ITTOと生物多様性条約が連携を2025年まで継続

2021年2月5日

インドネシア・チボダス生物圏保存地域(Cibodas Biosphere Reserve)のジャワクマタカ。同地域は熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブの対象地域である。写真撮影:Hardi, Project PD 777/15 Rev.3 (F)

2021年2月5日:ITTOと生物多様性条約(Convention on Biological Diversity:CBD)は、熱帯地域のCBD締約国及びITTO加盟国による生物多様性の保全、持続可能な森林経営(sustainable forest management:SFM)の実施、劣化した森林景観の再生、持続可能な森林資源利用の促進に向けた取組を支援することを目的に、長きに渡る連携をさらに5年間延長しました。

2025年までの共同イニシアティブは、先週月曜日の覚書(MOU)の発効をもって開始しました。

ITTOとCBDは10年間に渡って緊密な協力を行ってきました。生物多様性年(International Year of Biodiversity)の枠組の中で2010年に両機関が署名した最初のMOUにより熱帯林の生物多様性保全のためのITTO/CBD共同イニシアティブ(ITTO/CBD Collaborative Initiative for Tropical Forest Biodiversity)が始まりました。2つ目のMOUは2015年から2020年まで効力を持ち、2014年10月に韓国・平昌で開催されたCBDの第12回締約国会議にて署名されました。

共同イニシアティブの下、生物多様性の減少や低下が見られ森林に依存する人口が多い23か国で今日までに実施されたプロジェクトは16に上ります。この16プロジェクトの総予算は1,300万ドルと多くはないものの、最近実施された技術評価では、プロジェクトは地元の人々の生計向上や森林経営の改善、劣化した森林景観の再生、生物多様性の保全において大きな成果をあげたことが明らかになりました。

例えば、ペルーではマングローブ保護区の面積が70万ヘクタール以上増加し、中央アフリカでは400名を超える森林従事者や技術者に対してSFMに関する教育活動や研修が実施され、カンボジアとタイの国境にあるエメラルド・トライアングル(Emerald Triangle)の森林経営に関する越境協力が実現し、フィジーでは130ヘクタールのマングローブが再生されました。

次のような新規CBD-ITTO共同事業が実施される予定です:

  • 各国による生物多様性や生態系サービスを含めた森林景観の価値の認識・増大の支援
  • 各国による熱帯林の持続可能な経営・利用及び再生に資する生態学・生物学データの収集の支援
  • 熱帯地域の生物多様性と森林景観の生態系サービス提供を増進させるための革新的な方法、技術並びにアプローチの推進及び技術的専門知識の強化
  • 熱帯生産林における生物多様性のためのITTO・IUCNとの共同ガイドライン(ITTO/IUCN Guidelines for the Conservation and Sustainable Use of Biodiversity in Tropical Timber Production Forests)」(英語)やCBDとITTOが発行する他のガイドラインや政策の実施に必要な能力の強化
  • 他の国際機関やパートナーと協力してワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora:CITES、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)附属書に掲載されている熱帯樹種の保全と持続可能な利用を含め、生物多様性に関連した国際目標達成に必要な能力強化
  • 目標や対象を設定した熱帯林及び熱帯林の生物多様性に関する共同活動の特定、策定、実施

今回署名されたMOUにより、生物多様性の保全、気候変動緩和と適応、持続可能な開発に関連した顕在化しつつある課題について地球環境ファシリティ(Global Environment Facility)や緑の気候基金(Green Climate Fund:GCF)といった二国間・多国間資金協力機関との協力及びアクセスが促進されます。

ITTO-CBD間の共同事業は、CBDの下で策定過程にある2020年以降の国際的な生物多様性枠組(CBDウェブサイト、英語)の文脈での熱帯林の持続可能な利用、再生及び保全に関する調和の取れた報告業務の機会を探り、地域協力や南南協力を支援し、これによって国連生態系回復の10年(UN Decade on Ecosystem Restoration) (2021年~2030年)に寄与しこれを活用するという革新的な面を持ち合わせています。

ITTO-CBD間の共同事業は、複数の愛知目標、特に個別目標1(人々が生物多様性の価値と行動を認識する)、5(森林を含む自然生息地の損失が少なくとも半減、可能な場合にはゼロに近づき、劣化・分断が顕著に減少する)、7(農業・養殖業・林業が持続可能に管理される)、11(陸域の17%、海域の10%が保護地域等により保全される)、12(絶滅危惧種の絶滅・減少が防止される)、14(自然の恵みが提供され、回復・保全される)、さらに持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の多くに寄与しました。

CBDの報道発表(英語)はこちら


編集者注記

生物多様性条約(Convention on Biological Diversity:CBD):1992年に開催された地球サミット(Earth Summit)にて署名され、翌1993年12月に発効したCBDは、生物多様性の保全、生物多様性の構成要素の持続可能な利用、遺伝資源利用に由来する恩恵の公正な共有を目的とした国際的な条約です。現在の締約国は196か国でほぼ全世界が参加しています。CBDは、気候変動による脅威等の生物多様性と生態系サービスに対する全ての脅威に、科学評価、ツール・奨励策・プロセスの開発、技術とグッドプラクティスの移転、先住民・地域住民、若者、NGOs、女性及び企業といった関連する利害関係者の全面的かつ積極的な関与を通じて取組むことに努めています。カルタヘナ議定書(生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書:Cartagena Protocol on Biosafety)と名古屋議定書(生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書:Nagoya Protocol on Access and Benefit Sharing)はCBDを補う取極です。2003年9月11日に発効したカルタヘナ議定書は、現代のバイオテクノロジーによる遺伝子組替え生物(living modified organisms:LMO)が及ぼす可能性のあるリスクから生物の多様性を保護するよう努めるものです。今日までに173の締約国が批准しています。名古屋議定書は、遺伝資源への適切なアクセスや関連技術の適切な移転といった遺伝資源の公平・公正な利用からもたらされる恩恵の共有を目指しています。2014年10月12日に発効し、今日までに129の締約国が批准しています。

CBDについての詳細はホームページwww.cbd.int(英語)をご覧下さい。お問い合わせは、デビッド・アインスワース(David Ainsworth)、電話番号 +1 514 561 2720又は電子メール  david.ainsworth@cbd.int、あるいはヨハン・ヘドモンド(Johan Hedlund)、電子メール johan.hedlund@cbd.intまでご連絡下さい。
 

国際熱帯木材機関(International Tropical Timber Organization:ITTO)は熱帯林の持続可能な経営と保全そして持続的かつ合法的に管理・収穫された熱帯木材資源の貿易拡大と多角化を促進している政府間組織です。ITTOについての詳細については itto@itto.int にお問い合わせいただくか、ホームページwww.itto.int/ja/をご覧ください。