ITTO-BMLEHウェビナー、チーク材生産の改善に向けた害虫管理手法を探る
2026年7月23日, 横浜
チークの人工林および天然林に被害をもたらす主要な害虫の効果的が防除は、特に小規模林業経営者における経済的損失の軽減と生産性向上に不可欠です。© ITTO
チーク人工林および天然チーク林に被害をもたらす主要害虫を効果的に防除することは、特に小規模林業経営者における経済的損失の軽減と生産性向上に不可欠です。チークに発生する害虫の科学的解明に取り組む専門家らは、ウェビナーで、研究とイノベーションが、インドおよびミャンマーにおけるチーク害虫の、より効果的かつ持続可能な管理手法の開発にどのように貢献しているかを紹介しました。
「チークプランテーションおよび天然林における害虫(Pest Insects in Teak Plantations and Natural Teak Forests)」と題して2026年7月9日に開催された本ウェビナーは、国際熱帯木材機関(ITTO)とドイツ連邦食料・農業・地域アイデンティティ省(BMLEH)が共同で開催する全12回シリーズの第9回目です。ウェビナーでは、インドのT.V.サジーヴ博士とミャンマーのザー・チー・フライン博士が講演を行い、タイ・カセサート大学のヨンユット・トリスラット教授が司会を務めました。
本ウェビナーは、ITTOが主導するプロジェクトの一環として実施されたもので、アジア太平洋地域および西アフリカにおいて、小規模林業経営者や森林に依存するコミュニティが経営するチークやその他の価値の高い樹種の人工林から、高品質な木材の生産を促進することを目的としています。
開会の挨拶で、ITTOプロジェクト・マネージャーのテトラ・ヤヌアリアディ博士は、植栽苗の品質不良、不適切な造林施業、市場やバリューチェーンの未整備に加え、昆虫害虫がチークの生産性を阻害する主要な要因であると述べました。これは特に、チークが経済的価値の高い在来樹種であるタイ、ミャンマー、インドおよびラオスにおける単一樹種人工林で顕著です。
インド・ケララ州におけるチーク人工林の害虫管理
インド・ケララ森林研究所(Kerala Forest Research Institute)のケララ州科学技術環境評議会(Kerala State Council for Science, Technology, and Environment)主席研究員であるサジーヴ博士は、南インド・ケララ州のチーク林で発生する4種類の主要害虫と、それらの個体数を抑制し、さらなる拡散を防ぐために実施されている管理手法について紹介しました。
サジーヴ博士は、チークスケルトナイザー(Eutectona machaeralis)は、葉脈を残してチークの葉を食害するガの一種ですが、防除は必要ないと説明しました。これは、この昆虫が落葉直前の葉を食害するため、チークの生産性に重大な経済的影響を及ぼさないためです。
一方、チークの苗木につく穿孔性害虫(Alcterogystia cadambae Moore)は、チークの幹に穿孔するため、クロルピリホスという殺虫剤を局所的に散布して防除しています。また、幹につく穿孔性害虫(Cossus cadambae Moore)については、幼虫が幹の内部に潜り込んでいるため薬剤が届かず、また天敵も存在しないことから、防除は行われていません。
サジーヴ博士によると、チークディフォリエーター(Hyblaea puera Cramer)はチークプランテーションにとって最も深刻な害虫です。この小型のガは、自然落葉が始まるまでに少なくとも3~6回、各回約2週間にわたり葉を食害します。樹齢3~9年のチーク人工林では、年間1ヘクタール当たり、最大3立方メートルの木材被害が生じる可能性があり、これは年間約7万5,000ルピー(約780米ドル)の損失に相当します。
サジーヴ博士は、チーク食葉虫の防除には核多角体病ウイルス(NPV)が利用されていると説明しました。これは、この害虫に対して高い効果を示す生物農薬であり、同世代内で感染が広がるだけでなく、卵を介して親から子へと伝播することもできます。
またサジーヴ博士は、「害虫は生まれるものではなく、作られるものです。」と述べました。天然林のチークでは害虫被害はほとんど発生せず、発生した場合でも散発的で、やがて自然に収束すると指摘しました。一方、チーク人工林のような単一樹種林では、害虫被害が生産性に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えばインドでは、チーク食葉虫が毎年定期的に大発生しています。
サジーヴ博士は最後に、害虫防除において自然の力を最大限に活用することの重要性を強調しました。「害虫を管理するには、自然に逆らうのではなく、自然とともに取り組む必要があります」と述べました。
ミャンマーにおけるチーク害虫に関する情報ギャップの解消
ミャンマー林業局森林研究所の副所長を務めるフライン博士は、ミャンマー・バゴー地域において、チーク人工林に発生する害虫とその天敵を体系的に記録する取組について紹介しました。
フライン博士によると、建築材や多用途木材として高い価値を持つチークは、英国による植民地統治時代以来、ミャンマーにおける重要な林産物となっています。しかし、その重要性にもかかわらず、チークに発生する害虫や、その天敵の存在に関する情報は十分ではありません。
フライン博士らが進めている研究は、この情報不足を解消することを目的としており、バゴー地域の若齢林および成熟林における主要害虫を特定するとともに、それらに対する効果的な防除手法の確立を目指しています。
調査では、雨季に46種の害虫と、それらの害虫の天敵19種が確認されました。フライン博士によると、調査地ではチークディフォリエーターとチークスケルトナイザーによる被害が特に多く確認されました。また、最も多く見られた害虫は、チークディフォリエーター、チークスケルトナイザー、およびレッドボーラー(Zeuzera coffeae)の3種でした。
現在進められている研究では、総合的病害虫管理(IPDM)を含むさまざまな防除手法について検討しています。IPDMは、機械的防除、生物的防除および化学的防除を組み合わせて、チークに被害を及ぼす病害虫の発生や拡散を防ぐ管理手法です。
最後にフライン博士は、本研究成果は、チークに発生する害虫とその防除方法に関する有益な情報を生産者へ提供し、将来にわたる持続可能なチーク生産の確保に役立つと述べました。
チーク害虫対策に向けた持続可能で自然に基づくアプローチ
チークから高品質な木材を生産するためには、収穫される木材の品質と量を大きく低下させる恒常的な害虫被害への対応が不可欠です。サジーヴ博士とフライン博士の発表は、この課題に対する正確で科学的な研究が、効果的でエビデンスに基づく解決策につながることを示しました。
両氏は、生物農薬の活用や害虫の天敵の利用など、自然界に既に存在する、あるいは自然から導き出せる解決策を重視することの重要性を強調しました。チーク害虫への対策として持続可能かつ自然に基づくアプローチを採用することは、小規模林業経営者が継続的に経済的利益を享受できるようにするだけでなく、環境への不要な負荷を最小限に抑え、さらなる問題の発生を防ぐことにもつながります。
