先住民族の声が導くサラワク州アッパー・バラムの森林保全

2026年8月9日, 横浜

世界の先住民の国際デーにあたり、国際熱帯木材機関(ITTO)は、健全な森林と豊かな暮らしが相互に支え合う未来の構築をリードする、マレーシア・サラワク州アッパー・バラムの先住民族コミュニティを称えます。© ITTO

何世代にもわたり、ペナン族、ケニャ族、クランビット族、サバン族の人々は、マレーシア・サラワク州アッパー・バラムの森林を故郷としてきました。彼らの文化、暮らし、アイデンティティは周囲の熱帯雨林と深く結びついており、自然によって食料、医薬品、清浄な水、そして精神的なつながりがもたらされてきました。

世界の先住民の国際デー(International Day of the World’s Indigenous Peoples)にあたり、国際熱帯木材機関(ITTO)は、健全な森林と豊かな暮らしが相互に支え合う未来の構築をリードする、これらのコミュニティを称えます。

新たに公開された短編動画「マレーシア・サラワク州アッパー・バラムにおけるコミュニティ主体の保全と開発に向けた緊急アクション(Urgent actions for community-based conservation and development in Upper Baram, Sarawak, Malaysia)」では、ITTOのプロジェクト「地域住民の生計の大幅な向上(Critical upliftment of local livelihoods)」に携わる人々の物語が紹介されています。この動画では、先住民族コミュニティのメンバー自身が、森林と自分たちの暮らしの未来を形づくる様子を切り取っています。

28万3,500ヘクタールを超えるアッパー・バラム・フォレスト・エリアには、4つの先住民族グループからなる32のコミュニティが暮らしており、地域の生計と文化的伝統の基盤となる卓越した生物多様性を有する、世界的にも重要な地域となっています。© ITTO

28万3,500ヘクタールを超えるアッパー・バラム森林地域には、4つの先住民グループからなる32のコミュニティ(ペナン族20コミュニティ、ケニャ族8コミュニティ、クランビット族3コミュニティ、サバン族1コミュニティ)が暮らしています。この地域は卓越した生物多様性を有する世界的に重要な地域であると同時に、地域住民の生計と文化的伝統の基盤となっています。

サラワク州森林局が実施し、ITTOが技術支援を行い、日本政府が資金を拠出するこのプロジェクトは、コミュニティ自身が特定した優先課題に対応するものです。保全上の優先事項、伝統的な土地利用、開発ニーズが複雑に混在するこの地域の特性を踏まえ、この取組では地域主体の保全を推進するとともに、持続可能な生計を強化しています。

バ・ダタ・ビラ村のコミュニティメンバーであるジョセフ・セディン氏は、次のように振り返ります。「もし森林に何か起きれば、私たち全員に影響します。森林は私たちに食料や薬を与えてくれているので、大変なことになるでしょう。」

この動画は、地域の人々の声に耳を傾けることが、日々の暮らしに具体的な改善をもたらしている様子を紹介しています。

インフラ整備に加えて、ITTOの取組は、エコツーリズムや森林保全グループの設立を通じて、コミュニティが新たな生計の機会を創出することを支援しています。© ITTO

あるコミュニティでは、重力式給水システムによって、電力を必要とせず、安定して清浄な水を利用できるようになりました。「この給水システムが整備される前は、雨が降るのを待って、大きなドラム缶に水をためなければなりませんでした。」
別のコミュニティでは、全長1キロメートルのコンクリート製の歩道が整備され、物資を運んだり、サービスを利用したり、学校へ通ったりする住民の移動が、より安全かつ容易になりました。

「このプロジェクトは単なる道を整備するだけのものではありません。すべての村が日々の用事をより快適に行えるようにするものです。サラワク州政府は、開発は村々にまで届き、人々に直接利益をもたらすべきだと常に考えてきました。」と、サラワク州森林局森林局長のダトゥ・ハジ・ハムデン・ビン・ハジ・モハマド氏は、新しい歩道の開通式で述べました。

インフラ整備にとどまらず、このプロジェクトはコミュニティが新たな生計の機会を創出できるよう支援しています。エコツーリズムやコミュニティ・ホームステイに関する研修は、アッパー・バラム固有の自然・文化遺産を紹介しながら、各家庭が収入源を多様化することを支援しています。同時に、コミュニティのメンバーは、生計と生物多様性を支える森林を守るため、森林保全グループを設立しています。

「私たちは、この森林とテキウィット滝の美しさを外部の人たちに伝えたいと思っています。そうすれば、より多くの観光客がここを訪れ、この地域を守ることができます。」とセディン氏は付け加えました。

女性も、この取組において中心的な役割を果たしています。ITTOのジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関する政策ガイドラインに基づき、シャーム・サックルITTO事務局長は次のように述べています。「このプロジェクトでは、研修や能力開発を通じて、土地利用計画、天然資源の管理、生計の多様化への女性の参加を促進しています。動画全体を通して、ひとつのメッセージが明確に伝わってきます。それは、先住民の知識、コミュニティの優先事項、そして地域の主体性を中心に据えることで、保全が成功するということです。本プロジェクトは、こうしたコミュニティの利益が守られるようにするというITTOの取組の核心に位置するものです。」 

世界の先住民の国際デーにあたり、何世代にもわたって森林との深い結びつきを通じてこれらの景観を支えてきた、アッパー・バラムの先住民族コミュニティの知識、レジリエンス、そして森林を守る力を称えます。© Ramon Carrillo/ITTO

世界の先住民の国際デーにあたり、何世代にもわたって森林との深い結びつきを通じてこれらの景観を支えてきた、アッパー・バラムの先住民族コミュニティの知識、レジリエンス、そして森林を守る力を称えます。

「先住民族の声は、彼らが解決策を形づくるパートナーでありリーダーとして認められるとき、持続可能な森林経営はより強固なものになることを私たちに思い起こさせてくれます。彼らの経験は、地域の優先事項に基づいて開発を進め、コミュニティが保全の主体的なパートナーとなることで、森林と人々がともに豊かになれることを示しています。」とサックル事務局長は付け加えました。

新しい動画をご覧いただき、彼らの物語に耳を傾けてみてください。また、先住民と地域住民のリーダーシップが、マレーシアで最も価値のある熱帯林景観の一つを保全しながら、強靭なコミュニティをどのように築いているのかをぜひご覧ください。