熱帯地域を守ることは、私たちの未来を守ること
2026年6月29日, 横浜
地表のわずか7%を占めるに過ぎない熱帯・亜熱帯雨林には、世界の生物多様性の50%と再生可能な水資源の50%が存在しています。© Chokniti Khongchum/Pond5
世界の陸地面積の約40%を占める熱帯地域は、生物多様性の維持や人々の生計の支援において極めて重要な役割を果たしており、今日私たちが直面するさまざまな開発・環境課題に対する有効な解決策を生み出す大きな可能性を有しています。
北回帰線と南回帰線の間に位置し、120を超える国々にまたがる熱帯地域には、世界で最も生物多様性に富む地域が存在し、陸上生物の80%、沿岸生態系に生息する海洋生物の95%を支えています。
地球表面のわずか7%を占める熱帯・亜熱帯雨林には、世界の生物多様性の50%と再生可能な水資源の50%が存在しており、世界全体の炭素除去量の60%を担うなど、気候の調節において重要な役割を果たしています。
熱帯生態系は、森林に依存する地域社会だけでなく、森林バリューチェーンのさまざまな段階に関わる人々にとっても重要です。清浄な水、木材やその他の林産物、医薬品や産業用途の原材料など、豊富な資源を地域社会にもたらしています。世界人口の約40%に当たる33億人が熱帯地域に居住しており、その中には多くの低所得層が含まれています。この割合は、今後数十年で50%に達すると予測されています。また、世界銀行の推計によると、世界人口の8.5%が極度の貧困状態にあり、その約85%は熱帯地域で暮らしています(ジェームズ・クック大学)。
熱帯地域は、経済的・社会的・生態学的価値の面で世界でも最も重要な地域の一つである一方で、人為的・環境的圧力が複合的に及ぶことによって最も脆弱な地域の一つであるとも言えます。
2014年には、オーストラリアのジェームズ・クック大学が世界各地の研究機関とともに『State of the Tropics Report』の初版を公表し、環境・社会・経済に関する複数の指標を用いて熱帯地域の現状を評価しました。
同報告書では、熱帯生態系は他の生態系と比較して高い回復力を示しているものの、急速な人口増加や経済発展による圧力が、生態系の健全性を維持し、継続的に生態系サービスを提供する能力を低下させていると指摘しています。.
熱帯地域の重要性を賞賛
この画期的な報告書は、熱帯地域の重要性と直面する課題について理解を深めるとともに、地域レベル、広域レベル、さらには世界レベルでの環境政策や意思決定において、熱帯生態系が果たす重要な役割を明らかにしました。
2016年、国連は6月29日を「国際熱帯デー(International Day of the Tropics)」に制定しました。この日は、熱帯生態系のかけがえのない貢献を称えるとともに、その固有の価値と脆弱性について理解を深める機会となっています。
国際熱帯木材機関(ITTO)は、持続可能な森林経営と貿易の多様化を通じて、とりわけ森林を中心とする熱帯生態系の保全を一貫して先導してきました。ITTOの使命は、持続可能な資源利用と世界貿易の健全な発展を促進することにより、森林減少や森林の健全性に関するリスクを減らすことにあります。
世界が国際熱帯デーを迎えるにあたり、ITTOは、経済発展は必ずしも環境に大きな負荷を与えるものであってはならないという考えを改めて表明します。ITTOは、国際協力の推進、地域社会の公平な参加、森林景観回復(FLR)、そして強靱な生計手段の構築を促進するさまざまな取組を通じて、環境を保全しながら経済目標を達成できることを示しています。
持続可能な熱帯林経営
森林減少などにより生態系の健全性が脅かされ、地域社会が熱帯林資源を持続的に利用する能力が低下している地域において、ITTOは森林景観回復(FLR)を、生態系の機能を回復させるとともに、森林に依存する人々に経済的な恩恵をもたらし続けるための有効な手法として推進しています。
アンゴラでは、ITTOは農業林業省(当時)と協力し、南部地域のミオンボ林の劣化に対応するため、FLRの考え方を導入する取組を実施しました。女性や若者を含む地域住民が参加するコミュニティ林業プログラムを試行し、食料安全保障や森林に依存した生計を脅かす急速な森林減少への対応を進めました。
また、ペルーで実施されたITTO資金提供プロジェクトもFLRを基盤としており、森林資源の現状や利用状況に関する知識の創出と管理の改善を通じて、地域住民の森林からの所得向上を目指しています。このプロジェクトは、行政機関や民間関係者による森林経営、保全、再生の取組も強化するものです。
ITTOは、さまざまな森林産品における合法かつ持続可能なサプライチェーンの構築を支援する多くのプロジェクトを実施してきました。例えば、「タイにおける木材製品の持続可能な国内消費の促進」プロジェクトでは、タイ国内の木材・木材製品市場およびサプライチェーンの強化を目指しています。ITTOはカセサート大学と共同で同取組を実施しています。また、木材の合法性検証に関する政策の改善、木材製品のイノベーションに関する能力強化、持続可能な木材サプライチェーンの構築のための木材産業と植林者との連携促進など、目標達成のために様々な手法を採用しています。
熱帯地域の未来を守るために
40年にわたるITTOの取組は、世界各国のドナーやパートナーからの支援によって支えられ、経済成長と熱帯生態系の長期的な健全性の確保を両立させることが可能であることを示しています。
国際熱帯デーは、熱帯地域が本来有する豊かさに目を向けるだけでなく、今そこに存在する自然の驚異を将来にわたって守るための持続可能な道筋を見出すうえで、私たち一人ひとりが重要な役割を担っていることを改めて認識する機会でもあります。
「熱帯生態系、とりわけ熱帯林は、私たちに計り知れない価値をもたらしています。私たちの生活を支えるあらゆる資源は、熱帯地域の驚くべき生態系と豊かな生物多様性から生み出されています。」とシャーム・サックルITTO事務局長は述べました。
「しかし、私たちには、現在享受している恩恵を将来の世代にも引き継ぐ責任があります。」とサックル事務局長は続けました。「私たちは、自然との相互依存という基本的な現実を重視し、熱帯林の健全性を守るために、さまざまな関係者と連携し、全力で取り組んでいきます。」
「熱帯地域の長期的な持続可能性を確保することは、私たち自身の未来を守るために不可欠です。」とサックル事務局長は加えました。

