可能な熱帯林経営に向けた現行及び今後の奨励策や抑制要因を分析的な見方で検証しています。ITTOの生産加盟国による森林の持続可能な開発に向け有効で成果につながる奨励策の策定・実施の助力となることを目的としています。

本報告書では政府や利害関係者向けに22の提言を行っています。その一つは、政府は財政奨励策を独立した第三者による認証に結びつける、というものです。ここで検証されたアプローチは「ボーナス・マルス(bonus-malus)」メカニズムで、認証を取得した事業(「ボーナス」)に対しては一部又は全面的に税率が引き下げられ、認証を取得していない製品(「マルス」)に対しては高い税率が適用され、「ボーナス」の原資となります。

報告書の中ではガボンで2020年に採択されたボーナス・マルス政策を取り上げています。地域によって次の3段階の税率が定められました:1) 最も優遇された税率 - 森林認証を取得したコンセッションに対するもの、2) 中間的税率 - 合法性認証を取得したコンセッションに対するもの、3) 最も高い税率 - 未認証のコンセッションに対するもの。

しかしながら、カーセンティ氏が指摘するように、このようなアプローチによって、すぐに認証を取得する手段を持たない事業が不利益を被ることを懸念する政府もあるかもしれません。このような場合、認証を取得した企業に対する優遇税率は、少なくとも一定期間は、生産国と国際開発パートナーとの間の国際資金移動によって賄うことが可能です。また別の提言は、SFMを奨励する政策の成果を最大限に発現させる方法として変革の理論を政府が開発する、というものです。

本報告書では、財政面以外の奨励策も検証しています。小規模民間林業の支援を目的として、地域住民、世帯や家族に対する森林所有権の承認を優先的に行うことがその一つです。これにより、農業従事者による樹木を保有や手入れを促し、合法的な小規模事業開発の機会を増大させることができます。

本報告書は、ITTOの二カ年事業計画(biennial work programme)下で実施中の活動として作成されました。同計画に基づき2019年に世界銀行と共催したSFMに向けた奨励策に関するワークショップに対しても資金協力が行われており、世界銀行はこのワークショップ開催後に関連文書持続可能な森林に向けた財政手段の設計(Designing Fiscal Instruments for Sustainable Forests)(英語)を発行しました。2020年にITTOは2050年までの熱帯木材の需要と供給の動向(及びこれがSFM奨励策に及ぼす意味)に関する関連調査を実施しました。本調査の報告書である「熱帯木材2050(Tropical Timber 2050)」は2021年半ばに発行予定で、本報告書とともにITTOウェブサイトに掲載されます。

本報告書及び付属文書は、ブラジル、カンボジア、コンゴ共和国(the Congo)、コートジボワール、ミャンマー、ペルー、タイ、ベトナムの詳細なケーススタディを掲載しています。https://www.itto.int/ja/technical_report/にて閲覧可能です。

本報告書(英語)をダウンロードする

本報告書の付属資料(英語)をダウンロードする

関連するSDGs

本報告書は自然熱帯林及び自然熱帯林由来の木材・非木材製品の持続可能な生産に対する投資を奨励するための今後可能な枠組に関する知識と学びを提供しています。
本報告書に掲載されている情報やケーススタディは政府や民間セクターによる熱帯林関連の気候変動緩和及びREDDプラスのプロセスへの一層積極的な関与に役立てられます。
本報告書の知見は持続可能な林業の経済的実現可能性の向上につながり、持続可能な開発と陸域生態系保護に寄与します。