気候変動緩和には熱帯林における火災管理の改善が不可欠

2021年11月25日

インドネシア・南カリマンタン州タピン(Tapin)(2019年)にて、森林・土地火災の様子。写真撮影:Bambang Hero Saharjo

横浜、20211125日:啓発、早期警戒システム、地域の関係者の関与、これはすべて熱帯林における火災管理と気候変動との闘いに欠かせない要素である – 国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)でITTOが共同開催したイベントでは参加者からこのような意見が出されました。

本イベント「熱帯地域の森林火災予防:インドネシア及びペルーからの教訓(Prevention of forest fires in the tropics: lessons from Indonesia and Peru)」は、インドネシアのボゴール農科大学(IPB)及び森林総合研究所の協力の下、ITTOが2021年11月11日に英国・グラスゴーのインドネシア・パビリオンにて開催しました。熱帯地域における森林火災の予防と対策に向けた一層のネットワーク構築と研究やキャパシティ・ビルディングの促進を目的とし、ITTOがインドネシア及びペルーで実施中のプロジェクト(両プロジェクト共に2021年開始)でこれまでに行った活動成果をまとめました。

登壇者は、火災の予防・消火・事後管理にかかる政策や戦略を策定するにあたり地域住民やその他の利害関係者の関与が重要である点に触れました。また、これは気候変動緩和の取組にも資するとしました。

「森林経営にはあらゆる利害関係者の参加と責任遂行が必要である点に異論を唱える人はいないと思います。ITTOが資金協力をしている本火災管理プロジェクトは、この「参加」の部分を強化しています。」インドネシア環境林業省(Ministry of Environment and Forestry:MOEF)のシャイフル・アンワール(Syaiful Anwar)氏はラクシミ・デワンティ(Laksmi Dhewanthi)気候変動総局長に代わり登壇し、このように述べました。

アンワール氏は、地域住民との密接な協力による火災予防、早期警戒、早期対応を重視する新たな考え方(パラダイム)に基づくインドネシアの主な森林火災政策を発表しました。この新しい考え方を採用した2021年、火災多発地域の数は前年比で52パーセント、面積は22パーセント減少しました。同発表では、特に、火災予防活動においてしばしば「ファーストリスポンダー(緊急対応にあたる人々)」である地元の有志による消防隊の役割が次第に重要になっていることが強調されました。

ボゴール農科大学林業学部のバンバン・ヘロ・サハリオ(Bambang Hero Saharjo)教授は、熱帯林は巨大な炭素吸収源として機能し、地球規模の環境変化を軽減するのに不可欠な役割を果たします、と指摘しました。他方、熱帯地域での森林火災の頻度は増えており、これに取組むには明確な目標を持って様々なセクターが協力することが必要です、と述べました。

森林総合研究所REDDプラス・海外森林防災研究開発センターの平田泰雅センター長は、森林火災はいかなる国にとっても深刻な脅威であり、地方から地球まで、あらゆる規模で対応することが急務です、と話しました。さらに、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change:IPCC)はREDDプラスを農業、林業、その他の土地を使用するセクターからの排出量削減に相当な効果が期待できる活動であると特定したことに触れ、「森林火災への対応は緩和と適応の手段となります。」と述べました。

本イベントでは、ペルーに関する発表も2件行われました。1件目は、ペルー国家森林野生動物局(National Forest and Wildlife Service (Servicio Nacional Forestal y de Fauna Silvestre):SERFOR)の情報・森林・野生動物管理総局(General Directorate of Information, Forest and Wildlife Management)局長であるエルビラ・ゴメス・リベロ氏から、ペルーでITTOが実施中の火災予防・管理プロジェクトに関する映像による発表でした。このプロジェクトは、主に農業目的の過度の野焼きによる山火事の被害が多いカハルマカ(Cajamarca)州、ワヌコ(Huanuco)州、フニン(Junin)州、パスコ(Pasco)県及びウカヤリ(Ucayali)州で実施されています。そのような山火事は生物多様性、地域住民の暮らしや人の健康を脅かし、気候変動を助長します。同プロジェクトは、農業・造林方法の改善と火災予防、管理及び早期警戒手順の改良、消化能力の強化、効率の良い早期警戒・モニタリングシステムの設置、森林火災対応・予防における関係者の調整の改善、火災管理に関する啓発の強化により、山火事の件数を減らし、これが引き起こす森林減少と温室効果ガスの排出量を抑えることを目的に掲げています。

ペルーに関する2件目の発表では、国際林業学生連合(International Forestry Students’ Association:IFSA)を代表してペルー出身のアンヘラ・ガブリエラ・ベネロス・セルパ氏が、若者は森林火災という危機的状況の解決に向け組することができると訴えました。「環境課題、森林や自然資源の管理、山火事の影響について初等・中等教育の中で教えること、そして山火事を防ぐための教育活動に従来とは異なる協力者にも関わってもらうことが、若者を関与させる方法です。」このようにセルパ氏は話しました。

シャーム・サックル氏(ITTO事務局次長)は、本イベントを総括して次のように述べました。「森林火災が引き起こす途上国の荒廃は、遠くの先進国のにまでも広がり、そこでも生物多様性や人類に負荷をかけつつあります。情報・知識を共有することが、緩和と適応の手段を通じた気候異常の克服に極めて重要です。」

本イベントの録画映像(英語)を視聴する

本イベントの発表資料を下記からダウンロードする

関連するSDGs

国と地方が共に統合型火災管理能力を向上させることで、森林や土地での火災件数は減少するでしょう。さらに、温室効果ガス排出量の削減効果も期待できます。

森林火災が減少することで、環境、生物多様性、人の健康にプラスの効果がもたらされます。