ITTOとIUCNが森林景観回復マニュアルを発表

2005年11月8日, 横浜

スチュアート・マギニス(Stewart Maginnis)氏の発表
写真:ITTO

国際熱帯木材機関(ITTO)と国際自然保護連合(IUCN)は2005年11月8日、森林の景観を回復するためのマニュアルを共同で作成したと発表した。このマニュアルは、森林に与える生態系の能力を回復し、森林を利用する地域住民に経済的な利益をもたらす森林再生活動に役立てるのが狙いだ。

森林の景観を回復するための計画や実施方法には、すでに定評のある手法がいくつかある。また、土地利用にはさまざまなパターンがある。森林の伐採は、環境や社会、経済に大きな影響を与える。このようなさまざまな要因の得失を考慮しながら、森林の景観を回復しなければならない。このマニュアルは、問題点の洗い出し、関係者と交渉、対策の実施に向けた基礎になる。

国際自然保護連合(IUCN)のスチュアート・マギニス(Stewart Maginnis)氏は今回の発表で「森林の景観を回復させるは、次の2つの点がポイントになる。1つは生態系の健全な機能を回復させること。もう1つは、人間の生活を向上させることだ。この2つはどちらも重要で、どちらか一方に偏ってはならない」と述べた。

同氏は、今回はじめて、「森林の景観回復(forest landscape restoration)」という用語を使用した。これは、従来の森林再生手法と異なる点を強調するのが狙いだ。

「1つは、景観を重視したことだ。ただし、土地レベルの回復も含むという意味である。関係する関係団体の協力を得て、技術的な観点で最適であり、かつ社会経済的な観点でも許容できる対策を考えなければならない。劣化した森林だけではなく劣化した土地、特に農業用地も視野に入れなければならない。森林を元の状態に復元するだけを目的にしてはならない」(スチュアート・マギニス氏)

ITTOのゼメッカ(Emmanuel Ze Meka)氏によると、マニュアルの作成は、森林再生計画に付加価値を付けるためのものであり、ITTOと IUCNとパートナーが共同で取り組んでいる一連の作業の1つにすぎないという。

「このマニュアルは、明快で実際的な方法で、森林の景観を回復するための要素を規定している。このマニュアルでは、ITTOのガイドライン「Guidelines for the Restoration, Management and Rehabilitation of Degraded and Secondary Tropical Forests」に記載されている森林再生のための要素の大半を説明している。数ヶ月後には、国レベルのワークショップを開催する予定だ。現場の担当者と政策の立案者の双方にこのマニュアルを示し、意見をもらうつもりだ」(ゼメッカ氏)

さらに、ITTOとパートナーは、実施プロジェクトの資金も含めた新たな資料を提示して、森林の景観回復の実施を呼びかける計画だ。

国際熱帯木材理事会(ITTC)議長のアルハッサン・アター(Alhassan Attah)氏は、今回のマニュアルについて次のように述べた。

「このマニュアルを利用すれば、森林の景観を回復するための諸要素について現場の担当者に説明しやすくなるだろう」

「劣化した森林の景観を回復するには、熱帯林の生産国に対する理解を深める必要がある。この地域では、経済発展のチャンスが少なく、水の浄化や土壌の安定に大きな役割を果たす生態系の能力が低下している」(アター氏)

森林再生の専門家チームが作成したこのマニュアルは、次のサイトから入手できます。
www.itto.or.jp/technical_report/

理事会の詳細については、次のサイトをご覧ください。
www.itto.or.jp