ITTO、2023年における熱帯木材製品の大部分の貿易不振を報告

ドナーがITTOの事業に430万米ドルの新規資金を発表
4日目の会合の開始を待つ代表団。写真:P.Sarigumba/ITTO

2024年12月5日、横浜:消費国の大半で経済成長の鈍化、インフレによる生活費危機、中国の不動産セクターの減速を受け、熱帯木材製品の取引の大部分が2023年に大幅に減少したと、第60回国際熱帯木材理事会の4日目に発表された報告書が示しました。

ITTOコンサルタントのフランセス・メイプルズデン氏が発表した報告書「世界の木材状況に関する隔年評価報告書(Biennial Review and Assessment of the World Timber Situation)2023-2024」は、2023年と2024年のITTO加盟国における熱帯林産物の生産と貿易、熱帯林の状況に関するデータと、加盟国の全ての木材製品の生産と貿易統計の概要が掲載されています。データは主に、共同森林部門質問票に対する各国の回答から得られたものです。

ITTOの主要出版物である「世界の木材状況に関する隔年評価報告書」の事前調査結果を発表するコンサルタントのフランセス・メイプルズデン氏。写真:P.Sarigumba/ITTO

「パンデミック後の熱帯木材貿易は、消費者市場での需要の高まりに呼応して成長したが、2023年にはほとんどの熱帯木材製品の貿易が大幅に減少したました。」とメイプルズデン氏は語りました。

2023年の熱帯丸太の貿易量は、ITTOの統計記録上最低の約1,000万立法メートルに減少し、対前年比では16%の減少となりました。中国は依然として熱帯丸太の最大の輸入国であり、貿易量の63%を占めているが、その量は2018年の最盛期から50%以上減少している[1]とメイプルズデン氏は述べました。[1] また同氏は、中国の輸入は、長引く不動産セクターの低迷と二次加工木材製品市場の需要減少の影響を受けている、とも述べました。熱帯産の製材と合板の取引も2023年には減少しています。

フィジーからの代表団と交流するモハメド・ヌルディーン・イドリスITTO事務局次長(貿易・産業)。写真:P.Sarigumba/ITTO

メイプルズデン氏は、2024年と2025年に貿易が再び回復するという明るい兆しがあるにもかかわらず、地域的紛争や緊張状態がすでにサプライチェーンに影響を与えていること、消費国における保護主義的な貿易政策の台頭、中国の不動産セクターがさらに縮小するリスク、そして欧州連合(EU)による森林減少防止規制が貿易に及ぼす影響など、不透明な要因が見通しを曇らせていると述べました。

その後、全体での議論の場では、統計における熱帯木材の定義が重要であること、そしてそれが熱帯木材貿易の動向を理解する上でいかに重要かという点に焦点が当てられました。

「世界の木材状況に関する隔年評価報告書2023-2024」の最終版は2025年8月に発行される予定です。

2024-2025年の二カ年事業計画の進捗状況を発表するゲァハート・ブロイルマン事務局次長(総務)。写真:P.Sarigumba/ITTO

二カ年事業計画の進捗状況

ITTOは、二カ年事業計画(BWP)の下で実施される取組を含め、持続可能な方法で経営された森林から合法的に伐採された熱帯木材の国際貿易の拡大と多様化、および熱帯木材生産林の持続可能な経営の促進に努めています。

4日目の会合では、ゲァハート・ブロイルマン事務局次長(総務)は、2024年から2025年にかけての二カ年事業計画(BWP2024-2025)の実施に関する報告を行いました。同氏は、熱帯木材の国際取引に関する契約や慣行に関するガイドラインや勧告の策定、世界木材指標プラットフォームのさらなる発展、第1回および第2回グローバル・リーガル・サステイナブル・ティンバー・フォーラムの共催など、現在進行中および完了済みのさまざまな活動について概説しました。

BWP2024-2025の下での活動は、小規模農業従事者や地域コミュニティの植林による高品質な木材生産の促進、統計能力構築、その他の広範な活動にも及び、(1)現場志向の取組、(2)ルールや規範に関する取組、(3)協力事業、(4)コミュニケーションとアウトリーチ、(5)分析・統計の5つの分野に分けて報告されました。

