ゼ・メカ ITTO事務局長開会の辞ならびに第43回理事会開会式ビデオ

2007年11月5日, 横浜


エマヌエル・ゼ・メカ国際熱帯木材機関事務局長による開会の辞

議長殿
大臣各位
横浜市長殿
閣下殿
外交団各位
代表団各位
ご来場の皆様

国際熱帯木材機関第三代事務局長として初めて皆様に演説をさせていただく機会をいただき、大変光栄に存じております。まず初めに議長殿、そして副議長殿に歓迎の意を表したいと思います。そしてお二人と共にすべての代表団の皆様に歓迎の言葉を申し上げたいと思います。

皆様をこのITTO本部にお迎えできますことは大きな喜びであります。私共は必ずや皆様に「我が家から遠く離れた我が家」にいるようにくつろいでいただけるものと確信しております。なぜならこの慣れ親しんだ横浜の地は、私共のホストである日本政府そして横浜市が変わらぬ温かいご支援を注いでくださっているからです。その証として、本日、宇野治外務大臣政務官、中田宏横浜市長にご列席を賜っております。ホストの皆様に私共の深い感謝の念を捧げたいと思います。

議長、
本日はまた、Elvis Ngolle Ngolleカメルーン森林野生動物大臣、Daniel Ahizi Akaコートジボワール環境森林大臣、Emile Doumbaガボン森林経済・水・漁業・国立公園大臣、Esther Obeng Dapaahガーナ土地森林鉱物大臣にもご列席いただいております。皆様にも温かい歓迎の意を表すとともに、皆様の賢明なご意見を頂戴するのを楽しみに致しております。またCoosje Hoogendoorn国際竹藤ネットワーク(INBAR)会長、Ali Mchumo一次産品共通基金会長、Don Koo Lee国際森林研究機関連合(IUFRO)会長にもご列席いただいております。ITTOと皆様の組織との協力を一層強めていくことを私共は楽しみにしております。

議長、
今年5月に行われた理事会以降、ITTOはITTO 2006-2007二ヶ年ワークプログラムを完了するため懸命に作業しておりました。加盟国の皆様は、このプログラムが非常に野心的なものであったことを思い起こされるでしょう。マノエル・ソブラル・フィーリョ前事務局長の効果的リーダーシップの下で、ワークプログラムに特定されている活動のほとんどが満足のいくレベルで実行されましたことを謹んでご報告申し上げます。詳細な報告書は議題15(a)の下で理事会に提出される予定です。しかしながら、私はここで、過去数ヶ月の間に行われた戦略的に最も重要な活動についてご紹介申し上げたいと思います。私共がいかに多忙であったかがお分かりいただけるでしょう。

天然熱帯林への投資促進作業の一環として、ITTOは2006年4月、メキシコのカンクンにおいて国際熱帯林投資フォーラムを開催し、天然熱帯林への個人投資または機関投資の魅力を改善させる方法について模索しました。この初の世界会議の後、3つの地域レベルフォーラムが開かれました。1つは2006年11月にブラジルのクリチーバで、1つは2007年8月にタイのバンコクで、そして3つ目もまた8月にガーナのアクラで行われました。特にガーナでの会議は同地域各政府からハイレベルな支援と参加を得ました。

ITTOは今年5月にはドイツのハノーバーにおいて、FAOならびにドイツ連邦経済技術省の協力の下で木質バイオエネルギーに関する国際会議を招集しました。この会議は、エネルギーの安全保障、気候変動、資源の利用効率に対する懸念を背景とし、エネルギー生成のための伐採および木工残余物ならびに専用バイオエネルギー木材プランテーション利用への関心の高まりの中で開催されました。

この会議により、持続可能な森林経営を基礎として開発された木質バイオエネルギーが、多くのITTO生産加盟国を含む各国に、そのエネルギー安全保障を改善し、またその他木材系産業の効率を改善する機会を提供するとともに、全体的な気候変動緩和戦略の一部として機能することが確認されました。

今年9月にITTOはINBAR、FAOならびに中国林業科学研究院の協力の下で、中国の北京にて、熱帯非木材林業製品およびサービスの開発を促進するための国際会議を開催開しました。中国はNTFPの利用において数多くの最も劇的な開発の先端に立っている国です。新たな国際熱帯木材協定の発効を控え、NTFPおよび森林サービスの促進におけるITTOの役割を強化することは、恐らく加盟国の望むところでありましょう。

