ITTOとIGES、熱帯林に関する協力関係を強化

2022年10月19日

両組織間の覚書締結後のシャーム・サックルITTO事務局長と武内和彦IGES理事長(中央)、およびITTOとIGESの職員ら。写真:IGES

2022年10月19日、横浜:ITTOと公益財団法人地球環境戦略研究機関(Institute for Global Environmental Strategies: IGES)は、シャーム・サックルITTO事務局長と武内和彦IGES理事長が本日署名した新しい覚書に基づき、熱帯諸国とステークホルダーの森林の保全と持続可能な 経営を支援するために、さらに緊密に協力していきます。

熱帯林は、地球全体のウェルビーイングのために、また気候変動や生物多様性の損失 などの地球規模の課題を解決するために不可欠です。一方、世界の熱帯林の大部分は劣化・消失しつつあるため、これを回復し、森林に関わる人々の生活を向上させるためのアクションが必要とされています。

本覚書のもと、日本を拠点とする2つの組織は、ITTOに加盟する熱帯木材生産国における熱帯林資源の保全と持続可能な利用を支援するために共同で取り組める事業を見定めた上で、開発および実施する予定です。また、持続可能な熱帯林業を奨励するため、途上国とともに能力開発、情報交換および経験共有を共同で推進します。

サックル事務局長は、この覚書はITTOとIGESの補完的な関係の強みを生かす機会であると述べました。

「私たち2つの組織は、熱帯諸国と、持続可能な開発の一環として森林を利用し保全しようとする彼らの努力を強く支持しています。」と、サックル事務局長は語りました。「双方が関心を持つ分野で力を合わせ、それによって私たちが与えることができる影響を拡大することは理にかなっています。」

ITTOは、国際熱帯木材協定に基づいて1986年に設立され、本部を横浜市に置き、持続可能な森林経営のもとで合法的に伐採された熱帯木材の国際貿易の拡大、多様化を推進し、熱帯木材生産林の持続可能な経営を促進することを使命としています。ITTOは本覚書を通じて、戦略的行動計画(2022-2026)の内容や新しいプログラム手法の試験運用を実施する機会を探っていきます。

IGESは、新たな文明のパラダイムを創造し、環境対策のための革新的な政策立案と戦略的な研究を行うことを目的として、1998年に日本政府のイニシアティブのもとで設立され、神奈川県を拠点に活動しています。

 武内理事長は、「森林は気候変動や生物多様性の損失といった世界的問題の解決に加え、私たちのウェルビーイングにも不可欠です。」と強調しました。「しかし、熱帯林を中心に世界の原生林は減少を続けており、世界的な人口増加および経済発展、それらに伴う食料やエネルギー需要の増加によって、引き続き広大な森林が失われていくことが懸念されています。双方の知見や意欲が、総合的に環境・社会的影響を見据えた取り組みとなり、熱帯林の保全および持続可能な 利用を促進するためのシナジー (相乗効果)を生み出すことを大いに期待しています。」

サックル事務局長は、「本日は、スキル、経験、専門知識を補完し合える私たち2組織 にとって、大変喜ばしい日です。」と述べました。「私たちはどちらも日本政府からの強力な支援による恩恵を受けています。また両組織の本部が近いことも強みの1つであり、特に緊密な連携を可能にするでしょう。」

両組織の協力の可能性が見込まれる分野は以下の通りです。

- 気候変動に関するパリ協定(Paris Agreement)、ポスト2020生物多様性枠組(Post-2020 Global Biodiversity Framework)、世界森林目標(Global Forest Goals)、土地の劣化の中立性(Land Degradation Neutrality)、国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration)の達成に向けた共同貢献

- 持続可能な林業、気候変動の緩和と適応、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進するための政策提言の強化

- 日本の二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism: JCM)に基づくREDDプラス(REDD+)の推進と、パリ協定に基づく緩和成果の国際移転の促進

- 国連生態系回復の10年を支援するための劣化した熱帯林の景観の回復

- 生態系サービスへの支払いを通じた熱帯林の価値向上のための市場や市場ベースのアプローチの推進

- ITTOに加盟する生産国における合法的かつ持続可能なサプライチェーンのための能力開発

- 持続可能な熱帯林業に関する情報発信と経験の共有

- 知識の管理および共有に関する協力

IGESとITTOは森林に関するワーキンググループを設立し、覚書のもとで実施される 活動をレビューし、更新するとともに、新しい共同イニシアティブを提案する予定です。