Most Extensive Survey Ever of World's Remaining Tropical Forests Reveals Upward Trend in Sustainable Management Yet 95 Percent of Tropical Forests Remain at Risk

2006年5月26日, メキシコシティ

33カ国にまたがる本調査は、各国レベルでの経済的な動機付けの欠如、森林破壊対策や経営のためのリソース不足、などが要因となり、進歩とみられる現況はまだ不安定なものであると指摘する

写真: J. Blaser/ITTO

熱帯林経営の状態に関する過去最大の総括的分析によると、1988年以来、世界規模での「持続可能な森林経営」が著しく増加している。しかし、ITTOが今日発表した本報告は、森林の95%がいまだ保護されていない状態にあるという事実について警鐘を鳴らしてもいる。また、森林保有国が熱帯林を保護することから得られる経済的恩恵を、国際社会が保証しなければ、この進展も束の間のものになってしまうだろうと警告している。

このITTOの報告は、アジア、太平洋、南米、カリブ海、アフリカの33ヶ国の熱帯林の詳細な状態を徹底的に調査し、これら各国において、持続可能な経営が行われている森林が、1988年には100万ヘクタール(240万エーカー)以下だった状態から、2005年現在少なくとも3600万ヘクタール(8700万エーカー)に上昇していると伝えている。

「今日、全部で大体ドイツと同じくらいの広さの熱帯林が良好な状態にあることが分かっています。」とITTO事務局長のマヌエル・ソブラル氏。「しかし、はっきりしている事は、ほとんどの熱帯林の安全はいまだに大変危険な状態にあり、その事実は森林破壊をすることなく十分な経済的価値を生み出す森林管理が可能である、という正しい認識が世間で欠如しているということを表してもいます。」
世界全体の総天然熱帯林の三分の二にあたる8億1400万ヘクタールが調査されたうち、持続可能な経営が行われているのはほんの5%にすぎないことを、本報告は明らかにした。

日本に本部を置くITTOは、持続可能な森林経営・木材貿易を推進する、世界の中心的な国際機関である。本報告「2005年の熱帯雨林経営の状況」は、5月29日から6月2日までメキシコ、ユカタンのメリダで開かれる第40回国際熱帯木材理事会で発表される予定だ。

「持続可能な森林経営」は、熱帯林がその価値を損なうほどに破壊されることなく、なおかつ、社会が木材資源から恩恵を受けられるような運営を可能にするものだ。

「世界で残存している森林を保護するためには、各国が効果的な森林経営の計画を実行し、その進展状況を監視・報告しなければならないでしょう」本報告の編集者の一人である、ITTOのスティーブン・ジョンソンは語る。「これは、各国の成功とそれ以外についての過去最大規模の包括的な調査である。」

熱帯林は過去数十年危機に晒され続けてきた。現在、毎年1200万ヘクタールの熱帯林が、農地、牧草地、その他の目的に利用するために伐採されている。そして、さらに広い範囲の森林が、持続不可能な違法な伐採や、不適切な利用法によって破壊されていっている。

ITTOの分析は、4年間にわたる研究を反映し、熱帯林経営に関する重要かつ新しい情報を提供している。この報告が盛り込んでいる内容は多岐に渡っていて、加盟国に対するITTOのミッション、森林経営の専門家・政府関係者・産業関係者・NGOへのインタビューから、FAO (国連食糧農業機関)、グローバルフォレストウォッチや他の国際機関によるアセスメント、さらにITTO加盟国から提出されたデータまでを含む。

「1つの事実は、5つの理論に値するといいます。ITTOによるこの最新の研究は、さまざまな理論によって歪められていた、熱帯林という対象に関して、価値ある事実の数々を提供しているのです。」ジェフ・サイヤー教授、自然保護機関である、世界自然保護基金(WWF)のシニア・アソシエイトが語る。

