世界野生生物の日2026:薬用・芳香植物の保全に向けたITTOの取組からの知見

2026年3月3日, 横浜

創立40周年を迎える中、ITTOは、野生植物、とりわけ、薬用・芳香植物のこれまで見過ごされがちであった役割に光を当てます。それらの植物には健康効果があり、世代を超えて地域社会を支えてきました。

多くの人は、野生生物といえば森林、サバンナ、海洋に生息する動物を思い浮かべます。しかし、それほど目立たないものの同様に重要なのが野生植物です。野生植物は世界の生物多様性の不可欠な一部であり、人類の生存の礎でもあります。ITTOは、創立40周年を迎える中、世代を超えて地域社会を支えてきた健康に役立つ特性を有する薬用・芳香植物を中心に、これまで十分に注目されてこなかった野生植物の役割に改めて焦点を当てています。

2026年3月3日の世界野生生物の日は、野生生物を保護することが、熱帯地域における健康、文化、そして生計を支える植物種を守ることも意味するという事実を認識する、よい機会となります。

薬用・芳香植物は近隣に暮らすコミュニティにとって不可欠であるだけでなく、食品から医薬品、飲料から香水に至るまで、さまざまな産業の原材料として重要な役割を果たし、地方、国家、地域経済を支えています。© seksan44, Pond5

森の中の薬局

このような植物種、すなわち薬用・芳香植物(MAPs)に注目し、世界野生生物の日を主導するワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)は、2026年のテーマを「薬用・芳香植物:健康、伝統、生活の保全」と定めました。

この言葉は、とりわけ森林に依存するコミュニティにとってのMAPsの広範かつ多面的な重要性を的確に表しています。これらのコミュニティは、さまざまな植物種が人間および生態系の健康にもたらす恩恵を長年認識してきました。その知識は文化的・経済的生活の基盤となり、ウェルビーイングを支え、伝統的慣行や生計を裏打ちしてきました。

実際、グリブ=ファキムによる2006年の研究では、特定の植物種がその健康効果により古来より伝統医療体系の基盤を形成し、今日に至るまで患者の治療に用いられていること、さらに新たな医薬品化合物探索においても重要であり続けていることが論じられています。

薬用・芳香植物は近隣に暮らすコミュニティにとって不可欠であるだけでなく、食品から医薬品、飲料から香水に至るまで、さまざまな産業の原材料として重要な役割を果たし、地方、国家、地域経済を支えています。

さらに、薬用・芳香植物は生物多様性を促進し、土壌の健全性を維持するための必須栄養素を提供することで、生態系の健全性にも寄与しています。また、多様な生物に生息地や食料を提供することで、生態系の均衡維持にも貢献しています。

しかし、生息地破壊、過度の採取、気候変動などの要因により、これらの貴重な植物種の存続は脅かされ続けており、その持続可能な利用と保全の緊急性が強調されています。

ITTOプロジェクトでは、ガーナに存在する300種以上の薬用植物に関する先住民の知識を記録し、地域名、治療対象となる主な疾病、種の豊富度、先住民の栽培技術に関する貴重な情報源を提供しました。© S. Sparkler B, CSIR_FORIG

MAPsの現状:診断

いかなる治療の旅路においても、最初の重要な一歩は状態と原因を理解することです。信頼できる情報の不足は誤診や治療の長期化につながります。

ガーナでは、特に資源に乏しい地域においては近代的医療制度へのアクセスが困難かつ高額であるため、人口の約65%から70%が依然として伝統的な薬用植物での医療に頼っています。

現代医療へのアクセス不足を背景に、特に周辺地域の人々は伝統的な薬用植物での医療を第一選択の治療手段としてきました。そのため、現在利用可能な薬用植物、特に圧力にさらされやすい種について包括的に記録する必要性が高まっています。

これを受けて、ITTOの支援の下、ガーナ林業研究所は2008年に「ガーナの森林から得られる薬用植物の保全と活用」(Conservation and Utilization of Medicinal Plants in Ghanaian Forests Fringe Communities)プロジェクトを主導しました。

本プロジェクトは、MAPsの保全および持続可能な利用戦略の策定を目的に、ガーナの生態区分にまたがる選定された森林周辺地域におけるMAPsの分布と利用状況を調査しました。

プロジェクトでは、関係者と協力し、推定1,000種以上存在するガーナの薬用植物のうち394種について先住民の知識を記録することに成功し、地域名、主な治療対象疾病、種の豊富さ、先住民の栽培技術などに関する貴重な情報源を提供しました。

