異なる環境、共通の願い:次世代の熱帯林の担い手への投資
2026年8月12日, 横浜
世界中の若者は、それぞれ大きく異なった環境で暮らしているでしょう。しかし、彼らが抱く願いは驚くほど共通しています。それは、尊厳、機会、有意義な参加、働き甲斐のある人間らしい仕事、質の高い教育、そして持続可能な未来です。
こうした共通の願いは、今年の国際青少年デー(International Youth Day)のテーマ「異なる環境、共通の願い(Different Contexts, Common Aspirations)」の根底にあるものです。このテーマは、若者が暮らす場所や置かれている状況によって異なる現実に直面していることを認識するとともに、教育や雇用への不平等なアクセス、気候変動、デジタル環境へのアクセス、社会的包摂など、国境を越えて共通する課題にも光を当てています。そして、とりわけ人生の機会を得る上で大きな障壁に直面している若者に対して、より大きな連帯と投資を呼びかけています。
熱帯林にとって、若者への投資は特に重要です。若者は、将来の森林管理者、研究者、起業家、政策立案者、デザイナー、そして地域社会のリーダーとなる人々です。彼らのスキル、アイディア、エネルギーは、持続可能な森林経済や、包摂、保全、森林経営に向けた革新的なアプローチの形成に寄与します。
ITTOは、こうした動きをいち早く認識し、過去40年間にわたり若者のための機会を推進してきました。
ITTOフェローシップ・プログラム
ITTOが長年にわたり若者の育成に取り組んできたことを最も明確に示すのが、1989年に設立されたITTOフェローシップ・プログラムです。
プログラムでは、49か国以上から1,400人を超える若手および中堅の専門家が、研修コース、スタディツアー、国際会議、大学院課程など、専門能力開発の機会を得てきました。フェローシップ受給者の30%以上が女性です。
フェローシップ・プログラムの影響は、プログラムだけにとどまりません。ある評価では、調査対象となったフェローシップ授与者の82%が、自国における森林回復および森林保全に中程度または非常に大きな貢献をしたと回答し、88%が所属機関の生産性または業績が向上したと回答しました。42%は、フェローシップで得た知識やスキルが、国の森林政策または環境政策に影響を与えたと回答しました。また、60%以上が、フェローシップ修了後に関連する職位または昇進を得ています。
こうした成果は、人への投資が森林への投資でもある理由を示しています。
ITTOの取組を通じた様々な機会の創出
ITTOによる若者への支援には、さまざまな形があります。現場でのプロジェクト、研修、研究、イノベーション、そして地域社会や産業界との関わりの機会を通じて、ITTOは、若者がスキルを身につけながら、持続可能な熱帯林業に向けたアイディアを生み出せるよう支援しています。
持続可能な木材を機会につなげる
インドネシアでは、ITTOによる木材製品の持続可能な国内市場の発展に向けた取組に、木材セクターのスキル、イノベーション、能力を強化する活動が含まれています。このプロジェクトでは、持続可能な木材利用を促進するとともに、木材製品の開発に向けた新たなアイディアやアプローチを奨励することを目指しました。
2023年、ITTOは若い起業家に対し、実践的な研修を通じて実務経験を積み、スキルを高める機会を提供しました。これにより、教育や技術的専門知識を木材セクターでのビジネスチャンスにつなげました。
「製品のイノベーションからスキルの向上まで、研修、コンテスト、資金提供プログラムなど、さまざまな活動に参加してきました。」と、インドネシアの若手木工職人ムハンマド・ハイカル氏は述べています。
学び、試行し、スキルを磨く機会を若者に提供することで、このような取組は、森林関連のセクターを若い世代にとってより魅力的なものにするとともに、森林資源のイノベーションと持続可能な利用を支えることができます。
「最初は道具(テーブルソー)が1つしかなく、それを使って木材廃棄物から植木鉢を作っていました。その後、イノベーションを進め、家庭用品やキッチン用品を作るようになりました。どれもコミュニティ林から調達した木材で作っています。」とハイカル氏は付け加えました。