議長、
ITTOは「絶滅のおそれのある種の国際取引に関する条約 (CITES)」事務局およびその締約国と緊密な協力を継続し、脅威に晒されている、また絶滅のおそれのある熱帯樹種の取引を取り締まる規制の効果的実施に努めています。ITTOは今年6月にオランダ、ハーグで行われた第14回CITES締約国会議に全面的に参加し、サイドイベントも行いました。

ITTOはまた9月にクアラルンプールでUNEP-WCMCにより招集された「国際取引における木材種の持続可能な利用のための戦略」に関する会議にも参加しました。この会議はアジアにおける保護の必要性のある樹種を特定し、適切な行動を取るために行われたもので、CITESリスト記載への提言の可能性を含むものでした。

さて、私たちはラテンアメリカ担当地域コーディネータを雇用し、CITESと協力するための事務局の能力を拡張したことを謹んでご報告申し上げます。これは大規模なCITES能力構築プログラムの一環であり、残りの2つの地域についても近日中に任命を行いたいと考えております。

2007年7月には、ITTOはブラジルのリオ・ブランコ市において、権利と資源イニシアチブ(Rights and Resources Initiative)、コミュニティ林業世界連合(Global Alliance of Community Forestry)、国際自然保護連合(IUCN)などのパートナーの協力の下で、コミュニティ森林経営および事業体に関する国際会議を招集しました。

この会議は世界中のコミュニティ森林事業体の約300名のリーダーおよび支援者ならびに政府政策立案者を一堂に集めるものでした。その成果のひとつが「リオ・ブランコ宣言」です。これは世界中の政策立案者、国際機関、コミュニティに向けた重要なメッセージです。この会議とその成果については林業委員会にてより詳しい話がお聞きになれます。

ITTOはまた生産林における生物多様性保護のためのガイドラインの改訂作業をして参りました。これは1993年に最初に発行され、ブラジル、ガイアナ、カメルーン、インドネシアで実地試験が行われました。改訂案は本会議中に審議されます。草稿は、加盟各国、各NGO、民間部門、FAO、GEF、IUCN、CIFOR、WWFなどのパートナー機関の代表者から構成される国際パネルにより作成されました。このガイドラインの審議と承認はITTOプロジェクトの実施ならびに国家政策の開発を助けるとともに、ITTOのこの分野における実績を強化することにもなるでしょう。

ITTOは20年以上にわたってSFMプロジェクトに資金を拠出して参りました。今年5月から7月の間に、ITTOはトーゴのロメ、インドネシアのデンパサール、コロンビアのメデリンにおいて3つの地域ワークショップを開催し、プロジェクト間の経験を交換するとともに、そこから学んだ教訓の共有を奨励しました。この3つのワークショップは26の生産国から、69名のプロジェクトリーダーと25名のITTO国家的活動中心者を含む参加者を集めました。参加者はこのワークショップが非常に生産的なものであったという感想を持ち、このような方法で経験を交換することが非常に有益であると称賛しました。これらのワークショップの開催において主任コンサルタントを務めたMarc Dourojeanni博士が、合同委員会会議中にこの経験により得られた教訓を発表することになっております。

議長、
私はこれまで先のワークプログラムの下で最近行われた会議やワークショップ、そして方針開発のいくつかについてお話しして参りました。これは単に行った仕事を並べ立てるためでなく、私たちの眼前に控えている重要な課題のいくつかについて指摘するためです。この第43回理事会は、ITTOにとってまさに非常に重要な時に開催されているのです。

ITTA 2006 の運用
まず初めに、ITTA 2006が1年半以上前に合意され、その条項により来年初めに発効される見込みであることを思い出してください。加盟国はこの新協定の交渉に多大なる労力を払い、多くの革新的特徴を導入してきました。例えば、管理勘定内にテーマ別プログラムとテーマ別副勘定が設立されました。これは何よりもITTOの優先活動を実行するための追加資金を奨励するためです。こうした期待を持つITTA 2006の早期の批准が強く望まれます。

特に重要なのは、テーマ別プログラムの運用です。理事会はパプアニューギニアでの前回理事会で開始した議論を再開すべきでしょう。前回の議論ではテーマ別プログラムに関する会期間ワーキンググループの報告書を審議し、この問題に関して決定を下すとともにガイダンスを提供することを目指しました。