ITTOが調査した8億1400万ヘクタールの森林は、ITTOが定義する「永久林」の基準を満たす天然熱帯林の総領域である。ITTOによると、永久林とみなされるのは、土地所有者(主に政府である)が熱帯林を持続可能な生産林として運営しているか、保護区域として扱っている場合である。持続可能な生産活動の下では、森林破壊につながらない範囲内でのみ、木材伐採やその他の収益活動(果樹類や医療用植物の採取)が認められている。これら保護区として維持されている熱帯林は、所有者が森林を原生状態で維持するために努力を続けていく地域となるだろう。


計画と実行の間にある相違

他の森林に関する報告と違い、ITTOの報告は、持続可能な経営手法をより大規模な木材産出熱帯林へと拡大していくための意欲的な計画の有効性を査定し、また保護森林として経営されているとみなされている森林が、実際にどの程度保護されているかについても意見を述べている。

例えば、ITTOの分析は、熱帯諸国が生産林に指定された3億5300万ヘクタールのうち27%を運営する計画を展開していることを明らかにしている。しかしながら、実際は、2500万ヘクタール(指定された森林の7%)のみ、持続可能な経営が行われているということも伝えている。

ジョンソンが語る「森林経営の責任者にとって、計画を立てる方が、それを実行するよりはるかに簡単なのです、たとえ、彼らが実行しようと意図していたとしても。企業関係者らは、問題のある伐採手法で森林を破壊する行為を続けていても、表向きは持続可能な森林経営の必要事項を遵守しているように見せることができるのです。徹底した監督活動が必要です。」

この計画と実行レベルの相違は、すべての地域において顕著である。アジア・太平洋地域では、たった1430万ヘクタールの生産林が持続可能な経営で管理されていると推定されているが、文書上では5500万ヘクタールが経営計画に基づいていることになっている。アフリカでは、それに対応する数字は1000万といわれているが、実際は430万ヘクタールのみが持続可能な経営下にあり、南米とカリブ地域においては、その相違は3100万という文書上の数値に対して、実際は650万である。

保護地域として指定されている森林に関しては、比較的低い割合の地域が経営計画に基づいて運営されている。保護されていることになっている森林4億6100万ヘクタールのうち、ITTO加盟国は計画を展開しているのは1800万ヘクタール(3.9%)で、実際に計画を実行しているのは1100万ヘクタール(2.4%)だ。積極的な保護策の下にある森林のほとんどは、アジア太平洋地域(510万ヘクタール)と南米カリブ地域(430万ヘクタール)に位置している。アフリカでは、170万ヘクタールのみが実行可能な保護政策の下にあることをITTOは明らかにした。


熱帯林は過去10年と比較すると現在はより安全な状況に

しかしながら、これらの問題にもかかわらず、世界規模での全体としての流れは頼もしいものであり、より限られた条件で行われた1988年ITTOによる18加盟国に関する調査以来、森林の法的な安全性は大きく向上している、とITTOは述べる。

「1988年、自然林がどの程度、持続可能な木材生産のための実務レベルの基準にのっとって経営されているか調査したとき、答えは『ほぼゼロ』だったのです」と両調査で指導的役割を果たしたダンカン・プーア教授が語る。「アジア、南米、カリブ地域に前向きな傾向が認められはしたが、たった7万5千ヘクタールしか持続可能な経営が行われていなかったし、しかもそれは全部トリニダード・トバゴにおいてのみだったのです。アフリカにおいては皆無でした。」

しかし、状況は変化している。「木材生産のための持続可能な森林経営は、広域な熱帯林を保有する数カ国において、一層一般的なものとなってきています」とプーアは述べる。特に注目すべき進歩を見せた国の中には、マレーシア(現在少なくとも480万ヘクタールが持続可能な森林経営されている)、ボリビア(220万ヘクタール)、ペルー(56万ヘクタール)、ブラジル(140万ヘクタール)、コンゴ共和国(130万ヘクタール)、ガボン(150万ヘクタール)、そしてガーナ(27万ヘクタール)が含まれる。

1988年には存在しなかった森林管理の森林認証制度の登場もまた、良い流れを作っている。ITTOによると、現在持続可能な生産行為がなされている1050万ヘクタールの熱帯林が、FSCなどの独立林業認証機関によって認証されている。

