ITTOは劣化した熱帯林景観再生に関するガイドラインを発表

2020年10月6日, 横浜

メキシコのシエラ・ロス・トゥクストラスにある森林と農地の農村景観。 写真撮影:G. Sánchez-Vigil

 

ITTOが2020年10月5日に発表した新ガイドラインは、政策決定者から林業従事者・農業従事者までのあらゆる利害関係者による劣化した景観の再生に役立てられ、それによって必要不可欠な物と生態系サービスをもたらし持続可能な農村地域の暮らしと雇用を創造することを目的としています。

森林景観再生(forest landscape restoration:FLR)とは樹木や他の森林要素を利用して人と自然が調和を保ちながら健全かつ強靭な生態系を築く包括的アプローチを指します。FLRは飛躍的に発展している科学と方法で、政策決定者や実務者による実践を助けるための使いやすい手引き書が緊急に必要とされています。

ITTOはこのニーズを認識し、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests:CPF)、アジア森林協力機構(Asian Forest Cooperation Organization:AFoCo)、熱帯林景観の分野で活動するその他多くのパートナー[1]との緊密な協力のもと、本「熱帯地域における森林景観再生のためのガイドライン (Guidelines for Forest Landscape Restoration in the Tropics)」の発表に至りました。

2名の世界的に著名な専門家であるユルゲン・ブレイザー氏とセサル・サボガル氏が本ガイドラインを執筆し、世界各地の科学者、政策決定者、現場実務者や研究機関が多大な意見や助言を行いました。

ITTOのゲハート・ディタレ事務局長は本ガイドラインの完成を歓迎し、2021年の「国連生態系回復の10年(United Nations Decade on Ecosystem Restoration)」の開始を控え、持続可能な開発目標(SDGs)達成期限まで10年に迫っているという極めて重要な時期にこのガイドライン発表は重なっていますと述べました。

ディタレ博士は次のように話しました。「『国連生態系回復の10年』が世界各地で土地景観再生の迅速な普及につながる推進力となることに期待を寄せています。本ガイドラインは熱帯地域で健全、強靭かつ生産性のある景観を築く行動を加速させる重要なツールとなり、さまざまな恩恵をもたらすでしょう。」

ブレイザー博士は次のように述べました。「近年、FLRへの関心が急激に高まっています。FLRが景観の健全性に焦点を当てた包摂的アプローチであること、そして劣化した土地の大部分が早急な再生を必要としていることがその理由です。」

「熱帯地域の林地のおよそ9億ヘクタールが劣化していると見積もっています。FLRは不利益を生みかねない状態にある土地を価値ある財産へと変える手段を提供します。」

サボガル博士はこれに賛同し、「FLRは、特に農業従事者その他の小規模所有者といった地域の人々の参画を得られれば地域・景観レベルで暮らしと環境の両方を改善する可能性を大いに有しています。」と述べました。「十分に普及すれば、FLRは生物多様性、気候変動緩和、土壌の質と水質の維持、その他の生態系サービスにおいて地球に多大な恩恵をもたらすでしょう。」

ディタレ博士は、FLRが新型コロナウイルス感染症の原因と影響に対処するための重要な対策戦略にもなると考えていると話しました。

「FLRは国際レベル、地域レベル、国レベルでの新型コロナウイルスからの回復戦略の中心に置かれる必要があります。生態系の健全性は社会も健全に保ち持続可能性に向け進む上で重要な役割を果たす点を認識することが極めて大切です。」

本ガイドラインは2002年に発表した「熱帯劣化森林と二次林の再生と管理、修復についてのITTOガイドライン(原題 “ ITTO Guidelines for the Restoration, Management and Rehabilitation of Degraded and Secondary Tropical Forests”)」を基に作成されこれを補完するものです。同ガイドラインは熱帯林再生に関する網羅的な助言を行うという国際的な取組の第一弾であり、今日でも有効です。今般の新ガイドラインでは景観の見方がさらに広げられており、世界森林景観復元パートナーシップ(Global Partnership on Forest and Landscape Restoration)が開発したFLRの6原則を中心として構成されています。

「熱帯地域における森林景観再生のためのガイドライン(Guidelines for Forest Landscape Restoration in the Tropics)」(英語)をダウンロードする

森林景観再生(FLR)ポリシーブリーフ(英語)をダウンロードする
 

[1] 本ガイドラインは、森林に関する協調パートナーシップ(Collaborative Partnership on Forests:CPF)のパートナー機関、中でも国際林業研究センター(Center for International Forestry Research)、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)、地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:GEF)、国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources:IUCN)、 国際森林研究機関連合(International Union of Forest Research Organizations:IUFRO)、国連環境計画(United Nations Environment Programme : UNEP)、その他の機関、特にアジア森林協力機構(Asian Forest Cooperation Organization:AFoCo)、アジア大洋州林業訓練センター地域共同体(RECOTEC)、ウィーフォーレスト(WeForest)、世界資源研究所(World Resources Institute:WRI)と共同で作成しました。