森林から高層建築へ:木材利用の価値がさらに高まる

2026年5月20日, ニューヨークシティ

国連森林フォーラム第21回会合(UNFF21)のITTO共催のサイドイベントで、シャーム・サックルITTO事務局長は、合法かつ持続可能な伐採は森林破壊ではないという明確なメッセージを発信していく必要性を強調しました。© Soomin Lee/ITTO

熱帯林から都市の高層ビルに至るまで、持続可能な木材は単なる林産物ではなく、気候変動対策、経済成長、そして循環型バイオエコノミーを支える重要な存在として、ますます注目を集めています。

国連森林フォーラム第21回会合(United Nations Forum on Forests: UNFF21)のサイドイベントでは、各国政府、国際機関、産業界のリーダーらが国連本部に集まり、持続可能な木材バリューチェーンを通じて、責任ある森林経営と、エンジニアードウッドや近代的な木造建築といった高付加価値製品をどのように結びつけていくかについて議論しました。

このイベント「持続可能な木材バリューチェーンの強化:市場情報と高付加価値利用を繋ぐ(Empowering Sustainable Timber Value Chains: Bridging Market Intelligence and High-Value Utilization)」は、国際熱帯木材機関(ITTO)、韓国山林庁(Korea Forest Service: KFS)、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)、国連森林フォーラム(UN Forum on Forests: UNFF)が共催したもので、持続可能なかたちで経営された森林が、生計向上、地方経済の強化、そして将来に向けた低炭素資材の供給にどのように貢献できるかが紹介されました。

ITTOのシャーム・サックル事務局長はモデレーターを務め、「持続可能なかたちで経営された森林と木材製品は、世界的な気候目標の達成に不可欠です。」と述べるとともに、合法かつ持続可能な伐採は森林破壊ではなく、持続可能な森林経営に基づく自然で再生可能な営みであるという明確な認識を広めていく必要性を強調しました。

議論の冒頭では、共催機関の代表者らが、木材バリューチェーンの環境面・経済面での潜在力を最大限に引き出すためには、より透明性が高く、予測可能で、イノベーションを重視したものにしていく必要があると強調しました。合法性確認システム市場情報プラットフォームから、高付加価値のエンジニアードウッド製品や木造高層建築に至るまで、参加者は各国が持続可能な開発の中で木材の役割をどのように再定義しているかを紹介しました。

各国の登壇者は、責任ある森林経営と、エンジニアードウッドや近代的な木造建築といった高付加価値製品を結びつける持続可能な木材バリューチェーンについて議論しました。© Soomin Lee/ITTO

グアテマラ:森林・雇用・ガバナンス

グアテマラ国立森林院(National Forest Institute: INAB)のマリオ・レネ・サラサール・アラナ氏は、持続可能な林業が自然保全と経済成長の双方を推進できることを紹介しました。

グアテマラの林業部門は国内総生産(GDP)に大きく貢献し、45万人以上の雇用を支えるとともに、持続可能な貿易や違法伐採対策を通じて森林減少率の低下とガバナンス強化を実現しています。同氏は、森林・産業・市場の強固な連携が、生産国による国際貿易要件への対応や、持続可能な伐採に対する社会理解の向上につながると強調しました。

ITTO:透明性と合法・持続可能なサプライチェーン

ITTOのモハメド・ヌルディン・イドゥリス氏は、木材追跡技術、合法性確認システム、世界木材指標(Global Timber Index: GTI)など、市場への信頼性と透明性を高めるツールについて紹介しました。

ITTOの合法かつ持続可能なサプライチェーン(LSSC)プログラムは、各国による持続可能な木材利用の推進、国内市場の強化、企業間連携の改善を支援しています。具体例として、グアテマラの丸太材積計算アプリ「CUBIFOR」や、EU森林減少防止規則(EUDR)を含む近年の木材貿易規制の地理情報要件に対応したパナマの木材追跡システムなどが紹介されました。

マレーシアとエンジニアードウッド製品

マレーシア・プランテーション産業・商品省のエメリア・グング氏は、従来型の木材・木製品輸出から、合法性と持続可能性が確認されたエンジニアードウッド製品(EWP)への転換について紹介しました。これは、バリューチェーンのより高付加価値への移行を反映しています。

イノベーションと高付加価値製造に注力することで、マレーシアは木材を単なる原材料ではなく、持続可能性への需要に応えつつ競争力を高める現代的な建築資材として位置づけています。.

森林から高層建築まで、登壇者らは、持続可能な開発の未来は、森林・市場・イノベーションをより強く結びつけることにかかっているとの認識で一致しました。© Soomin Lee/ITTO

スウェーデン:木造高層建築の推進

スウェーデン森林庁(Swedish Forest Agency)のビョルン・メルケル氏は、政策改革によって木材利用が大きく変化した事例を紹介しました。

同氏によれば、旧来の防火規制は100年以上にわたり木造建築の革新を妨げていましたが、性能規定化改革によって、近代的な木造高層建築への道が開かれました。スウェーデンの事例は、持続可能な森林経営と規制改革を組み合わせることで、地方の木材バリューチェーンを都市部へと拡大し、建築物における長期的な炭素貯留を実現できることを示しています。

メルケル氏は「木材は真の気候変動対策となり得ます。ただし、それは持続可能な森林経営に基づいている場合に限られます。」と述べました。

韓国:再造林から木材イノベーションへ

韓国山林庁のイ・ソンジン氏は、1970年代には荒廃していた国土が、50年にわたる継続的な再造林によって豊かな森林へと再生した韓国の歩みを紹介しました。

現在、韓国は新たな課題に直面しています。それは、高齢化した森林を適切に管理するとともに、木材伐採に対する社会認識を変えていくことです。同氏は、持続可能な伐採は森林の健全性維持と炭素循環の再生に不可欠であると強調しました。

認識を変え、市場を変革する

すべての発表を通じて浮かび上がった共通テーマは、あらゆる伐採を森林破壊とみなす旧来的な認識を乗り越える必要性でした。

持続可能な森林経営、透明性の高い取引システム、高付加価値の木材利用を組み合わせることで、各国は木材を「低く評価された資源」から、「価値ある再生可能で気候変動に配慮した資材」へと転換することができます。