持続可能な森林経営は、ネイチャーポジティブにどう貢献するのか
2026年7月28日, 熊本
ITTOは、グローバル・ネイチャーポジティブ・サミットで、持続可能な熱帯林の経営と合法かつ持続可能な木材バリューチェーンがネイチャーポジティブな未来にどのように貢献するかを紹介しました。© Miwa Inoue/IFSAQ
持続可能な森林経営は、ネイチャーポジティブにどう貢献するのでしょうか?
2026年7月14日から15日に熊本で開催されたグローバル・ネイチャーポジティブ・サミットで、国際熱帯木材機関(ITTO)とそのパートナーは、上記の問いかけへの答えを探り、持続可能な熱帯林経営と合法かつ持続可能な木材バリューチェーンがネイチャーポジティブな未来の実現にどのように貢献するかを紹介しました。
サミットには2,725人が参加し、40社を含む85の組織が賛同した「熊本宣言」の採択をもって閉幕しました。民間企業が多数参加したことは、生物多様性条約第17回締約国会議(CBD COP17)を前に、昆明・モントリオール生物多様性枠組(Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework: KMGBF)の目標達成に向けて企業が重要な役割を担うことへの認識が高まっていることを示しています。
持続可能な森林経営がもたらすネイチャーポジティブな成果
世界の森林の約半分を占める熱帯林は、生物多様性の保全、気候変動の緩和と適応、そして森林に生計を依存する何百万人もの人々を支える上で不可欠です。持続可能な森林経営は、森林の生態学的健全性を維持しながら、環境・社会・経済の各側面における恩恵を継続的に提供するものであり、元来ネイチャーポジティブなアプローチであると言えます。
ITTOのサイドイベント「熱帯林のコベネフィット:循環型バイオエコノミーに向けた自然に基づく解決策」(The co-benefits of tropical forests: nature-based solutions to circular bio-economies)では、ジェニファー・コンヘITTO森林経営部長が冒頭の挨拶を行いました。同氏は、持続可能に経営される熱帯林と、合法かつ持続可能な方法で調達された熱帯木材への需要が、森林保全、生計の向上および健全な森林生態系の維持に向けたインセンティブを生み出すことを説明するとともに、熱帯林保有国において持続可能な森林経営を推進する上で国際的な協力が重要であることを強調しました。
林野庁の谷村栄二次長は、熱帯地域における持続可能な森林経営の推進におけるITTOの長年の取組と、ホスト政府としての日本とITTOとの緊密な協力関係に言及しました。また、日本の森林・林業に対する取組へのコミットメントを改めて示し、林野庁が新たに公表する戦略について紹介しました。この戦略は、林産物に関する取組と民間セクターとの連携にさらに重視するものです。
イベントでは、WWFジャパン(自然保護室長・川江心一氏)、PEFCインターナショナル(アドボカシー部長・トルステン・アルント氏)、日本工営株式会社(サステナビリティデザインオフィス室長・菊池淳子氏)、森林総合研究所(主任研究員・ロナルド・C・エストケ博士)の専門家がパネルディスカッションを行いました。環境・社会・経済の目標と循環型バイオエコノミーを同時に実現するには、科学、森林認証、責任あるサプライチェーンおよび地域社会のエンゲージメントをどのように連携させていくかについて議論しました。
ネイチャーポジティブな気候変動対策としての木造建築
ITTOはまた、住友林業とビルト・バイ・ネイチャー(Built by Nature)が主催したサイドイベントにも参加しました。このイベントでは、合法かつ持続可能な方法で調達された木材が、気候変動および生物多様性に関する目標に貢献しながら、建築環境をどのように変革できるかについて議論されました。
ドキュメンタリー「Our Future: Built by Nature – Unlocking Timber's Role in Net-Zero Construction」(私たちの未来:自然が築く ― ネットゼロ建築における木材の可能性を拓く)の上映後には、90名を超える参加者がパネルディスカッションに参加しました。ITTO森林経営部長のジェニファー・コンヘ氏のほか、住友林業、Built by Nature、林野庁およびPEFCインターナショナルの代表者が登壇しました。
コンヘ氏は、持続可能に経営される熱帯林と合法かつ持続可能な熱帯木材貿易は、効果的なガバナンス、適切な政策および責任ある市場によって支えられることで、人と自然の双方に利益をもたらすことができると述べました。
また、特に建設分野において、炭素集約型の資材ではなく合法かつ持続可能な木材を選択することの環境・社会・経済的な利点について、一般市民の理解を深めるとともに、関係者がより強く一体となって発信していく必要性を強調しました。さらに、持続可能な方法で調達された木材製品の価値をより適切に評価するため、自然関連の情報開示の枠組みにおける指標の改善と標準化を進める必要があると述べるとともに、合法かつ持続可能な木材への需要を喚起する上で公共調達政策が重要な役割を果たすことを強調しました。
さらにコンヘ氏は、森林が気候変動、生物多様性、生計に多くの恩恵をもたらしているにもかかわらず、森林分野が受け取る世界の気候資金は依然としてごくわずかであると指摘しました。そして、この資金不足を解消し、持続可能な森林経営を拡大するためには、革新的な資金調達メカニズムを通じて民間投資をさらに促進する必要があると述べました。
パネリストらは、「責任ある木造建築のための原則」(Principles for Responsible Timber Construction)の活用を呼びかけるとともに、森林認証制度、イノベーションおよび分野横断的なパートナーシップが、実践的でネイチャーポジティブな気候変動対策として木材利用を世界的に拡大する上で果たす役割について議論しました。
次世代の森林リーダーをインスパイアする
ネイチャーポジティブな未来は次世代にかかっているとの認識のもと、ITTOは若手専門家や小学生を対象とした活動にも参加しました。
国際森林学生協会九州地方委員会(International Forestry Students' Association Kyushu Local Committee)が主催した若者向けサイドイベントでは、ITTO広報担当オフィサーであり元IFSA会員でもあるポーラ・サリグンバ氏が、学生時代の活動が森林分野および国際協力における自身のキャリア形成にどのような影響を与えたかを紹介しました。このセッションでは、若者が環境問題への関心を持つだけでなく、持続可能な森林経営や生物多様性保全に主体的に取り組むことの重要性が呼びかけられました。
ITTOはまた、「森を折る:折り紙で楽しむ熱帯の生物多様性」と題した体験型ワークショップを開催し、熊本市内の小学5・6年生44名が参加しました。東京大学折紙サークル「ORIST」の長山海澄氏の指導のもと、子どもたちは日本の伝統文化である折り紙を通じて熱帯林の野生生物について学び、創造性と環境教育を組み合わせた体験を楽しみました。さらに、ITTOブースも見学し、熱帯林の重要性や野生生物の生息地として果たす重要な役割など、熱帯林を保全する意義について考えました。
ITTOの活動紹介と新たなパートナーシップの構築
サミット期間中、ITTOはネイチャーテック展示エリアにブースを設置し、来場者を迎えました。来場者は、持続可能な森林経営、生物多様性保全、気候変動対策、そして合法かつ持続可能な木材バリューチェーンに関するITTOの取組について理解を深めました。
ITTOはまた、GREEN×EXPO 2027のプロモーション活動にも参加し、川口才文 財務・総務担当官が、他の参加団体の代表者とともに公式プロモーションイベントに出席しました。
今回のサミットは、ネイチャーポジティブな取組を推進する政府機関、企業、研究機関および国際機関とのネットワークを構築する貴重な機会となりました。