いくつかの資金提供国が既にテーマ別プログラム内の活動への資金提供を強く希望されていることを謹んでご報告したいと思います。欧州委員会はアメリカ合衆国政府と協力し、約CITESに関連するプロジェクト、事前プロジェクト、活動にUS$400万の資金提供をすることを約束しました。同様に、オランダ政府はUS$430万に相当する活動についてITTOとの合意に署名しました。US$430万のうちUS$300万はオランダ政府が資金を拠出し、残りは関心のある資金提供者が拠出するものです。その目的は熱帯林法施行および取引に関するプログラムの実施です。私たちはよって、理事会がこの件に関する最終決定を下せば、テーマ別プログラムが急速に進展するものと期待しております。

2008-2013アクションプラン
議長、
この理事会の議題においてもうひとつの重要事項は、2008-2013 ITTOアクションプランの検討です。このアクションプランは今後6年間のITTOの優先的戦略行動を策定し、その実施の枠組を提供するものです。同時にこれは広報資料でもあり、利害関係者に対しITTOの優先事項の進化とその反応の速さ、ダイナミズム、今日性を示します。この作業において理事会を支援するため、加盟国専門家の会期間ワーキンググループによりアクションプラン草稿が作成されています。この文書は議題14の下で議論される予定であり、ITTOに大きく貢献する質の高いものであると存じております。

ITTO 2008-2009 二ヶ年ワークプログラム
2008-2009二ヶ年ワークプログラムは本会議にて議題15 (b)の下で議論される予定です。ワークプログラム草稿はITTA 1994からITTA 2006への移行にまたがる可能性を考慮に入れて作成されています。この草稿は他の機関との協力の改善、業界および市民社会諮問グループのITTO作業への更なる関与、気候変動、生物多様性の保護、貧困削減、ガバナンスなど重要な世界的関心事項にITTOの活動をより整合させることといった側面を強調しています。

代表団の皆様は理事会がPNGでの会議で私に演説する機会を与えてくださったことを思い出されるでしょう。その中で私はITTOの目的の実施を早め、その活動のインパクトを強めるいくつかのアイディアを提案しました。例えば技術的診断派遣団の効率ならびに市民社会のITTOの活動へのより深い関与に対処するための方策など、そのうちのいくつかはこのワークプログラム案に反映されています。

気候変動
議長、
気候変動は今や重要な世界的関心事項となりました。かつては科学者や環境専門家のみが議論していた問題ですが、現在は政治やビジネスの最高レベルで議論され、方針開発の対象となっています

加盟国の熱帯林が10億ヘクタール以上に及ぶITTOは、気候変動の影響に対処し、それを緩和することを目的とする森林関連の戦略において重要な役割を果たすことができますし、またそうすべきなのです。森林破壊は人間の活動による二酸化炭素排出の原因の少なくとも18%を占めています。それゆえ、森林破壊防止(AD)および森林減少・劣化に起因する温暖化ガス排出の削減(REDD)は世界的な気候変動緩和戦略の4つの主要素のひとつとして提案されているのです。

理事会はこの戦略におけるITTOの役割をより明確に定義すべきでしょう。私たちは主導的な役割を果たすことができますし、またそうしなければならないと私は信じます。私たちはよく気候変動に関して、森林は周辺的な方法に過ぎないという話を耳にします。森林プロジェクトが炭素クレジットまたは炭素漏出の非永続性という点においてリスクを追っていることは事実です。しかし、それはまた大きな開発的・環境的利益を提供しもするのです。SFMを通じて、熱帯林部門は炭素貯蔵だけでなく、貧困削減ならびに生物多様性保護の機会も提供します。よって、加盟国の最大限の利益において、私はITTOが気候変動に対処する重要要素としてAD/REDDの適用を促進し支援しなければならないと信じます。

この文脈において、私は世界銀行の森林カーボンファシリティパートナーシップの設立に関する議論にITTOが関与していることを謹んで報告したいと思います。ITTOはまた、12月にインドネシアのバリで行われる気候変動に関する国際連合枠組条約第13回締約国会議で行われる議論にも、サイドイベントを主催することも含め、参加する予定です。私はこの機会をお借りして、加盟各国ならびにその他関係諸団体の皆様を、このサイドイベントにご招待致します。詳細は事務局ならびにITTOウェブサイトよりご提供致します。

気候変動との戦いは自然とのより友好的な関係を促進する機会でもあります。残念ながら、このことを現代の多くの世代が難しいと考えています。よって私たちは、意識の向上を図り、気候変動の影響に対処しそれを緩和するための戦略を開発し続ける一方で、子どもたちのための環境教育を強化するべきです。ITTOはパートナーと力を合わせ、この方面における取組を強化する可能性を持っています。

