熱帯林は気候変動との闘いに不可欠―ITTO事務局長、気候変動枠組条約締約国会議で発信

2022年11月18日

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議のハイレベル・セグメントで声明を発表するシャーム・サックルITTO事務局長。写真:S. Kawaguchi/ITTO

2022年11月18日、エジプト、シャルム・エル・シェイク:シャーム・サックルITTO事務局長は今週、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)のハイレベルセグメントと他の複数のイベントに出席し、熱帯林は気候変動への適応と緩和の中核となる貴重な炭素貯蔵庫であり、その保全は気候変動との闘いに不可欠であると語りました。

ハイレベル・セグメントでは、各国首脳、副大統領、副首相、大臣、代表団長、オブザーバー機関の代表により、それぞれ声明が発表されました。ITTOはオブザーバー機関の一つです。

サックル事務局長は声明の中で、熱帯林は気候変動の原因であると同時に解決策でもあり、矛盾した存在であると述べました。

「熱帯林の劣化と消失による炭素排出が、気候変動の主な原因であると長い間認識されてきました。しかし、逆説的ですが、これらの森林は、大規模な炭素隔離を通じて、この問題を軽減し、その過程で非常に有用な木材やその他の資産を生み出す可能性が最も高いのです。」

サックル事務局長は、自然に基づく解決策は、環境に優しい社会を構築するための手段として注目を集めていると述べました。

「持続可能な森林経営は、合法的かつ持続的に生産される木材、すなわち最も環境に優しい建築材料やその他多くの製品・サービスを生み出すので、自然に基づく解決策の一つと言えます。」

「人と自然に恩恵をもたらす熱帯林業は、COVID-19の世界的流行からの回復、気候変動・生物多様性の損失・汚染といった地球規模の環境危機との闘いを可能にしつつ、持続可能な開発を行うために重要です。」と、サックル事務局長は語りました。

サックル事務局長は、今週開催されたCOP27の他のイベントにも登壇しました。

インドネシアパビリオンで開催されたサイドイベント「気候変動問題に対応するための土地・森林火災管理に関する協調的パートナーシップ(Collaborative Partnerships on Land and Forest Fire Management in Dealing with Climate Change Issue)」で、サックル事務局長は、火災は熱帯林における温室効果ガス排出の最も大きな原因の一つであり、熱帯での総合火災管理の適用が急務であると述べました。また、日本政府の資金提供による、インドネシアとペルーにおける森林火災管理の改善を目的とする2つのITTOプロジェクトについて説明しました。

火曜日にICCパビリオンで開催された「グローバルで気候にやさしい森林政策に関する二人のリーダーによる対話(Two Leaders’ Dialogue on Global Climate-friendly Forest Policy)」には、サックル事務局長とスコットランド政府のマイリ・マカラン環境大臣が登壇しました。対話において、サックル事務局長は、持続可能な熱帯林経営が、生物多様性、気候変動、生活にいかに付加価値を与えることができるかについて語りました。また、持続可能な消費に焦点を当て、気候変動の解決策として熱帯林にもっと注目するよう提唱しました。

サックル事務局長は、パナマパビリオンで開催されたサイドイベント「森林面積の増加が気候変動への適応にいかに役立つか(How Increasing Forest Cover Helps for Climate-change Adaptation)」では、気候変動の緩和における熱帯林の有効性を強調しました。熱帯木材を非再生可能な材料の代替として使用することで、温室効果ガスの排出を削減し、何世紀にもわたって炭素を蓄積することができると述べました。また、最近の循環経済に関する議論に触れ、熱帯地方ではまだ浸透していない重要な概念であると述べました。

サックル事務局長はまた、ITTO、韓国山林庁、創価学会が共同で開催したサイドイベント 「協調的アプローチとしてのREDD+の可能性とキャパシティー・ビルディングの必要性(The potential of REDD+ as a Cooperative Approach and the Need for Capacity Building)」にも参加しました。このサイドイベントでは、パリ協定第6条の下での先駆的なメカニズムとして、また他の国々のモデルとして、二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)について検討しました。また、創価学会が資金提供したトーゴのITTOプロジェクトが、劣化した土地の修復のために100人の女性のグループをエンパワーし、成功を収めたことも紹介されました。

森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests: CPF)が開催したサイドイベント「森林破壊の潮流を変える(Turning the Tide on Deforestation)」の一部として行われたハイレベル対話で、サックル事務局長は、COP27では森林が十分に強調されていないが、持続可能に経営された熱帯林は気候変動に対する解決策の一部であると述べました。

また「熱帯林は、年間4ギガトンもの炭素を吸収する可能性があり、自然を基盤とした理想的な解決策と言えます。さらに、熱帯林は農村地域の貧しい人々の生計の源であり、きれいな空気や水といった多くの生態系サービスを提供しているのです。」と語りました。

持続可能な森林経営には、すべてのステークホルダーの長期的なコミットメントと、その可能性を引き出すための大幅な資金増加が必要であると、サックル事務局長は聴衆に訴えました。

サイドイベントの録画はこちらでご覧いただけます(英語)。

関連するSDGs

熱帯木材と木材製品の持続可能な消費がより注目されることは、気候変動に対する実行可能な解決策です。

熱帯林の劣化と消失による炭素排出が、気候変動の主な原因であると長い間認識されてきました。しかし、逆説的ですが、これらの森林は、大規模な炭素隔離を通じて、この問題を軽減し、その過程で非常に有用な木材やその他の資産を生み出す可能性が最も高いのです。

人と自然に恩恵をもたらす熱帯林業は、COVID-19の世界的流行からの回復、気候変動・生物多様性の損失・汚染といった地球規模の環境危機との闘いを可能にしつつ、持続可能な開発を行うために重要です。