森のチカラは
地球の潤いへ。

International Tropical Timber Organization

森林が消えゆく先にあるもの

日本は世界で22番目の森林率を誇り、森林が国土の三分の2を占める緑豊かな国で、森林面積は大きく増減することなく推移しています。 一方、海外に目を転じると、とりわけ気候変動に大きな影響を与える熱帯林の減少は凄まじく、地球温暖化を加速させる大きな要因の一つにもなっています。

熱帯林減少の大きな要因とは 気候変動を食い止めるための
国際的な取組

日本とも深くつながっている熱帯林の動植物

地球上の生命の50%~90%を占めるといわれる熱帯林の生き物は、遠く離れた日本に暮らす私たちの健康や食と無縁ではありません。
熱帯林は将来の新薬開発につながる生物種(DNA資源)の他、香辛料やコーヒーなどの産地ですが、いずれも多様性に富む森林とは切っても切り離せないものばかりです。一方で、未知のウイルスや細菌が潜む場所でもあり、適切な距離を保つことも求められます。

人類と地球生命との
持続的な関係に向けて

ITTOは、例えばこのような活動で
世界に貢献しています。
木材資源を活かして
女性の自立を支える。

西アフリカ トーゴ共和国における
女性コミュニティー自立支援

国境をまたぐ森林に共通した
保護ルールの策定を支援。

マレーシアとインドネシアが接する
生物多様性保護地域の取り組み

アマゾンの森に
価値を創出する。

ブラジル アマゾンのテラファーム
フォレストで活動する企業の支援

ベトナムにおける
木材産業の育成

林産業育成を通じた森林の持続性、
雇用従事者の収入安定化の追求

ITTOだから近づけること
のできるSDGs

ITTO 国際熱帯木材機関
(International Tropical
Timber Organization)とは?

熱帯林と人間社会との持続可能な関係構築を目的 として1986年に設立された政府間国際機関で、日 本に本部を置く唯一の国際連合条約機関です。

森林の中でも減少が著しく、気候変動や生物多様性への 影響が極めて大きい熱帯林で営まれる林業の適正化、持 続可能な木材生産と利用の推進をミッションの基軸と し、熱帯林が気候変動問題への取り組みで大きな鍵を 握っていること、食物品種保全や医薬品開発と密接につ ながっているDNA資源の宝庫であることなどから、地球 温暖化対策、また生物多様性保全の分野へもミッション の幅を広げ、日本政府はじめ加盟各国政府と企業の協力 のもと、熱帯林を取り巻くさまざまな問題の解決に取り 組んでいます。

国際熱帯木材機関
International Tropical Timber Organization

〒220-0012 横浜市西区みなとみらい1-1-1
パシフィコ横浜
横浜国際協力センター5F
Tel. 045-223-1110 Fax. 045-223-1111
https://www.itto.int/

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熱帯林減少の大きな要因

1. 森林の違法伐採
2. 森林の農地への転換
3. 森林火災
4.降雨量の増加による土壌流出

日本を含め世界各地では、それまで温暖だった土 地が例のない寒波に見舞われ農作物の収穫が困難 になる、豪雨によって水没する都市が増える、長 雨による土砂災害で食糧生産が不可能になるな ど、深刻な気象災害に見舞われる例は年々増えて います。
それは、食糧自給率が低い日本にとって死活問題 でもあります。
熱帯林の減少や破壊によって引き起こされる事象 は、遠く離れた世界各地の状況にも深く関わって いることを忘れてはなりません。

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気候変動枠組条約締約国会議が私たちに示すもの

気候変動を回避するため、これまで地球温暖化ガス排出削減が主要議題になってきましたが、2022年の第27回の会議で森林が果たす役割について踏み込んだ議論がなされたことは大きな成果でした。
森林、とりわけ熱帯林のポテンシャルに目を向けることは、人の手が及ばない自然の回復力を気候変動抑止へ取り込むことにつながり、現状を打破する大きな手がかりになると期待されます。

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生物多様性条約締約国会議が示す人類と他の生物との持続的な関係

2019年暮れから、私たちは新型コロナ感染症の パンデミックを経験しました。そこで改めて注目 されたのが人獣共通感染症です。動物由来の感染 症はこれまでにも世界各地で繰り返されてきまし た。地球温暖化による生態系の変化に加え、開 発による野生生物と人間との遭遇機会の増加が原 因とされます。
近年、日本でも問題となったデング熱は、ウイル スを媒介する蚊の生息域が拡大していることが主 な要因だといわれています。