ITTOは、若いデザイナーを持続可能な木材のイノベーションの中心に据える活動も支援しています。例えばベトナムでは、家具デザインコンテストを通じて、学生や若手デザイナーが持続可能な方法で生産された木材を使った製品の開発に取り組み、創造性を発揮するとともに、持続可能な木材を現代的で魅力的なデザインにどのように生かせるかを示しました。この取組には建築、デザインなどさまざまな分野の学生が参加し、受賞作品はその後、家具製品として開発されました。
このような取組は、若者の参画とは、単に、若者たちを既存の仕事に向けて準備させることではないと示しています。それはまた、木材をどのようにデザインし、生産し、販売し、利用するのかについて、若者が新たに考えるための場を提供することでもあります。
森林と地域社会から学ぶ
メキシコのユカタン半島では、ITTOが支援する取組において、研究者、学生、地域社会が一堂に会し、この地域の熱帯林、生物多様性、生態系サービス、伝統的知識について理解を深めました。
この地域は豊かな生物文化的価値を有していますが、その森林とそれに関連する伝統的知識は、土地利用の変化、農業、産業、牧畜、観光などからの圧力にさらされています。プロジェクトでは、持続可能な生計を支援し、熱帯林と伝統的知識を保全することの重要性について一般の認識を高めながら、研究と提言を行うことを目指しています。
環境科学、異文化間開発・マネジメント、応用地理学、持続可能な沿岸管理などの分野を学ぶ学生たちは、コミュニティと協働することで実践的な経験を積みました。活動には、調査の実施、ドローンを用いた環境マッピング、そして針を持たないマヤミツバチの養蜂などの伝統的な慣行の記録が含まれていました。
このアプローチは、若者に単なる技術的な経験以上のものを提供します。つまり、持続可能な林業は究極的には森林だけでなく人々にも関わるものであるということ、また、森林景観に依存し、管理しているコミュニティとともに作り上げることで、解決策はより強固なものになるということを理解する力を若者に与えるのです。
若者の育成をより大きな全体像の一部として捉える
ITTOのアプローチでは、若者の育成を持続可能な開発の他の側面から切り離して考えることはできないという認識も示されています。
例えばトーゴでは、ITTOが創価学会と連携し、森林景観回復を支援するとともに、農村地域の女性が生計を向上させ、地域の森林景観の気候変動に対するレジリエンスを強化できるよう支援しました。このプロジェクトでは、苗床の設置、エンリッチメント・プランティング、アグロフォレストリー、食用作物の栽培、木材および非木材林産物の生産に関する研修を実施しました。
この取組は、開発に対して総合的なアプローチを取ることの重要性を示しています。ジェンダー、生計、食料安全保障、教育、環境再生は相互につながっています。女性がより多くの機会と資源を得られるようになると、その恩恵は個人の生計を超えて家族やコミュニティにも及ぶ可能性があり、子どもたちの栄養状態、就学、健康の改善にもつながります。
若者にとっても同様に、このようなより広い視点が重要です。有意義な機会を創出するということは、単一のセクターやスキルだけに目を向けるのではなく、若者が成長し、力を発揮できるようにする社会的、経済的、環境的な条件を認識することを意味します。
「職業人として働く私たちの多くは、若者が機会、有意義な参加、持続可能な未来を求める思いを決して過小評価してはならないことを十分に理解しています。若者に投資し、必要なスキルと機会を提供し、世代や国境を越えて若者同士をつなぐことで、彼らは森林および関連セクターにおけるイノベーションと持続可能な開発を推進する強力な担い手へと成長します。これは、ITTOの経験によって示されています。」と、シャーム・サックルITTO事務局長は述べました。
2026年に40周年を迎えるITTOの経験は、若者の育成が新たに設定された優先事項ではなく、長年にわたる活動の一部であることを示しています。教室やワークショップから森林や地域社会まで、革新的な木材製品から研究や森林再生まで、若者は熱帯林の未来に積極的に貢献することが期待されています。
若者が学び、参加し、イノベーションを起こし、リーダーシップを発揮するための機会を見出し、創出すること――これこそが、若い世代のこうした願いを成果へとつなげるためのITTOの取組です。