多数が参加したオンラインセミナーで木材貿易データプラットフォームを初披露

2020年11月7日

貿易データが入手可能であることは意思決定や価値木材ビジネスにとって極めて重要。写真撮影:Praethip/POND5

独立市場監視(Independent Market Monitor:IMM)が10月に開催したウェビナーにはおよそ100名の貿易関係者が参加し、改訂されて間もないデータダッシュボード(Data Dashboard)と新たに開発された持続可能な木材情報交換(Sustainable Timber Information Exchange:STIX)が初公開されました。この2種類のデータサービスはITTOとそのパートナー機関が共同開発したもので、木材貿易データに関する情報や分析を利用者のニーズに合わせて加工することができます。

木材セクターの貿易データが木材ビジネスやその他のセクター関係者にとって有用となるには、最新であることと入手が容易であることの2点が極めて重要です。すなわち、包括的かつ使い勝手がよく適切な形で利用可能であるということが重要です。IMMによると、データダッシュボードもSTIXもこの特性を有しており、IMMは中核的な情報をこの2つのプラットフォームから得ています。

データダッシュボードとSTIXの性能を実証したIMM開催による本ウェビナーには定員に達する参加があり、両プラットフォームとその木材貿易の後ろ盾となる可能性への関心の高さが窺えました。

IMMは欧州連合(EU)の資金協力を受けてITTOが実施しているプロジェクトです。その主な役割は、EUの森林法施行・ガバナンス・貿易(FLEGT)プログラム下で二カ国間パートナーシップ協定(voluntary partnership agreements:VPAs)を締結している国からEUと英国へ、および世界各地の木材・森林製品の貿易フローをモニタリングすることです。EUの主要木材輸入国と英国、さらにコンゴ、ガーナ、インドネシア、ベトナムのIMM貿易通信担当者もFLEGT認可済みの木材やFLEGTのイニシアティブが市場に与える影響や反応をモニタリングします。

IMMのデータダッシュボード(www.stats.flegtimm.eu)はこの容易化のために再開発されました。視覚化ツールが新たに加えられ利用者のニーズに応じたデータの選択・表示が可能となりました。

ウェビナーでは、IMMの貿易アナリストであるルパート・オリバー氏が、データダッシュボードは市場動向の注視・分析という貿易にとっての有用性の他にも幅広い用途があります、と話しました。「[データダッシュボードは、]IMMの年次報告やセクター別調査の資料となる貿易・セクター調査を実施するIMM通信担当者の業務を支えます。また、FLEGTやFLEGTに向けた市場戦略の策定に関わる政策決定者にとって参考にもなります。」とオリバー氏は述べました。

データダッシュボードは毎月更新され、輸出入統計品目番号((Harmonized System:HSコード)の第44類(木材)、第47類(パルプ)、第48類(紙)、第94類(家具)に分類された製品がその対象です。各分類の製品を含め、HSの最高解像度を使用しています。

データダッシュボードはモニタリングボード(Monitoring Board)と市場動向(Market Trends)ファシリティの2つの部分から構成されています。モニタリングボードでは、EUと英国の熱帯木材貿易の大まかな概要が閲覧でき、FLEGT締結国からの貿易フローをあらゆる供給元からの幅広い熱帯地域からの輸入品の文脈に設定できます。さらに、世界の熱帯貿易の動向を輸入国別に表示することができ、EU木材規則(EU Timber Regulation:EUTR)を有すEUやレイシー法(Lacey Act)を定めている米国といった市場の適法性規制を行う輸入国と規制を行わない国とを区別します。

オリバー氏は、2020年7月までの12ヶ月間の世界の熱帯木材総取引額(一次・二次産品)は637億ドルに上り、FLEGT締結国およびVPAパートナー国がこのうちの43パーセントを占める点に触れました。

「8月までの最新データによると、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界の熱帯木材貿易の落ち込みは目に見えて明らかですが、米国と中国による輸入の増加が大きく影響して最近では貿易量が著しく回復していることがわかります。」とオリバー氏は話しました。

市場動向ファシリティでは、利用者がEU国による複数の木材供給国からの輸入製品を選択することで統計データを様々な母数で分析することができます。抽出データは未加工の表形式またはグラフ形式でダウンロードすることができ、利用者は独自に「サンキー(Sankey)」図を作成しデータの分析結果を視覚的に表すことが可能です。

今年立ち上げられたSTIXウェブサイト(www.stix.global)は、ITTOと世界木材フォーラム(Global Timber Forum)との共同イニシアティブの下でIMMプロジェクトが開発しました。EU統計局貿易データベース(Eurostat-Comext)、イギリス歳入関税庁(UK HMRC)、商業プロバイダーであるビジネス・貿易統計社(Business and Trade Statistics Ltd.)から毎月最新のデータを得ています。STIXは価格に関するデータを米ドルとユーロに統一し、EUや英国の量に関するデータの有効性を独自の算法により確認して誤りや不一致を排除しています。

STIXはダッシュボードと同じ製品番号を用いてデータを提供していますが、毎月、最大でも3ヶ月以内にデータを提供することができる46カ国は除きます。世界の主要な輸出入国のほぼ全てがこれにあてはまり、合わせて世界の貿易の90パーセントを占めます。

オリバー氏は、「これは非常に有用なツールです。精査された最新情報を提供し、利用者がCSVファイル形式でデータを大量にダウンロードすることや取引上重要な製品グループの統計情報を選択・集計することが可能です。」と話しました。

また、ウェビナーではIMMの主席コンサルタントであるサラ・ストーク氏は、STIXとダッシュボードは継続的な改良を経ています、と述べました。

「両サービスとも、今以上に良いものとするための利用者の感想が共有できるフィードバック機能があります」とストーク氏は話しました。「ご意見やアドバイスが多ければ多いほど私たちが提供するデータや分析がより優れたものになり、より有益になります。」

本記事は、木材貿易ジャーナルオンライン(Timber Trades Journal Online) (www.ttjonline.com)に当初掲載された記事を編集・改訂したものです。本ウェビナーの録画はwww.flegtimm.euにて閲覧可能です。

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