そういったリスクを抑えるには、気候変動を抑える と同時に、熱帯林に留まるべき動植物を保護し 生物多様性の損失を食い止めることが鍵となりま す。植林しながら利用する森と自然の状態で守る 森を分け、守るべきは守るの取り組みをいっそう 強化しなくてはなりません。
そこで、第15回の生物多様性条約締約国会議では、野生生物の取引や利用について、森林から持ち出す場合、持続可能性を維持しながら人間の健康に危険がないことを条件とするルールが定められました。

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西アフリカ トーゴ共和国にお
ける女性コミュニティー自立支援

ITTOでは、貧困地域の女性たちがその土地の樹 木から苗木を育て森林再生と農作物の生産を行う アグロフォレストリー(併農林業)を通じ、持続 可能な林業経営と劣化した森林の再生、また、食 糧生産を同時に行なえるよう支援しています。
この活動は自然環境の改善、自立した生活の基盤 を得られることでの女性の生活向上、食料の安定 的確保にもつながっています。また、ジェンダー 平等を目指すSDGs国連持続可能な開発目標の考 え方にも合致するものです。

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マレーシアとインドネシアが 接する生物多様性保護地域の 取り組み

日本は陸地で国境を接する国がないためイメージ しにくいかもしれませんが、多くの国は同じ森林 に接していながら異なるルールで森を管理し、環 境への取り組みが不完全になるケースがありま す。ボルネオ島もそのひとつで、マレーシアとイ ンドネシアが接する生物多様性保護地域 Benyuang Karimun Lanjak Entimauでは、長 年別々の取り組みがなされきました。そこで ITTOが両国の間を取り持ち、政策がより実りあ るものになるよう共通のルールづくりを支援して います。
絶滅危惧種の保護、固有の植物の可能性に関する 研究を推進し、サンクチュアリおよび越境保全地 域に関する管理ガイドラインを提供するなどして います。
政府間国際機関だから実現できる取り組みでもあ ります。

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ブラジル アマゾンのテラファームフォレストで活動する企業の支援

高まる一方の木材需要を満たしながら熱帯林の保 全も行なう。それは日本の林業もそうであるよう に、熱帯林においても決して難しいことではあり ません。成長が止まった古木を木材として利用 し、CO2吸収量が著しい苗を植え育てることによ り森林の新陳代謝も進める。しかし、人間の手が 入っていない自然林には手をつけず生物多様性も 守る。
健全な林業が定着してこそ可能になる人間と熱帯 林との持続可能な関係です。
それには、違法伐採をなくし、木材を生み出す生 産林に価値を創出することが必要で、ITTOでは ブラジル アマゾンのテラファーム フォレストで 活動する企業を支援するための造林および管理、 開発を支援してきました。
合法的な林業のもとでは、地域コミュニティとの 関わりも重要で、全てのステークホルダーに大き な恩恵をもたらします。

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熱帯木材資源の持続可能な利用に向けて

熱帯地域の多くを覆う熱帯林は、尽きることのな い木材需要に よって歴史的に乱伐の危機にさら されてきました。結果、多くの森が 破壊された だけでなく土壌破壊、そして土地の保水能力の低 下 を招き、森林資源で生計をたてる全ての人た ちの経済活動、周辺 地域を含めた水資源の確保 を脅かすことにもなっています。

生物多様性の劣化抑止に向けて

生命活動が活発なことから、熱帯林は生物多様性 の宝庫でもあり ます。その恩恵は、医薬や環境 衛生の分野とも今や不可分です。 熱帯林の持続 可能な利用は、そのような生物資源の宝庫を劣化 から守ることにもつながっています。

ITTOは、資金提供から人材育成まで、さまざま な角度から 持続可能な森林管理を支えています。

ITTOは、熱帯森林資源の持続可能な管理・利 用・貿易について 話し合う政策対話フォーラム を開催し、各国の理解促進のための 政策ガイド ラインも作成するなど、法的に管理された持続可 能な 森林利用を推進しています。これまでに4億 米ドル超、1,000以上 のプロジェクトを行ない、 加盟国における熱帯木材資源の持続 可能な利用 や劣化林の回復に向けた政策を推進するため支援 してきました。また、フェローシッププログラム を通じ、これまでに 1,400人の専門家を育成して きました。 これらの他、国連、市民社会、民間 部門などとも協働。生物多様性 条約(CBD)と ワシントン条約(CITES)とも協同作業を実施す る などし、生物多様性の保全にも取り組んでい ます。