しかし、熱帯林の深刻な減少に悩んでいたり、より良い管理法を遂行するための発展を遂げることができないままの国々がまだある。コートジボワール、フィリピン、ナイジェリアのような国々(これらの国では広大な領域がかつて森林だった)は、現在、比較的狭い天然林しか所有していない・・・これは重大な環境問題である。有効な行政指導の欠如が明らかに問題になっている国々もある。持続可能な森林経営に向けた進捗が、非常に限られたものであるか、あるいは全く見られな状態にあるのは以下の国々である:リベリア、カンボジア、コンゴ民主共和国、そして近年武力紛争などを経験した国。政治的、経済的不安定は、森林法の不十分な施行と伴って、熱帯の多くの地域において違法伐採と森林関連の犯罪の拡大に繋がっている。


求む!:森林は死んでいるより生きている方が価値があるのだ

ITTOは、より広い範囲にまたがって、永久林の指定と持続可能な森林経営を明確にしそして実行することを主張している。本報告はその両方の目標に対して、数々のを喚起を呼び起こすものである。

ITTOが明らかにしたことは、法施行と経営のためのリソース(訓練されたスタッフ、車、器具などは全て供給不足)が悲惨なほど慢性的に不足している上に、森林管理の監督・報告のためのシステムが常に限られているか不足しているという点である。違法伐採や違法木材取引は問題に重圧をかけ、ときには紛争、薬物の密輸、その他の犯罪などによってさらに悪化させ、森林経営そのものを潜在的に危険な行為にしてしまっている。

もう一つの持続可能な森林経営への大きな障害は、それが必ずしも常に経済的に報われる行為ではないという点である。

「だから、熱帯雨林のほとんどの地域が、大豆畑や油やし農場に変わっていくのです」 ソブラルが語る。「違法伐採、安いプランテーション木材や貿易障壁などが、責任ある森林経営をしようとする生産者を支えられる合法的な市場形成への努力を損なってしまっています。」

政府や産業関係者は、経済的な動機を生むシステム構築を最優先事項とすべきだ、と彼は話す。

「それを実現するには、天然熱帯林の木材価格が商業的に強い市場を作る必要があり、そうすれば、水の生産、生物多様性保護や炭素蓄積などの世界規模で重要な森林の働きに十分対価が支払われるでしょう。」

「正しく経営された木材生産用の森林の生物多様性のレベルは、全く手の入っていない森林と同じレベルである、ということが今では広く受け入れられている」サイヤーが述べる。「この発表に記されている、持続可能な経営がなされた生産林の急激な増加は、それゆえに、人々にとっても生物多様性にとっても、良いニュースなわけです。」

持続可能な森林経営を、世界の熱帯林の大部分に適用していくためには、その費用をまかなうための国際的なアプローチが必要である、とITTOは結論づける。この報告が伝えるように多くの困難はあるが、一致団結したアクションのみが熱帯林をさらなる破壊から救えるとITTOは信じている。ITTOスタッフたちは、彼らが報告した前向きな動きが、今後の具体的な活動の中心的役割を果たしていくだろうと述べている。

ソブラルが語るには、「この報告のおかげで、我々は今まで知らずにきたことを知ることができました。それは、持続可能な森林経営が進んできていること、そして、それを監督し評価する基準もあるということです。この十分な進展は我々に希望を与えてきましたが、やっと折り返し地点に来たのであり、まだまだ満足してはならない状態です。熱帯林と熱帯林を取り巻く社会はまだ危険な状態にあるということです」

この報告の原文は、以下のサイトをご覧ください。
http://www.itto.or.jp/sfm_detail/id=1801.


国際熱帯木材機関(ITTO)は、国連貿易開発会議の後援のもとに設立された国際機関であり、熱帯林資源の保全や持続的経営、利用、取引を促進している。ITTOには世界59カ国が加盟しており、これらの加盟国を合わせると、世界の熱帯森林面積の約80%、世界の熱帯木材売買の90%を占めている。

ITTOに関する詳細については、次のサイトをご覧ください。
http://www.itto.or.jp