木材フォレンジックを活用して違法木材取引に立ち向かう
2026年9月1日, 横浜
強化するITTOの主要プロジェクトの一環として、インドとインドネシアの森林分野の専門家が参加するウェビナーが開催されました(写真:インド・タミル・ナードゥ州の農地にあるクローン・チーク植林地)。© Dr R. Yasodha, ICFRE-Institute of Forest Genetics and Tree Breeding
木材が伐採され、輸送され、取引された後でも、その木材がどこから来たのかを明らかにできるとしたら、どうでしょうか。
DNA分析やその他のフォレンジック技術の進歩により、関係当局が木材の樹種や地理的な原産地を確認し、違法に伐採された木材を検出する新たな手段を得ることできるようになり、そのようなことはますます可能になってきています。科学的なツールは、合法かつ持続可能な木材サプライチェーンの構築に向けた取組において、長年にわたり存在してきた重要な課題、すなわち木材が実際にどこから来たのかを証明するという問題を解決する可能性があります。
最近開催されたウェビナーで、林業分野の専門家らは、DNAを利用したツールやその他のフォレンジック技術が、伐採から最終利用まで木材を追跡するため、または、違法伐採や違法木材のロンダリングに対する捜査や取締りを支援するための科学的証拠を提供することによって、どのようにこの課題に対応できるかについて議論しました。
本セッションは、国際熱帯木材機関(ITTO)、ドイツ連邦食料・農業・地域アイデンティティ省(BMLEH)、タイ・カセサート大学が共同で開催する全12回のウェビナーシリーズの第10回で、小規模農業従事者が管理するチークおよびその他の高価値樹種からの高品質木材生産を強化するITTOの主要プロジェクトの一環として開催されたものです。
チークは熱帯地域の約80か国で栽培されています。その広範な栽培と取引により、チークは違法伐採や違法木材のロンダリングの影響を特に受けやすい樹種となっています。
冒頭の挨拶で、ITTOのジェニファー・コンヘ森林経営部長は、DNAバーコーディングやその他のフォレンジック手法によって、チークやその他の木材樹種の追跡・トレーサビリティを向上させることができると説明しました。科学的証拠によって、サプライチェーンにおける主張を検証し、信頼性を維持し、国際的な取引要件を満たし、認証制度を維持するとともに、違法伐採や違法木材のロンダリングに対応することができます。
木材フォレンジックでは、木材を識別し、その原産地を調査するために、複数の科学的手法を組み合わせます。DNAバーコーディングでは、特定の遺伝物質を分析することで樹種を識別できるほか、個体群を区別し、地理的な原産地を調査することができます。
木材の盗難と地理的原産地を追跡するためのフォレンジックツール:インドからの知見
世界有数のチーク市場および取引国の一つであるインドは、違法木材取引に起因する課題に直面しています。インド・ケララ森林研究所(KFRI)の森林バイオテクノロジー部門の上級主任研究員兼部門長であるスーマ・アルン・デヴ氏は、紛争の影響を受けているミャンマーからの違法伐採木材の輸入や、17州における国内での違法伐採が、政策立案者にとって懸念事項となっていると指摘しました。
KFRIはこれに対応するため、樹種と原産地を特定するためのDNAを利用したさまざまなフォレンジックツールなどを開発・活用してきました。
アルン・デヴ博士は、同研究所がDNAバーコーディング、同位体比分析、その他のフォレンジックツールをどのように活用して木材の違法性に対応してきたかを説明しました。KFRIは2011年にこの取組を開始して以来、60樹種を対象とするインド初の全国的なDNA参照データベースを構築するとともに、インドにおける合法かつ持続可能な木材サプライチェーンの強化を支援するため、DNAバーコーディング・木材フォレンジックセンターを設立しました。
