熱帯林業には全体的アプローチが不可欠とITTOが見解を示す

2018年8月3日

第18回マレーシア森林会議において基調講演を行うシェマラ・サツール氏。 写真提供:MFC2018

7月31日から8月2日にかけてマレーシア、サラワク州クチンで第18回マレーシア林業会議「デジタル化とテクノロジーを駆使した持続可能な林業の推進」が開催されました。この会議において、ITTO事務局オペレーション担当のシェマラ・サツール事務次長は、熱帯林業セクターがグローバルニーズに最大限貢献するためには、熱帯地域における持続可能な森林経営(SFM)に対して全体的アプローチを取る必要があるとの見解を示しました。
 
「世界的な人口増加の影響で、今後より多くの木材、林産品、そして食糧が求められるでしょう」。「現在そして将来の課題に対処するために土地利用の管理問題を協調的に解決するためには、林業と農業の分野横断的アプローチを強化する必要があります」とサツール氏は続けました。
 
また森林劣化は熱帯地方では依然として大きな問題であると指摘しました。しかしながら、増加する需要に対応して木材や林産物を安定的に、そして合法かつ持続可能に供給できるよう、森林再生、森林復元、SFMを通じた取り組みが可能だろうと続けました。
 
「熱帯木材生産者と国際市場、そして究極的には最終消費者とを結び付けることは重要です。つまり、サプライチェーン全体を『全体的に』扱うことを意味しています。」またサツール氏は「このことを大規模に行うためにはより多くの能力育成活動が必要になりますし、それにはSFMの実践や製品チェーンに沿って森林製品を追跡するための最高の技術を取り入れることが必要です」と述べました。
 
この基調講演では、ITTOが熱帯木材や熱帯林産物の持続可能で合法的な生産を促進することを目的とした活動の一部について、その概要を下記の通り説明しました。
  • 今年6月に中国の北京でグローバルサプライチェーンイニシアティブが開始した。これは合法的かつ持続可能な形で生産された木材及び林産品の生産、加工、流通、及び消費を強化することで、熱帯地域の森林所有者から最終消費者を含む全てのステークホルダーと地球環境へ良い影響をもたらすことを目指すものである。 このイニシアティブには、グリーンサプライチェーンを推進する中国企業12社の宣言が含まれている。ITTOは森林製品産業の発展のために、合法的かつ持続可能な資源から得た木材原材料の安定した信頼できる供給を確保するために段階的アプローチを促進する手助けを行う。
  • ITTOが加盟メンバーである森林に関する協調パートナーシップのイニシアティブ「持続可能な世界のための持続可能な木材」では、持続可能な木材バリューチェーンを生産から消費まで強化して経済的、社会的、環境的利益を高めることを目指している。
  • 2017年5月にローマで開催された国際会議「森林破壊の阻止と森林面積拡大のためのセクター間協力 - 願望から行動へ」では、森林伐採の主な要因とその対策について検討した。
  • ITTOの森林再生ガイドラインは、近年の開発状況を把握し、景観の健全性に対処するため、森林に関する協調パートナーシップの枠組みの中で見直されている。 水、生物多様性、気候変動の緩和と適応のための生態系機能の向上に焦点を当て、こうした景観に住んでいる地域社会にとって最適な生産性と経済的利益を確保することに焦点を当てている。
     
サツール氏はまた、デジタル技術を使ってSFMを推進してきたITTO資金調達プロジェクトの経験と教訓についても紹介しました。これらは次の通りです。グアテマラの森林企業向け電子情報システムアフリカおよびインドネシアにおけるDNA指紋と安定同位体を用いた種の特定及び木材追跡エクアドルの国有林情報システム中国における中小企業に対する木材の合法性に関する情報フローを促進するためのオンラインプラットフォームブラジルにおける近赤外分光法によるCITES掲載樹種の特定ブラジルでの選択的伐採のマッピングに関するITTOフェローシップの成果発表
 
ITTOのゲアハート・ディタレ事務局長の代理としてサツール氏は、サラワク州が2022年までにすべての長期森林コンセッションを認証し、サラワク木材合法性認証システム(Sarawak Timber Legality Verification System)を実施するという目標を掲げたことに祝辞を述べました。
 
サツール氏による基調講演内容をダウンロード
 
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第18回マレーシア森林会議の詳細:https://mfc2018.com.my