地域社会へのインセンティブとエンパワーメントが森林景観回復の成功の鍵

2026年6月1日, バリ

テトラ・ヤヌアリアディITTOプロジェクトマネージャーは、東南アジアにおける森林景観回復の可能性について講演し、森林減少や森林劣化が進んだ地域において、生態系の健全性回復と人々の福祉向上を同時に実現できるアプローチであることを強調しました。 © EU TAF-GTEI

東南アジア諸国が野心的な新たな植林イニシアティブの実施を検討する中、ITTOの職員は、森林景観回復(FLR)プロジェクトの長期的成功には、地域社会へのインセンティブとエンパワーメントが不可欠であると述べました。

ITTOプロジェクトマネージャーのテトラ・ヤヌアリアディ氏は、2026年5月12日から13日にインドネシア・バリで開催された「ASEAN10億本植樹プログラム及びその実施計画に関する首脳宣言策定第1回ワークショップ」において講演を行いました。

同氏は、地域におけるFLRの可能性について発表し、FLRの背景や基本原則に加え、熱帯林の再生および持続可能な経営に関するITTOの幅広い取組から得られた教訓や、長期的に成功する回復プロジェクトに必要な条件について説明しました。

ヤヌアリアディ博士は、FLRが、森林減少や森林劣化が進んだ地域において、生態系の健全性回復と人々の福祉向上を同時に実現できるアプローチであることを強調しました。このアプローチの基盤となる原則には、ステークホルダーの強力な参加と関与、さらに地域の状況や変化する環境に応じて慎重に施策を作り上げることが含まれています。

ITTOは、総額約4億3,000万米ドル規模、1,200件を超えるプロジェクトを通じて、熱帯地域における森林の回復および持続可能な経営について豊富な経験を有しています。そこから得られた知見は、2020年発行の「熱帯地域における森林景観再生のためのガイドライン」(Guidelines for Forest Landscape Restoration in the Tropics)を含むITTOの幅広い技術ガイドライン集として整理され、無償公開されています。

ヤヌアリアディ博士は、FLRが現在進行中の森林減少や森林劣化を抑制し、温室効果ガス排出や気候変動への対策に大きく貢献するとともに、生物多様性保全と持続可能な開発の双方を促進する役割を果たしていると強調しました。

また、FLRの機会は、劣化した森林地、二次林、そして劣化した原生林に集中している場合が多いと指摘し、こうした取組は、東南アジア諸国のみならず他地域の国々にとっても、国内外の政策目標達成を支える大きな力となり得ると述べました。

ITTOは、熱帯地域における森林回復および持続可能な森林経営について数十年にわたる豊富な経験を有しており、その知見は技術ガイドライン集として整理され、無償公開されています。 © Ramon Carrillo/ITTO

ヤヌアリアディ博士は、関連するITTOプロジェクトが、森林景観回復(FLR)が重要課題への対応に有効であることを意思決定者に示していると述べました。アグロフォレストリー・システムや生態系回復への補償など、持続可能な生計向上につながる要素を組み込むことは、地域社会がFLR活動に参加するための重要なインセンティブになるとしています。

またITTOは、女性や若者を含む関係者の能力を、成功かつ持続可能なFLRに必要な水準まで高め、プロジェクトの効果を十分に発現させるには、通常の3年間のプロジェクト期間を超える時間が必要であると説明しました。

「地域社会は、自分たちが関わった森林回復の成果を実際に目にしたいと考えています。その成果は、プロジェクト終了から長い時間を経て現れるものです。」とヤヌアリアディ博士は述べました。

さらに同博士は、FLRを強化するために、今後さらなる研究や政策開発が必要な分野として、地域主体や非国家主体をより包括的に取り込むアプローチ、社会生態学的課題とトレードオフを一体的に考慮すること、森林関連政策全体へのFLR原則の組み込み、能力開発プログラムの拡充、および強力な公平性確保措置の導入などを挙げました。

10億本植樹イニシアティブは、2025年10月に開催された第47回ASEAN農林大臣会合において、地域の森林保全、気候変動対策、コミュニティのエンパワーメントに対する重要な貢献として歓迎されました

同会合では、ASEAN加盟国すべてに対し、地域全体の目標達成を支援するための国家行動計画の策定と、進捗状況を把握するためのモニタリング・報告体制の強化が奨励されました。

ヤヌアリアディ博士は、ASEAN10億本植樹イニシアティブ推進の可能性を探るため、地域の関係者らと議論を行いました。 © EU TAF-GTEI

首脳宣言策定に関する本ワークショップは、ASEAN事務局および欧州連合(EU)資金によるグリーン・チーム・ヨーロッパ・イニシアティブ技術支援ファシリティ(TAF-GTEI)によって開催されました。