持続可能かつ強靭な社会の再構築(Build Back Better)- オンラインセミナーで新型コロナウイルス感染症からの回復における森林セクターの役割が検討される

2020年7月7日, 横浜

グアテマラにあるコミュニティ主体型の森林企業にて従業員が木箱にやすりを掛けている 世界各地の森林企業が新型コロナウイルス感染症の影響を受けた。写真撮影:R. Carrillo/ITTO

6月、4日間に渡り森林セクターにとっての新型コロナウイルス感染症の影響について取り上げたオンラインセミナーでは、持続可能な森林経営(SFM)、奨励策、ガバナンスに重点的に取り組むことが林業と森林産業の復興の後押しとなり、新たな機会を捉えることを可能にすると議論されました。本セミナーでITTOは分科会を共同開催し持続可能な世界のための持続可能な木材(Sustainable Wood for Sustainable World:SW4SW)ラウンドテーブルに参加しました。

本オンラインセミナーは国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations:FAO)が2020年6月22日から25日まで開催し、世界各地の専門家が意見を交換しました。

「世界の森林セクターと新型コロナウイルス感染症:経済・社会的制約のある世界で持続可能な未来を導く(The Global Forest Sector and COVID-19: Navigating a Sustainable Future in an Economically and Socially Constrained World)」と題された分科会では、ITTOのスティーブン・ジョンソン貿易・産業部長がモデレーターを務め、新型コロナウイルス感染症の影響に関する見解が聞かれ、同感染症収束後にいかにしてより強靭な森林セクターを築くことができるかについて提言が出されました。登壇者は、特に熱帯地域の森林は、林産物に対する市場の需要の落ち込みといった幅広い負の影響を被っており、とりわけ中小規模の森林企業に影響が及んでいる点に留意しました。しかし、再生不可能で大量に炭素を排出する物質やエネルギーに替わる木材の利用増加のチャンスが到来するなどこのコロナ渦では機会も生まれているとの認識を示しました。

民間セクター支援に向けた提言としては、意思決定の材料となるようITTOの熱帯木材市場レポート(ITTO Tropical Timber Market Reportを通じるなどした熱帯木材市場に関する健全な情報の提供、民間セクターとの国際協力強化による森林製品の競争力の向上、専門家協会や企業によるSFM計画の策定と実施に対する支援、合法かつ持続可能な熱帯木材市場の推進があげられました。

The “SW4SW Roundtable: COVID19-Related Impacts on Wood Products Value Chains and「SW4SWラウンドテーブル:新型コロナウイルス感染症に関連した森林製品のバリューチェーンへの影響と持続可能かつ強靭な社会の再構築への寄与(SW4SW Roundtable: COVID19-Related Impacts on Wood Products Value Chains and Contributions to Building Back Better)」では、同感染症が木材のバリューチェーンにもたらしている影響についてFAOITTOが実施した調査結果を分析し、いかにしてこれに対応し持続可能かつ強靭な社会を再構築するかについて提言が行われました。

ラウンドテーブルでは、新型コロナウイルス感染症拡大による危機によってグローバルサプライチェーンは混乱し、その脆弱性が露呈したことおよび森林を基盤とした企業の持続可能性を確保するためには地域のサプライチェーンを強化し現地の革新を促進する必要性が明らかとなったことが指摘されました。同感染症によって、先住民、小規模森林所有者、地域住民が食料生産や自然保護に果たす極めて重要な役割が強く認識されました。

ラウンドテーブルでITTOのシャーム・サックル総務部長は、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて農村地域へのUターンが起こり、地域の食料、繊維およびエネルギーのニーズ増加を満たすために森林資源の利用が急上昇し、熱帯林に以前よりも圧力がかかっていると述べました。サックル氏は、新型コロナウイルス感染症からの克服のための短・中期的な取り組みでは、持続可能な国内・海外消費に向け木材とこれ以外の森林材が確実に安定して供給されるようSFM、ガバナンス、奨励策に重点が置かれることが必要であると話しました。SFMおよび森林景観回復への長期的な関わりは、持続可能なバイオエコノミーの振興・実現のための財政的奨励策や市場へのアクセスを伴って広がっていく必要があります。これが、地域の強靭性を強化し、気候変動緩和・適応において森林が果たす重要な役割の維持につながるでしょう。

ラウンドテーブルでは、農村地域を対象とした木材の生産と消費のためのSFMの推進が今これまで以上に意味を持ち、新型コロナウイルス感染症終息後の有効な対応策となる可能性がある点に留意しました。

分科会「世界の森林セクターと新型コロナウイルス感染症:経済・社会面で制約のある世界で持続可能な未来を導く(The Global Forest Sector and COVID-19: Navigating a Sustainable Future in an Economically and Socially Constrained World)」の模様を収録したビデオ(主に英語)を観る

「SW4SWラウンドテーブル:新型コロナウイルス感染症に関連した森林製品のバリューチェーンへの影響と持続可能かつ強靭な社会の再構築への寄与(SW4SW Roundtable: COVID19-Related Impacts on Wood Products Value Chains and Contributions to Building Back Better)」の模様を収録したビデオ(英語)を観る

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分科会「世界の森林セクターと新型コロナウイルス感染症:経済・社会面で制約のある世界で持続可能な未来を導く(The Global Forest Sector and COVID-19: Navigating a Sustainable Future in an Economically and Socially Constrained World)」の統合報告書および発表資料をダウンロードする