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環境との関係が懸念される素材を環境に優しい木材へ転換する ことは、経済、社会、環境に多く のメリットをもたらします。 作る責任と使う責 任は持続可能性と不可分であり、ITTOでは、 木 材資源の責任ある生産と消費にも目を向けていま す。
1.民間企業の合法的で持続可能な供給・生産活動 を支援
2.ワシントン条約への理解を促す中小企業の能力 開発を支援
3.合法性を担保するための国レベルでの木材追跡 システムの開発
4.木材の合法的利用を保証するスキームの実施 を監視

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持続的に収益を得られるビジネスモデルの普及

ITTOは、関係国政府に直接コミットすることが できる政府間国際 機関であり、税制を含めた林 業の制度設計にまで踏み込んだ 提案ができるこ とから、熱帯木材産業を持続可能な収益事業と して定着させることが容易となります。それは、 資源枯渇による 紛争リスクを減少させることに もつながっています。

世界の安定に不可欠な熱帯地域の貧困の解消

何億人もの先住民や地域社会の経済環境改善は重 要課題であり、 ITTOでは熱帯地域の家庭生活の質の 改善、とりわけ女性や若者 たちの経済活動 機会の向上、所得創出を支援してきました。ま た、 劣化した土地を回復させる経済的に実行可 能な方法の導入、 経済循環を維持しつつ木質 ベースのエネルギーと木材生産を推進。 森林所 有者や地域社会が持続可能な方法で生産した木材 製品、 非木材製品の輸出で収入を得られるよう 支援しています。 これらは「、緑のサプライ チェーン」の確立、地域社会や中小企業の 熱帯 木材生産の付加価値向上にも役立っています。

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陸域で僅か7%※1に過ぎないにもかかわらずCo2 吸収割合は 35%※2にもなり、吸収したCo2をど の地域より多く固定化する 熱帯林。その劣化は 従来考えられてきた以上に気候変動に関係 して いることがわかってきています。しかし、法的に 管理される ことのない乱伐は科学的知見が生か されることがなく土壌破壊 という深刻な問題も 引き起こし、再生不能な範囲を拡大。地球 温暖 化ガス吸収源の減少を招くことにもなります。こ のような 事態に至らせないため、ITTOは、循環 型経済発展の礎となる5つ のアプローチを推進し ています。持続可能な森林と「緑のサプライチェーン」は、気候変動を抑える要でもあります。
1.地球環境の面から保全価値の高い森林の保護
2.劣化した多目的林の生産的な用途への復元
3.気候変動に適応する森林を増加、森林火災から の回復力向上
4.炭素隔離を促す森林の管理、森林破壊と劣化の 食い止め
5.「緑のサプライチェーン」を通じた貿易の推進

※1 国立研究開発法人国立環境研究所 国環研ニュース10巻「熱帯生態系の構造解析」より
※2 (同) 地球環境研究センターニュース通巻272号「国立環境研究所における熱帯林研究の新しい取り組み」より

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熱帯林は食だけでなく食品の保存に用いられる スパイス類の産地でもあり、また気候変動抑止 効果により各地の干ばつ回避も促します。

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地球温暖化ガスをより多く吸収し固定化する熱帯 林の適切な管理は、気候変動がもたらす各国の 社会福祉への悪影響の極小化にもつながります。

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合法的で安定した産業は、質の高い教育の源で ある税収を安定させ、より生産的な社会システ ムの構築に大きく寄与します。

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緑豊かな土地は保水能力に優れ、しかも、生活 用水の供給とも不可分です。また、地球全体の 大気循環にも大きな影響を及ぼします。

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熱帯木材生産国の林業の安定。それ即ち従事者 の生活環境改善、経済成長の源となり、世界経 済の安定にも深く結びつきます。

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林産業育成を通じた森林の持続性、雇用、従事者の収入安定化の追求

家屋や家具といった耐久消費財に木材が使用されること、それは長期にわたりCO2を固定化することにもつながります。一方で新たな苗から木を育てることで木々の旺盛な成長力によりCO2の吸収力を高める。それには、林業がしっかり機能することが必要で、熱帯林の持続性を保つ上でも大きな鍵となります。
ITTOは、この持続的な林業経営が熱帯林を擁する国で定着するよう、各国の実情に照らしさまざまな提案を行なっています。
その一例として、ベトナムでの林産業の振興が挙げられます。
ベトナムの木材産業は輸出に大きく依存し、国外市場の不確実性により脆弱さが指摘されてきました。そこで、林産業の安定化と持続性を高める取り組みとして、地産地消も促進しています。安定した林産業の育成は持続的で計画的な森林利用へとつながり、従事者の雇用と収入を安定したものとしつつ森林の荒廃も防ぎます。加えて自然林への負荷も軽減。森林の乱伐や無秩序な開発を防ぐことにもつながっています。