これらの成果は、ガーナにおけるMAPsの現状をより明確に示し、既存および将来の保全活動や、脆弱な種・商業的圧力下にある種・絶滅危惧種の持続可能な栽培および採取促進のための具体的な基盤を提供しています。

同様の取組は他国でも実施されています。メキシコのユカタン半島での「マヤ・トレイン・プロジェクトにおける生物多様性の持続可能な利用を通じた、ユカタン半島の熱帯林におけるマヤ先住民族コミュニティのレジリエンス強化」(Strengthening the Resilience of Indigenous Mayan Communities in Tropical Forests of the Yucatán Peninsula through the Sustainable Use of Biodiversity in the Context of the Maya Train Project)プロジェクトでは、薬用植物を含む先住民知識の記録が行われました。

本プロジェクトはメキシコ国立自治大学およびメキシコの国家林業機関との連携で実施され、薬用植物種およびその利用の保全における先住民族の不可欠な役割、ならびにその貴重な伝統知識を将来世代に継承する重要性を強調しました。

インドネシアにおけるITTOプロジェクトは、東カリマンタンの地域経済における非木材林産物の貢献を高めることを目的に、特に薬用植物の持続可能な小規模生産を促進するため、マルチステークホルダー・モデルを採用しました。© Intu Boedhihartono, ITTO

私たちが自然を癒やす番

MAPsはガーナ経済に地域取引を通じて大きく貢献していますが、環境破壊や持続可能な採取・経営に関する科学的知識の不足に対処しなければ、森林内の特定種の減少と地域コミュニティの生計への影響は避けられません。

森林コミュニティは、これらの脅威にさらされた植物種の持続可能な生産、利用、保全を推進する代替戦略の実施において中心的役割を果たしています。

そのため本プロジェクトは、家庭菜園における薬用植物の栽培化、天然更新技術、劣化生息地の回復を目的とした育林技術に関する研修を通じ、保全実践の実施を支援しました。同様の取組はメキシコのプロジェクトでも実施されました。

また、インドネシアの「コミュニティ参加型アプローチに基づく選定非木材林産物の貢献評価」(Assessing the Contribution of Selected Non-timber Forest Products Based on Community Participation Approach to Support Sustainable Forest Management)プロジェクトでは、東カリマンタン経済への非木材林産物の貢献拡大を目的に、特に薬用植物の持続可能な小規模生産促進に焦点を当て、マルチステークホルダー型モデルが採用されました。

本プロジェクトはITTOの支援のもと、ボゴール農科大学およびインドネシア林業研究開発庁により実施され、栽培体系の確立、製品加工、小規模事業および事業戦略の策定、販売ネットワークの構築に至るまで、プロジェクト全体にわたり地域社会の関与を重視しましていました。

これらの取組は、特に脅威にさらされたMAPの保全において、森林依存型コミュニティが持続可能な森林経営および保全活動の中核を担っていることを示しています。

シャーム・サックルITTO事務局長は次のように述べました。「地域コミュニティを巻き込み、彼らに利益をもたらすことが、効果的な保全活動につながります。彼らは持続可能な森林経営の成功には不可欠であり、薬用・芳香植物のみならず、他の脅威にさらされた種の適切な利用と保全にも極めて重要です。」

「私たちは長い間、自然の癒やしと回復の力から恩恵を受けてきました。今こそ、私たちが自然の健康を取り戻す番です。」 

ITTOは、保護地域の保全および管理の推進、熱帯林の生物多様性をさまざまな脅威から守る取組、保全知識および持続可能な天然資源利用に関する地域の能力向上を促進するプロジェクトを継続的に支援してきました。© S. Sparkler B, CSIR_FORIG

前向きな見通し

これらすべてのプロジェクトから得られた教訓は、前向きな見通しを裏付けています。MAPsに対する継続的な圧力にもかかわらず、その影響を緩和するために必要な資源と手段はすでに存在しています。

ITTOは、保護地域の保全および管理の推進、熱帯林の生物多様性をさまざまな脅威から守る取組、保全知識および持続可能な天然資源利用に関する地域の能力向上を促進するプロジェクトを継続的に支援してきました。

世界野生生物の日を祝うにあたり、私たちは、地域社会の経験と努力は、長期的な回復に向けた取組がすでに意義ある成果を生み出していることに思いを寄せます。創立40周年を迎えるITTOは、その活動が#BeyondTimber(木材を超えて)であること、すなわち生態系、生計、人間のウェルビーイングを支える野生生物の重要な役割を包含していることを示しています。この基盤が整った今、これらの取組を大規模に展開し、完全かつ持続的な回復を目指す十分な理由があると言えるでしょう。