生計向上・炭素貯留・産業発展につながる持続可能な木材利用の推進
2026年5月12日, 横浜
ITTOは、持続可能な森林経営(SFM)というより広い枠組の中で、持続可能な木材生産を推進するための実践的アプローチを検討するフォーラムに参加しました。© ITTO
森林は国際的な政策議論の中核として存在し続けており、その重要性は、2025年11月にブラジル・ベレンで開催されたCOP30気候会議においても強調されました。
こうした流れを受け、ITTOは、国連森林フォーラム(United Nations Forum on Forests: UNFF)および韓国山林庁( Korea Forest Service: KFS)が主催したウェビナーに参加し、持続可能な森林経営の枠組みにおける持続可能な木材生産の推進に向けた実践的なアプローチについて議論しました。
イベントでは、議論の進行を務めたITTOプロジェクトマネージャーのテトラ・ヤヌアリアディ氏のもと、世界各国の専門家が集まり、各国の経験を共有しました。登壇者らは、機会を拡大し、国際的な林産物貿易を支えるためには、木材セクター全体での連携強化が必要であると強調しました。
フォーラムは森林に対する世界的な認識の変化も反映しています。森林はもはや単なる生態系としてだけでなく、生計向上や循環型バイオエコノミーを推進する戦略的資産として位置づけられつつあります。
持続可能な森林経営における持続可能な木材利用
セッション冒頭で、UNFF事務局長のジュリエット・ビャオ氏は、国連森林戦略計画(United Nations Strategic Plan for Forests)の実施において進展が見られる一方で、世界森林目標(Global Forest Goals)の達成にはさらなる努力が必要であると述べました。
自然に基づく解決策(Nature-based Solutions)の重要な推進要素として位置づけられる持続可能な森林経営(Sustainable Forest Management: SFM)は、国連森林戦略計画(United Nations Strategic Plan for Forests)とITTOの使命の双方の中核にあります。森林が再生可能資源を継続的に供給できるようにすることで、SFMは世界中の何百万もの人々の生計を支えています。その中で、持続可能な木材利用(sustainable wood use: SWU)は、経済発展、産業化、気候変動対策を調和させるための重要な手段として注目されています。
持続可能な木材利用の推進に対するITTOの貢献
持続可能な木材利用の推進は、ITTOの活動の中核をなすものです。日本政府の支援を受けたプロジェクトを通じて、ITTOは加盟国における木材・木材製品の国内市場強化、雇用創出、付加価値産業の育成を支援してきました。
インドネシア、タイ、ベトナムで完了したプロジェクトでは、木材利用の拡大が経済活動の活性化や産業発展につながることが示されました。現在も、マレーシアやインドなどで進行中のプロジェクトにおいて、能力構築、マーケティング戦略の改善、政策・規制枠組の強化を通じて、それらの努力がさらに進められています。
また、持続可能な世界のための持続可能な木材(Sustainable Wood for Sustainable World: SW4SW)イニシアティブや、ITTOの「合法かつ持続可能なサプライチェーン(LSSC)プログラム」、さらに「グローバル・リーガル&サステナブル・ティンバー・フォーラム(GLSTF)」などを通じた普及啓発活動に加え、ITTOはアジア太平洋林業週間やCOP30などの多国間フォーラムにおいて、バイオエコノミーや持続可能な木材利用に関する議論を行うイベントやフォーラムを、民間セクターを含むパートナーと連携して開催しています。
各国の経験と実践的アプローチ
ITTO加盟国の専門家らは、SFMとSWUが実際にどのように実施されているかについて紹介しました。
ブラジルの事例では、持続可能な木材利用と森林経営の推進におけるデータとイノベーションの役割が強調されました。
ブラジル森林局(Brazilian Forest Service)のクラリッセ・エリザベス・フォンセカ・クルス氏は、SNIFデータベースや国有林登録制度などのデジタルプラットフォームが、透明性向上と森林ガバナンス強化に寄与していると説明しました。また、国家森林開発基金や林産試験場などの仕組を通じて、非木材林産物(NTFPs)の生産支援、付加価値向上、女性や先住民族への機会拡大が進められていることも紹介されました。
ガボンの巡回大使オレリー・フロール・クンバ・パンボ氏は、世界的な政策プロセスとコンゴ盆地諸国との連携強化の必要性を訴えました。同氏は、ガボンが持続可能な林業に関する法的枠組を整備し、地域で初めて国家認証制度を実施した国となったことを紹介しました。これらの取組は、雇用創出や気候レジリエンスの強化、長期的な森林保全に貢献しています。
他の登壇者は、広報活動や啓発事業に関するアプローチについて議論しました。
オーストリア農林業・気候・環境保護・地域・水資源管理省(Ministry of Agriculture, Forestry, Environmental and Climate Protection)のゲオルク・ラッポルト氏は、一般市民の認識の重要性を指摘しました。オーストリアでは森林の生態系サービスに対する認知度は高いものの、森林が44万人以上の雇用を支えているという経済的役割については十分理解されていないと述べました。最近ウィーンで開催された国主導イニシアティブなど国内外の取り組みを通じて、森林を基盤とする循環型バイオエコノミーと持続可能な木材利用の理解促進が図られています。
韓国山林庁のソン・ヒナム氏は、韓国における伐採に対する社会的認識への対応の重要性を強調しました。持続可能な森林経営と木材利用の利点について、分かりやすく説明し信頼を築くことが必要であると述べ、SW4SWのような取り組みが、生計向上、産業発展、炭素貯蔵に対する持続可能な木材利用の貢献を知り、理解してもらう上で重要な役割を果たしていると説明しました。
カナダ林産物協会(Forest Products Association of Canada)のケイト・リンゼイ氏は、将来を見据えた枠組づくりの重要性を紹介しました。カナダは「モントリオール・プロセス」への参加を通じて、持続可能な森林経営に関する基準と指標の整備に貢献しており、これらは現在の認証制度や業界基準の基盤となっています。また、森林産業がバイオエコノミーや森林火災対策に果たす役割についての普及活動も行われ、よりバランスの取れた理解促進に寄与しています。
森林を基盤とするバイオエコノミーの可能性拡大
森林はすでに多様な財・サービスを提供しており、生産国の経済に大きな影響を与えています。この点は、「森林と経済」をテーマとした2026年国際森林デーでも重視されました。
国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization of the United Nations: FAO)のスヴェン・ヴァルター氏は、最近のFAO報告書を引用し、2022年時点で森林セクターが世界で4,200万人を雇用しており、そのうち1,100万人が女性であると紹介しました。さらに、木材・パルプ・紙製品の輸出額は2024年に4,860億米ドルに達しており、森林由来製品への需要は今後も増加すると見込まれています。同時に、非木材林産物(non-timber forest products: NTFPs)は、特にグローバルサウスにおいて、所得源の多様化や雇用創出の重要な機会となっています。
木造建築は特に有望な分野の一つです。建築分野における木材利用の拡大は、特にアジアやアフリカの急速な都市化が進む地域において、排出量の削減、革新的なデザインの促進、そして循環型経済の原則の推進につながります。
持続可能な木材利用への理解と普及を拡大することは、熱帯木材および林産物貿易の多様化を進める上でも不可欠です。持続可能な森林から生産された合法木材の利用促進を通じて、ITTOは引き続き、強靭で包摂的な森林セクターの実現に取り組んでいきます。