理事会は今会期中、両幹部会のオープンミーティングでこれらの問題またその他の関連事項に関する議論を深めることを検討すべきでしょう。過去の経験から、このアプローチは意見やアイディアを交換するための非常に友好的かつ柔軟で効果的な枠組を提供することが証明されています。

現地活動/プロジェクトワークの強化
議長、
ITTOの長所は方針決定を現場での活動に移すその能力にあります。ITTOはこれまで800以上のプロジェクト、事前プロジェクト、および活動を実施し、その総額はUS$3億に達しています。これは巨額の資金であり、私はこの機会をお借りして、今一度、資金提供者の皆様に心からお礼を申し上げたいと思います。

しかしながら、単純に計算してみますと、加盟国の熱帯林総面積を考えるならば、この額は過去20年間でヘクタール当たり21セント、年間1ヘクタール当たり1セントに過ぎません。熱帯加盟国に住む24億人という人口に対してこの金額を考えるならば、過去20年間で一人当たり12セント、年間一人当たり約1/2セントとなります。

熱帯加盟国において環境問題および開発の問題に取り組んでいる機関はITTOだけではありません。他にも多くの機関が、二国間組織も含め、この問題に関わっており、そのうちいくつかの機関はもっと多くの貢献を行うことができます。しかしITTOには熱帯加盟国において、熱帯林の持続可能な経営と国際的熱帯木材取引の促進を通じて、持続可能な開発を促進するという特別な使命があります。私たちは類の無い存在であり、明確な目的と確実な実績を持っており、さらに多くのことができるのです。

さらに多くの仕事を行わなければならないことには疑念の余地がありません。気候変動があります。ミレニアム開発目標があります。旧態依然にとどまるわけにはいかないのです。

ITTOは熱帯において重要な役割を果たしています。私たちはその取組をさらに倍増させ、過去20年の間に築いた礎を十二分に生かす能力があると私は確信しております。そうするためには、貧困、森林減少および森林劣化、木材取引の促進、ガバナンスを扱うプロジェクトへの資金提供を増加させる必要があります。ニーズはこれまでにないほど強く、私たちがそれに応える能力もこれまでにないほど高いのです。

計画立案、モニタリング、評価の強化
議長、
私たちはITTOが資金確保のための競争が熾烈な環境に身を置いていることを認識しなければなりません。そして私たちはその実行力を示し続ける必要があります。新たな協定が間近に迫る今は、ITTOの計画立案、モニタリング、評価の体制を強化する機会です。私は事務局内に戦略プランニング、監視、評価アシスタントディレクターの職位を設置することを理事会の検討事項として提案致します。この職位はITTA 2006の目標、アクションプラン、理事会が決定した優先事項に対するITTOの活動実施状況を明確にし、理事会に情報提供することができるようにするものです。また、ITTOのプロジェクト監視および評価体制を強化し、テーマ別プログラムの開発、実施、モニタリング、および評価を支援します。

この演説を終える前に、私はリベリアの状況に触れたいと思います。この国は長期間にわたって政情不安が続いており、ITTOに対する財政義務を果たすことができませんでした。この問題は3回にわたって理事会で議論されてきました。ITTOがリベリアの森林部門再建を支援できるようにするため、理事会は今会期中にこの問題に関する最終決定を下すべきであると思います。その際、リベリア政府が何年にも渡り滞納している管理勘定への分担金総額US$145,000以上を支払うために努力を払ってきたこと、また残額を支払うための計画を提出していることを考慮すべきであると思います。

議長、
私は先に、ITTOはその発展における重要な段階にいると申し上げました。この段階で私たちがいかに交渉を進めるかが今後長期にわたって影響することには疑いの余地がありません。私たちが組織としてこれまで成し遂げてきたことに誇りを持ち、今後成し遂げるべきことに野心を持とうではありませんか。ITTOには多くの優位性があり、熱帯国において変化を起こすことができるのです。例えば、
• 加盟国間で交渉中の新たな包括的協定
• ITTOの活動を実施するための明確な手順とメカニズムの確立
• 素晴らしい現地での実績
• 政府、民間部門、NGO、市民社会、その他国際機関を含む広範なパートナー
• 効果、効率、反応の速さを伝統とする無駄のない組織


このリストに私は加盟国間の強固な協力の精神と、世界市民として良い仕事をするという共通の志を加えることができると思います。私たちは、組織として私たちがこれまでに行ってきた良い仕事を礎として、今後更に良い仕事を積み重ねることができます。私は加盟国の皆様と共に結果を出すことを楽しみにしております。

皆様、ご静聴ありがとうございました。