インドにおける違法木材取引の要因は複雑です。アルン・デヴ博士の説明によると、国内需要の高さや法執行の弱さに加え、持続可能な森林経営よりも保全を優先する政府の政策や裁判所の判決の影響を受けている伐採セクターが、好ましいとは言えない状況の要因となっているようです。このような状況では、木材の解剖学的・化学的特徴に基づく従来の木材識別手法だけでは、樹種の確実な特定や個々のサンプルの原産地の判定に限界がありました。
木材の原産地を判定することの難しさから、KFRIは統合的なフォレンジック・アプローチを導入し、その中核的な手法の一つとしてDNAバーコーディングを活用しています。DNAバーコーディングは木材の樹種を特定するために利用でき、さらに個体群レベルの遺伝マーカーや参照データベースと組み合わせることで、個々の試料の地理的原産地に関する証拠を提供することができます。KFRIのデータベースには主要な樹種の参照データが集約されており、研究者、政策立案者、法執行機関にとって一元化された情報源となっています。アルン・デヴ博士とそのチームは、機械学習を活用してデータベースの検索性と分析能力を高め、より効率的かつ実用的に利用できるようにしています。
KFRIのチームはフォレンジックツールの活用をさらに進めており、単純反復配列(SSR)マーカーを用いて遺伝学的研究を行い、インドの特徴的な遺伝・生態ゾーンを特定しています。
インドネシアにおけるDNAバーコーディングの実践
ウェビナーで、インドネシアのIPB大学のウルファ・J・シレガル氏は、同国の木材セクターも違法性に関連する問題に直面していると述べました。2013年には、インドネシアは世界で違法木材の生産量が最も多い3か国の一つと推定されていました。
その課題への主要な対応策は、国内で伐採された木材の認証を義務化することでした。木材合法性・持続可能性証明システム(SVLK)により、木材の合法性と持続可能性を保証するためのトレーサビリティと監査を通じて、インドネシアの木材セクター全体でコンプライアンスが強化されています。
ITTOは、インドネシア全土でのSVLKの導入を支援してきました。その中には、ジャワ島で実施された現地プロジェクトも含まれ、SVLKに関する意識向上、研修の実施、関係者グループの実施能力の構築などが行われました。この取組と相まって、森林法がインドネシアの木材産業における違法行為を取り締まり、罰則を科すための法的枠組を構築しています。
フォレンジック技術は、木材の識別、トレーサビリティ、検証を強化することで、こうした法的・制度的措置を補完することができます。インドと同様に、木材識別技術によって、DNAバーコーディング、従来型のDNAマーカー、一塩基多型(SNP)分析などの手法を通じて、木材サンプルをより正確に識別できるようになっています。
シレガル教授とそのチームは、これらの手法を実際に活用し、インドネシア全土での実用的な応用事例を示しています。同教授は、DNA分析を用いて木材サンプルと参照資料を比較する方法を示す複数の事例を紹介しました。原産地が既知のサンプルと不明確なサンプルとの遺伝的類似性を調べることで、研究者は、その木材が主張されている原産地と整合しているかどうかを評価し、その原産地に関する調査を裏付ける科学的証拠を提供することができます。
チークの追跡・検証に向けた世界的なシステムへ
フォレンジック技術を標準化し、より広く導入するためには、国際協力と知識共有が必要です。
参加者からは、KFRIやインドネシアの研究者が構築した国内の参照システムを基盤として、世界的な木材フォレンジック・データベースの構築が提案されました。このようなシステムがあれば、各国の当局が共通の参照データと木材サンプルを照合できるようになり、樹種や地理的原産地について国境を越えた検証を強化することができます。
木材サプライチェーンがますます複雑になる中、科学的証拠は、認証制度や従来型のトレーサビリティシステムを補完することができます。ウェビナーで専門家が紹介した事例は、DNAを利用したツールやその他のフォレンジック手法によって、木材の合法性を検証する能力を強化できることを示しています。
このシリーズでは、年末までにあと2回のウェビナーが予定されています。