横浜市からのボランティア。写真:P.Sarigumba/ITTO

ドナーがITTOの事業への新たな資金拠出を発表

本日の発表および会期中に行われた拠出によると、ドナーはITTOの活動を支援するため、約433万米ドルの2024年の資金拠出を請け負いました。

このうち、日本は179万米ドル、中国・マカオ特別行政区は154万米ドル、米国は55万5,000米ドル、韓国は11万9,000米ドル、オーストラリアは10万5,000米ドル、カナダは3万7,000米ドルを拠出し、民間団体の創価学会(6,200米ドル)と吉創庵(2,190米ドル)、ITTO事務局の元職員のマ・ファンオク氏(1万米ドル)も資金を提供しました。またバリ・パートナーシップ基金から5万1,700米ドル、未指定基金から5万6,200米ドルが割り当てられました。[1]

 拠出が確約された資金の一部は、コートジボワールのバゴー地方のパリとバウンダリ公有林におけるアフリカン・バーウッド(Pterocarpus erinaceus)の保全を支援するために設計されたプロジェクト [PD 808/16 Rev.5 (F) Phase II] の実施に使用されます。その他、さまざまなプロジェクトや活動が部分的な資金提供を受け、残りの資金が得られれば、開始されることとなりました。[2] 二カ年事業計画の多様な取組にも資金が提供され、また、ドナーは生産加盟国から提出された様々なコンセプトノートにも関心を示しました。

発言を行うインドネシア代表。写真:P.Sarigumba/ITTO

ITTOフェローシッププログラム

フェローシップ選考委員会は、2024年に19名に奨学金を授与するよう理事会に勧告しました。同勧告は、カルロス・エスピノーサ副議長が本日、ITTOフェローシップ・プログラムに関する報告書を理事会に提出した際に発表しました。

ITTOフェローシップ・プログラムは、政府、大学、研究機関、非政府組織、民間部門で働く若手および中堅の人々が、専門的な能力構築を行い、キャリアの見通しを向上させることができるよう、助成金を提供しています。 

ITTOフェローシップ選考委員会による結果を発表するカルロス・エスピノーサ氏。写真:P.Sarigumba/ITTO
エスピノーサ氏の報告によると、2024年、ITTO事務局は91件の申請を受け、フェローシップ選考委員会は最終的に19名をフェローシップ授与者として推薦しました。女性11名と男性8名のフェローシップ授与者は、アフリカからの5名、アジア太平洋地域からの7名、ラテンアメリカ・カリブ海地域からの7名で構成されており、パナマでのチーク・プランテーションの現地調査、タイでの自然資源管理の修士号取得、トーゴ南西部でのアグロフォレストリーに関する博士号取得など、さまざまな活動に従事する予定です。フェローシップの費用として推奨されている額は総額約13万1,000米ドルです。
議長主催自由ドラフティンググループ。写真 P.Sarigumba/ITTO

各委員会の活動

再造林と森林経営の委員会は本日再び招集され、小規模農業従事者と地域コミュニティーによるチーク材とその他の価値の高い木材の生産を促進するためにドイツ政府から資金提供を受けている進行中のプロジェクトを検討するなど、最終的な作業を行いました。2023年から3年間のこのプロジェクトは、質の高い植林木の確保、最適な育林方法、輪伐の長期化を促進するための資金調達へのアクセス、付加価値の向上、木材の合法性を確保するための政策を推進しています。

財務と管理に関する委員会。写真:P.Sarigumba/ITTO

[1] 数値は修正される可能性があります。最終データは2025年8月に発行される「世界の木材状況に関する隔年評価報告書2023-2024」で発表されます。
[2] 数値は有効数字3桁が四捨五入されており、正確でない可能性があります。ここに記載されている資金の一部は、以前に発表されたものである可能性があります。
[3] 任意拠出を受ける活動の全リストは、会合の決議1(12月末までにITTOウェブサイトに掲載される予定)に記載されます。

代議員はフランス語、スペイン語、英語の翻訳サービスを利用することができます。写真:P.Sarigumba/ITTO

理事会の詳細、および、発表資料については、https://www.itto.int/ja/ittc-60/presentations/をご参照ください。

IISDレポートサービスによる会期中の毎日の報道は、こちら(英語): https://enb.iisd.org/ittc60-international-tropical-timber-council.

ジャン・クリストフ・クラウドンITTO統計アシスタント。写真:P.Sarigumba/ITTO